愛犬がその歩みを速め、僕と彼女を繋いでいるリードの弧が少しだけ張り詰めるといつも心の中で
「もっとゆっくり、一緒に歩いて行こうよ」
と呟いている。それでも彼女は人間の僕よりも早いスピードで歩いていく。
これまで幾たびか訪れた愛犬との別離の瞬間は、何年経っても記憶が薄れることはなくて、
失われたパズルのピースのようにポカリと空いたまんまの心の穴を時間をかけて埋めようとしている。
これをペットロスと呼ぶのならば「ペットロスのどこが悪い！」と、この本を手にとってみた。
この「うちの子きずなノート」は、世に数多有る失われたペットと飼い主を精神世界へと誘う感じの、
癒しにあふれた書籍とは趣が違っていた。
全部で８つのステップに分かれていて、全編、ペンを手に自分の気持ちを書き記して行く事で、各章の
テーマが見えてくる構成になっている。書き進めることで、気がつけば自分の気持ちと向き合っていた。
自分の気持ちと向き合うためには、ひふみんアイの如く、相手、すなわち愛犬や愛猫たちの目線に立って
飼い主を見つめてみる事も大事だと気付かされる。うちの子の事は他の誰よりも飼い主が分かっている筈。
だから、このきずなノートは、百人が最後まで完成させれば、百通りのエンディングが待っていることに
なるのだろう。僕はといえば、彼らが居てくれた意味が分かって、心地よいウエット感とともに心が少し軽くなった。
読者参加型、とでも云うべきか。うちの子の写真を貼ったりとカスタマイズすると、本自体がとても愛おしく
思えてくる。本としては星５つにしたいところだが、ヘタレなドッグパーソンである僕がノートを埋めていった
ので星４つにしておく。紅白歌合戦の、審査員と野鳥の会みたいなものかな？
残りの星１つは、読者である僕が成長しつつ何度か読み返し（書き加え）て加点していかなければ。
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