他の皆さんが肯定的にレビューを書いているので、私からは少し批判的(辛口)な側面でレビューいたします。
まず、一言この作品に対して言うことがあるのなら「とてももったいない作品」です。
敢えて悪い言い方をすると「名作のなり損ね」といった感じでしょうか。
そもそもこの作品にはヒロインの家族である夙川家の葛藤や生命の倫理観を問う描写が決定的に足りません。
特にこの様な作品設定では「生命を悪戯に生み出してしまったもの」と「生み出されてしまったもの」の葛藤の模様や、それに付随する倫理観を問う描写が不可欠ですが、本作ではその様な描写はあくまでも触りだけになっており、どちらかというとラスト(ネタバレになるのでこの表現)の描写に力が入ってます。
もう少し夙川家を掘り下げることは出来なかったのか?と感じてしまいます。
実際体験版の段階では、姉妹ゲームメーカー作の「車輪の国」のような、価値観をテーマにした作品(本作の場合には"命に対する倫理観"が正しい)の様な色合いですが、実際蓋を開けてみると99年D.O.作の「加奈」や08年Light作の「タペストリー」の様な色合いでした。
あくまでも本作の展開が悪いとは言いません。特にプレイヤーを「感動させる」事に特化させるならこれが多分一番オーソドックスなスタイルでしょう。私自身も最後はかなり感動しました。
ただこの手の作品だったら、上記の様に他作品で代用も出来ます。更に言えば、この作品にしか出来ないことをあまり本作中で描写していないという印象を受けました。
本当にあと一歩で名作に届いただろうとても惜しい作品でしたが、光る物は確かにある作品ですし、セミプライスという事も考えればかなり良質な作品である事は明白ですので、一見の価値は確実にあります。
あとヒロインの恵璃が本当に可愛いかったです!