宮澤賢治オリジナル挿絵シリーズ 銀河鉄道の夜 オンデマンド (ペーパーバック) –
瀟洒な小冊子であることは認める。またオンデマンド印刷の割にはコスパも悪くはない。手元に置いて(買って損したという気はしない)おく価値はある。
だが、本文は、青空文庫様のデータを利用しているため、解説や語釈の類は一切ない。底本は、アップされている4種の内、最もポピュラーな新修全集に基づく新潮文庫版であり、所謂ブルカニロ博士やセロのような声は、登場しない最終形である。従って、本作のみでは『銀河鉄道の夜』とは言えない点、留意されたい。
そもそも論として、企画の妥当性にも疑問がある。特に、『銀河鉄道の夜』は、画本・絵本・マンガなど多種多様な書籍があり、屋上屋の感あり。せめて、ブルカニロ博士版も加えていれば、納得もいくのだが。原作でも、銀河鉄道の外観の描写もほぼ無いし、小さな軽便鉄道と言いながら、字面を追えば、松本零士の「銀河鉄道999」の様な座席をイメージすると思うのだが、賢治さんの意図はどちらだったのかと、枝葉末節な所で引っかかる。解説本だけで、段ボール箱、5~6箱分になってしまったし、現在でも、各種の新刊が出版され続けている。ともかく……『銀河鉄道の夜』は難解である。
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