指導の立場にある人だけでなく、子をもつ親御さん、いずれ社会に出ないといけない高校生・大学生、また、社会に出てから軋轢に苦しむ社会人の人たちにも有益な一冊。
ゆとり世代の伸ばし方、という副題で、指導者や管理者の立場にある者向けの本か、と思われるかもしれませんが、原監督はこのインタビューの中で繰り返し、繰り返し、次のようなことを主張しています。
それは、1.自分で考える力を鍛えることの大切さ(大変さ)と、2.コミュニケーション能力(プレゼン能力)の大切さです。
現代日本教育には、この二つが恐ろしいほど欠けています。
そもそも、自分で考えるということがどういうことなのか、更に、それが自分に欠けているということすら気が付いていない人が多いのではないでしょうか。
原監督も、高校までの教育でその罠に陥った学生を自分で考えることができるように導く苦労について本作の中で述べています。
自分で考える、とは、自分で問題点を見つけ出す、ということです。
自分で問題点を見つけ出すとは、自分がいる状況への観察力・分析力をもつ、ということです。
状況を観察し、問題を分析できれば、解決策を作りだすことができます。
そして自分で考えていれば、その策が「何を解決するためなのか」を明確に自覚できているので効果も大きく、また思わぬ変化にも柔軟に対応ができることでしょう。
こうした能力がいかに大切なことなのかは、青学陸上部の近年の大躍進が証拠であり、本書を読めばその躍進と自分で考える能力とのつながりを明確に理解できるでしょう。
さらに原監督は、会社に入ればコミュニケーション能力がない者は出世しない、と明言しています(P.135)。
ここで言うコミュニケーション能力とは、友達同士でわいわい騒ぐことではありません。
友達同士では怒らせないこと、同調することに主眼が置かれますが、社会で必要なのは上司や外部へのプレゼン能力であり、取引先との交渉能力であり、部下への伝達能力であったりします。
お前の意見など切り捨ててやるという相手に耳を傾けさせる能力です。
これは相手が部下であっても同じです。
部下は立場上、部下におかれているだけで、内実は一個の独立した人間だからです。
本書では原監督の、相手がどう受け取るか、ということまで観察し、分析した上で、ではどう伝えれば自然に相手が受け取るか、ということにまで踏み込んだ実務的コミュニケーションの実例を見ることができます。
現代日本教育は恐ろしいまでに、これらの能力の育成を怠る、むしろ潰す方向に発達しており、そのような教育で育った世代はその理不尽さ、無価値さに気づかないまま、俺もそうしてきたんだ、という短絡的な考えで子供や新社会人を扱うケースがほとんどです。
子供に思考能力やプレゼン能力の訓練も与えないまま、大人になってから無能だの何もできないクズだのといびり、そんなお前にはこれが当然だと低報酬・長時間労働の奴隷労働を強いることが慣例化しています。
ブラック企業、ブラックバイト、また電通のような有名企業で新人があまりのブラックな奴隷的労働環境に耐えかねて自殺をしたことも記憶に新しいと思います(2015年発生)。
なぜブラック企業、社畜という概念が世に知られるようになっても、依然このような悲劇がなくならないのでしょうか。
それは上の世代の意識の問題だけでなく、彼らがほどこす教育によって考える力とプレゼン能力の育成の機会を奪われた若者たちが、上が言うことだから正しいのだと自分たちが奴隷化されていてもそれを疑問に思わない、思っても上の者の論理に目くらまされ、まともに論理的な指摘ができない、あるいは他者とつながってそのような体制を変える実務的な方策に至れないという、若者自身の問題もあると思います。
残念ながら、原監督のような指導者や上司に恵まれることは稀であると思われます。
自分や我が子が会社に潰される前に、まず本書を読み、自分で考える能力とプレゼン能力の実社会での重要さを知り、それらの能力の向上を今からでも図る意識を持つことを高校生以上の全ての皆さまにお勧めしたいです。
これは若者世代の我儘の助長でもなんでもありません。
自分で問題を見つけることができないというのは、自分の奴隷化を見逃すというだけでなく、指示がないと動けない社員につながるのであり、また会社や組織や日本全体の競争力の衰退にもつながることなのです。
具体的には本書のP.184を読んで頂きたいですが、例えば日本長距離陸上界ではP.184に書かれているようなことすら気が付いて指導する者がいなかったという指摘を読み、そしてそれを見抜いた青学の躍進を見れば、自分で考える、問題点を見つけられる人材が組織の競争力に大いに関係するのであり、それができない組織は競争力の停滞や衰退はまぬがれないということは納得頂けるかと思います。
最後に、本書は原監督の8作目の本であり、2015年に出版された数々の本を買われた方は、買うべきか悩むところではあると思います。
しかしながら、2015年度の本では、陸上部員としての自覚も薄かった青学部員をどう優勝校にまで引き上げたか、という内容であるのに対し(自分で考えるシステムの構築の時代)、本書では、連勝も経験し、システムが定着した後で、いかにそのシステムを形骸化させずに機能させるか、という原監督のギアチェンジにも紙面が割かれています。
大学駅伝3冠・箱根3連覇(2017年1月現在)に至った舞台裏を楽しむに良し、成功したシステムの形骸化の危険性やその対処法を学ぶに良し、な内容となっています。
成功街道を突き進んでいるように見える青学陸上部にも、転落につながる見えない落とし穴は多々あるのだということ、そして原監督と陸上部軍団が日々そうした罠に細かく目を配り、毎日毎日一つ一つ対処し続けているからこその成功なのだ、ということが原監督の数々の言葉から読み取ることができます。
けれどそれはつまり、見えない変革のポイントが日々、多々転がっている、ということであり、何もできない、変えようがないように見える環境だって、まだまだよくよく見れば変革のポイントはある、それが本書で原監督が繰り返し述べる、「自分で考える力」の意義ではないでしょうか。
「自分」監督に力を引き出させよう、「自分」の伸ばし方を見つけよう、できることがあるんじゃないか、自分にだって!
未来を信じてみたいと思わせる一冊です。
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力を引き出す 「ゆとり世代」の伸ばし方 (講談社+α新書) 新書 – 2016/12/21
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全国の人事部必読!「ゆとり世代」はこうやって伸ばせ!大学駅伝3冠と箱根駅伝3連覇を目指すリーダーと、博報堂若者研で実績を上げているリーダー。分野は違えど、若者とともに成果を上げている二人が語り尽くす、「ゆとり世代」を見抜くヒント、育てる技術。
なぜ、青山学院大学陸上競技部は
部員のコミュニケーションを重視するのか?
2017年正月の箱根駅伝で、
大学駅伝3冠と3連覇を目指すリーダーと、
博報堂若者研で実績を上げているリーダー。
分野は違えど、若者とともに成果を上げている二人が
彼らが接する「ゆとり世代」について語り尽くす。
ここ数年、
「新人とどうコミュニケーションを取ればいいのかわからなくなってきた」
「自分の言葉が届いているかどうかがわからない」
と嘆く企業人が増えてきた。
それはなぜなのか。
そしてそんな彼らに届く言葉とは何か?
丁寧に彼らと接してきたふたりだからこそわかる具体例を提示、
育て方次第ですごい能力を発揮するゆとり世代を見抜き、伸ばすヒントが本書にある。
【目次】
第1章 強いチームのつくり方
第2章 自分の学生時代、いまのゆとり世代
第3章 目標設定とコミュニケーション
第4章 成長を促す仕組み
第5章 ゆとり世代に対する大人たちへ
なぜ、青山学院大学陸上競技部は
部員のコミュニケーションを重視するのか?
2017年正月の箱根駅伝で、
大学駅伝3冠と3連覇を目指すリーダーと、
博報堂若者研で実績を上げているリーダー。
分野は違えど、若者とともに成果を上げている二人が
彼らが接する「ゆとり世代」について語り尽くす。
ここ数年、
「新人とどうコミュニケーションを取ればいいのかわからなくなってきた」
「自分の言葉が届いているかどうかがわからない」
と嘆く企業人が増えてきた。
それはなぜなのか。
そしてそんな彼らに届く言葉とは何か?
丁寧に彼らと接してきたふたりだからこそわかる具体例を提示、
育て方次第ですごい能力を発揮するゆとり世代を見抜き、伸ばすヒントが本書にある。
【目次】
第1章 強いチームのつくり方
第2章 自分の学生時代、いまのゆとり世代
第3章 目標設定とコミュニケーション
第4章 成長を促す仕組み
第5章 ゆとり世代に対する大人たちへ
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2016/12/21
- 寸法12.2 x 1.1 x 17.4 cm
- ISBN-104062729768
- ISBN-13978-4062729765
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商品の説明
著者について
原 晋
1967年生まれ。
青山学院大学陸上部監督。
2017年1月の箱根駅伝で史上初の初優勝からの三連覇を狙う。
原田 曜平
1977年生まれ。
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。
若者研究を通じて、「マイルドヤンキー」「さとり世代」といった流行語を生み出している。
1967年生まれ。
青山学院大学陸上部監督。
2017年1月の箱根駅伝で史上初の初優勝からの三連覇を狙う。
原田 曜平
1977年生まれ。
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。
若者研究を通じて、「マイルドヤンキー」「さとり世代」といった流行語を生み出している。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2016/12/21)
- 発売日 : 2016/12/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 192ページ
- ISBN-10 : 4062729768
- ISBN-13 : 978-4062729765
- 寸法 : 12.2 x 1.1 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 290,653位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 360位講談社+α新書
- - 1,808位ノンフィクションのスポーツ
- - 7,933位スポーツ (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年9月19日に日本でレビュー済み
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原監督との対談方式なので読みやすかったです。
強さの秘訣もなんとなく分かりました。
自分の考えを理解するきっかけにもなりました。
強さの秘訣もなんとなく分かりました。
自分の考えを理解するきっかけにもなりました。
2017年5月7日に日本でレビュー済み
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スポーツだけではなく、色々な分野に応用できる考え方のヒントになりました
2017年3月14日に日本でレビュー済み
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三冠がたのしみですね。若者の心は、若い心でないと掴めないのですね。
2022年1月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
原田の話8割、原監督の返事2割で対話が進む。
原田が話したいことが延々と書いてあり、自分の会社のアピールばかりなので、読者が知りたい話や、本質からずれた話に終始して、不満の残る内容。
原田が話したいことが延々と書いてあり、自分の会社のアピールばかりなので、読者が知りたい話や、本質からずれた話に終始して、不満の残る内容。
2016年12月23日に日本でレビュー済み
ご存知箱根駅伝で、三連覇を目指す青学の原監督と、博報堂の若者を引っ張る原田さんの「育てる技術」と心意気がいい。
二人のリーダーそれぞれの人間的な魅力もさることながら、なによりも、まず「話すこと」の重要さ、そして「いただきますは、全員一緒に」等、コミュニケーションを大切さにする気持ちとその姿勢が伝わってくる!
また、プレゼンをさせる仕組み、就活に失敗する子の共通点等、現場の具体的な例を挙げて分かりやすく、一気に読めた。
お正月の駅伝が、ますます楽しみになる一冊!
1月3日追記・箱根駅伝の三連覇!やってくれましたね。
三連覇に導いた原監督と選手たちの絆、選手のひとりひとりの努力とチームワークの良さが、改めて分かるような良い試合で、楽しかった!
二人のリーダーそれぞれの人間的な魅力もさることながら、なによりも、まず「話すこと」の重要さ、そして「いただきますは、全員一緒に」等、コミュニケーションを大切さにする気持ちとその姿勢が伝わってくる!
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1月3日追記・箱根駅伝の三連覇!やってくれましたね。
三連覇に導いた原監督と選手たちの絆、選手のひとりひとりの努力とチームワークの良さが、改めて分かるような良い試合で、楽しかった!
2018年4月14日に日本でレビュー済み
博報堂のヒゲダルマは何を勘違いしてるのか自分にタレント性があると思ってらっしゃる。
自分としては二枚看板でイケると踏んだが、踏んだのは地雷だよヒゲダルマ。
「はじめに」で自ら「おもしろくなかった」と告白してるのは正直で良い。しかし、だったら、こんな本出すなと言いたい。
原監督の話に対して、ヒゲダルマが持ってる情報や分析結果を当てはめて、裏付けしていく、という展開だったら、まだ読めた。
しかし、原監督の話の合間に挟まれるのは、ヒゲダルマの自慢や持論、旧弊な日本社会への愚痴などなど。
原監督の話で、なるほどと思ったり、興味をひかれたりすると、次のヒゲダルマの話で辟易する、の繰り返し。
ヒゲダルマを制御する司会者が必要だった対談本。
原監督の話が聞きたい人には辛い一冊。
自分としては二枚看板でイケると踏んだが、踏んだのは地雷だよヒゲダルマ。
「はじめに」で自ら「おもしろくなかった」と告白してるのは正直で良い。しかし、だったら、こんな本出すなと言いたい。
原監督の話に対して、ヒゲダルマが持ってる情報や分析結果を当てはめて、裏付けしていく、という展開だったら、まだ読めた。
しかし、原監督の話の合間に挟まれるのは、ヒゲダルマの自慢や持論、旧弊な日本社会への愚痴などなど。
原監督の話で、なるほどと思ったり、興味をひかれたりすると、次のヒゲダルマの話で辟易する、の繰り返し。
ヒゲダルマを制御する司会者が必要だった対談本。
原監督の話が聞きたい人には辛い一冊。