シューベルトの弦楽五重奏曲は、この短命の作曲家の傑作群のなかでも、私にとっては遥かに高く険しい頂きのように思います。
第一、第二楽章は極めて力強い音楽で、構成としては「ハ長調大交響曲」と似ていますが、悲愴感と、もっと直接的な感情の吐露が聴きとれるように思えます。
他の作曲家の、誰かを悼むための曲とは全く違います。ここでは正に死に向かう者、作曲家本人の悲しみが渦巻いているような気がします。その点でこの曲の感銘において匹敵するのは、モーツァルトのレクイエムだけです。
演奏をいろいろ聴き比べているわけではありませんが、この真摯な四重奏団(と世界的に著名なチェリスト)の演奏に、全く不満はありません。