Philosophy for Kids(2001)の待望の翻訳が読みやすいデザインと平易な日本語でついに出版された。
目次を見ればわかるように、本書の構成は、魅力的な問いとそれに対応する哲学者の考えの紹介と、それらを深めるための問いかけを一つのまとまりにして5ページほどで一節をなしている。（たとえば、「ほんとうの友だちはだれか、どうやってわかる？」という問いに対して、アリストテレスの友情論が紹介され、「もっと深めよう」の項目では、「友だちと、ただの知り合いのちがいはなんだろう？」といった問いかけがなされている。）
このような構成は、すでに日本でも『中学生からの対話する哲学教室』という名前で翻訳が出版されているPhilosophy for Teens(2007)と類似しているが、本書の方がより明瞭簡潔にまとまっており、Kidsという原題にも現れているように考えることの好きな小学生や中学生にも触れやすいものになっている。
また本書のもう一つの特徴は、教室の授業で教師が使用する（あるいは保護者が家庭で使用する）ことを前提に、そのためのアドバイスが付録として付いていることである。この付録は、考えることの楽しさを子どもたちに体験してほしい、と思ったとしても適切な教材や授業の進め方がわからず、足を前に踏み出せない人にとっても大変助けになるだろう。
「哲学対話」と呼ばれるような哲学的な問いを子どもどうしで話し合う中で深めていく活動が少しずつ注目されているが、まだまだその広がりは十分ではないし、本当に哲学の問題に触れることを求めている子どもたちにはまだまだ届いていないかもしれない。その意味で、本書のような良書が多くの小中学校の図書室あるいは地域の図書館に置かれ、多くの子どもたちの手に届くことを願ってやまない。
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