ムーン・レンズ、湖畔の住人、古きものたちの墓、けがれ、の4作を収録。
長さは、最初から短、中、長、中といったところか。
・ムーン・レンズ――星4
『インスマスを覆う影』のようなストーリーで内容は無駄な装飾をはぎ落としテンポのいいストーリーに仕上がっています。
読みやすいが、いかんせん短すぎるか。
・湖畔の住人――星5
物語の半分は手紙によって話が進行していきます。雰囲気としては『無人の家で発見された手記』に似ているか。
ただし、オチは『ダゴン』のような所謂「お約束」を破り、リアルタイムで進行します。
このリアルタイムに進行している描写が非常に楽しめました。
・古きものたちの墓――星3
元は『狂気の山脈』でしょう。原作どおり南極を舞台にしていますが、どうも脱線が多いです。
これ単体で単行本としていたらよかったのですが、どうも他3作品と比べたら見劣りしてしまいます。
・けがれ――星5
深きものどもを扱ったという点では『インスマスを覆う影』と関係していますが、知らなくても本物語中にそれとなく解説されているため特に支障なし。
どうもブライアン・ラムレイというとタイタスクロウ・サーガ――人間が神話生物、クリーチャーと正面から戦う――をイメージしますが、本物語はしっかりクトゥルーしています。
私としては一番楽しめました。
・エッセイ
ここのコメントで触れている人がいなかったので少し触れておきます。
森瀬といえば『図解クトゥルフ神話』等で名前を知っている人もいるかと思います。
このエッセイは20pほどのものでして、近年(1980年ー2010年)のクトゥルーに関して書かれている解説書みたいなものです。
解説書、というとどうしてもラヴクラフトの当時の環境を語ったりしているものが主ですが、上記の年代からTRPGとしてのクトゥルー、『這いよれニャル子さん』やニコ動におけるTRPGブームについて語っています。
TPRGとしてのクトゥルー、「ネクロノミコン」といった名前の一人歩き、『這いよれニャル子さん』やニコ動を通じて再び注目されつつあるTRPG…
ラヴクラフトが生きていた時代からはおそらく想像できなかったクトゥルーの広がりがわかると思います。

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古きものたちの墓 クトゥルフ神話への招待 (扶桑社ミステリー) 文庫 – 2013/6/29
- 本の長さ454ページ
- 言語日本語
- 出版社扶桑社
- 発売日2013/6/29
- ISBN-104594068367
- ISBN-13978-4594068363
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登録情報
- 出版社 : 扶桑社 (2013/6/29)
- 発売日 : 2013/6/29
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 454ページ
- ISBN-10 : 4594068367
- ISBN-13 : 978-4594068363
- Amazon 売れ筋ランキング: - 497,156位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 162位扶桑社ミステリー
- - 3,075位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安心して読める小説でした。
TRPGをしているので、シナリオのネタに使えそう。
TRPGをしているので、シナリオのネタに使えそう。
2013年6月29日に日本でレビュー済み
日本オリジナルのクトゥルー神話アンソロジー第二集。短編1本に中篇3本の構成。
●ラムジー・キャンベル「ムーン・レンズ」
キャンベル版「インスマウスを覆う影」。
キャンベルの創造したゴーツウッドにはShub-Niggurathの信仰が根付いているとされるのは、この話に依る。ファンが書いたオマージュの様な感じもありみずみずしい短編。
●ラムジー・キャンベル「湖畔の住人」
キャンベル版「クトゥルーの呼び声」。
キャンベルの書き下ろしクトゥルー神話作品集の表題作。遂に・・・と云うより、漸く紹介された・・・と云った感が強いキャンベルのクトゥルー神話代表作。キャンベルの創造した書物「グラーキの黙示録」の書名の元にもなっている宇宙怪獣グラーキが登場する。もっとでかいイメージだったのだが、意外に小型。
キャンベルの第一作品集の中で最もラヴクラフト臭の強い作品だが、逆に見ると最もキャンベルらしくない作品・・・に見える。確かにキャンベルのクトゥルー作品は、ラヴクラフトをより残酷にしたかの様な感じもあるが、中盤が主要人物からの書簡形式で進行し、そんな事があるならさっさと家を離れて町に戻れよ・・・と云いたくなり本人が気付いた時には手遅れ・・・と云うのは、ラヴクラフトを踏襲している。最もクライマックスのグラーキ襲撃がリアルタイムに進行しそのままラストに繋がるのは、キャンベルならでは。
●コリン・ウィルソン「古きものたちの墓」
ラヴクラフトの「狂気の山脈にて」の続編的性格の作品。阿佐ヶ谷ロフトのイベントで聞いた話では、実は第一集に収録される筈だった作品。ウィルソンのクトゥルー神話作品にしては珍しくラヴクラフトに準拠しておりShoggothも出て来る。まあ、超能力で高純化されたルビー使用の超強力レーザーの一撃で消滅させられる程度ではあるが。Shoggothが古きものたちに創られたと云う設定もそのまま。ウィルソンのクトゥルー神話としては「精神寄生体」「賢者の石」「ロイガーの復活」「宇宙ヴァンパイアー」「スパイダー・ワールド」等があるが、ラヴクラフトの創造したものがそのままの設定で姿を見せるのは本作のみ。
とは云え、そこは矢張りウィルソン。ストーリーは超能力や科学技術など枝葉に割かれ易く、中々話は進まない。表題に至る迄が兎に角長い。探偵小説でもディレッタント的な探偵がペダンティックな方へ会話の流れを逸らしてしまうケースがしばしば見受けられるが、ウィルソンの場合はともすればストーリーの流れそのものが逸れてしまう。その部分を楽しめるかどうかで本作に対する評価も分かれてしまうだろう。楽しめない人にとっては、ひたすら散漫で冗長な中篇でしかないのだ。
●ブライアン・ラムレイ「けがれ」
インスマウスもののアンソロジー用に書かれた中篇。
哀愁があり、けれどもそれなりにハッピーエンド(Deep One的に)と云った作品。Deep Oneの血を引く人々の苦しみを描いた傑作。
これでわたしの生まれた年にアーカムハウスから出版されたキャンベルの処女作品集は全て翻訳された事になる。作者が少年だった頃に書かれたものだが、若々しく新鮮。
第三集は果たしてどの様な内容になるのだろうか。
●ラムジー・キャンベル「ムーン・レンズ」
キャンベル版「インスマウスを覆う影」。
キャンベルの創造したゴーツウッドにはShub-Niggurathの信仰が根付いているとされるのは、この話に依る。ファンが書いたオマージュの様な感じもありみずみずしい短編。
●ラムジー・キャンベル「湖畔の住人」
キャンベル版「クトゥルーの呼び声」。
キャンベルの書き下ろしクトゥルー神話作品集の表題作。遂に・・・と云うより、漸く紹介された・・・と云った感が強いキャンベルのクトゥルー神話代表作。キャンベルの創造した書物「グラーキの黙示録」の書名の元にもなっている宇宙怪獣グラーキが登場する。もっとでかいイメージだったのだが、意外に小型。
キャンベルの第一作品集の中で最もラヴクラフト臭の強い作品だが、逆に見ると最もキャンベルらしくない作品・・・に見える。確かにキャンベルのクトゥルー作品は、ラヴクラフトをより残酷にしたかの様な感じもあるが、中盤が主要人物からの書簡形式で進行し、そんな事があるならさっさと家を離れて町に戻れよ・・・と云いたくなり本人が気付いた時には手遅れ・・・と云うのは、ラヴクラフトを踏襲している。最もクライマックスのグラーキ襲撃がリアルタイムに進行しそのままラストに繋がるのは、キャンベルならでは。
●コリン・ウィルソン「古きものたちの墓」
ラヴクラフトの「狂気の山脈にて」の続編的性格の作品。阿佐ヶ谷ロフトのイベントで聞いた話では、実は第一集に収録される筈だった作品。ウィルソンのクトゥルー神話作品にしては珍しくラヴクラフトに準拠しておりShoggothも出て来る。まあ、超能力で高純化されたルビー使用の超強力レーザーの一撃で消滅させられる程度ではあるが。Shoggothが古きものたちに創られたと云う設定もそのまま。ウィルソンのクトゥルー神話としては「精神寄生体」「賢者の石」「ロイガーの復活」「宇宙ヴァンパイアー」「スパイダー・ワールド」等があるが、ラヴクラフトの創造したものがそのままの設定で姿を見せるのは本作のみ。
とは云え、そこは矢張りウィルソン。ストーリーは超能力や科学技術など枝葉に割かれ易く、中々話は進まない。表題に至る迄が兎に角長い。探偵小説でもディレッタント的な探偵がペダンティックな方へ会話の流れを逸らしてしまうケースがしばしば見受けられるが、ウィルソンの場合はともすればストーリーの流れそのものが逸れてしまう。その部分を楽しめるかどうかで本作に対する評価も分かれてしまうだろう。楽しめない人にとっては、ひたすら散漫で冗長な中篇でしかないのだ。
●ブライアン・ラムレイ「けがれ」
インスマウスもののアンソロジー用に書かれた中篇。
哀愁があり、けれどもそれなりにハッピーエンド(Deep One的に)と云った作品。Deep Oneの血を引く人々の苦しみを描いた傑作。
これでわたしの生まれた年にアーカムハウスから出版されたキャンベルの処女作品集は全て翻訳された事になる。作者が少年だった頃に書かれたものだが、若々しく新鮮。
第三集は果たしてどの様な内容になるのだろうか。
2013年7月17日に日本でレビュー済み
既に立派なレヴューがあり、いまさらという気もしますが・・・クトゥルフ神話への招待・シリーズの第2弾です。
収録作品は、1:ムーン・レンズ(ラムジー・キャンベル) 2:湖畔の住人(ラムジー・キャンベル) 3:古きものたちの墓(コリン・ウイルソン) 4:けがれ(ブライアン・ラムレイ) の4編で、3:長編、2、4、中編、1:短編といった構成になっています。また、意識してか否かはわかりませんが、英国系の作家(コリン・ウイルソンは元来、評論家、思想家だと思いますが)の作品ばかりが収録されています。
1:思いもよらず、ゴーッウッドで足止めされたロイ・クーキーの恐ろしい体験を描いています。そして、自殺したいと訴えたロイを観た医師は、最初その話を信用しませんでしたが・・・最後に強烈な落ちが、この作品には、A・ブラックウッドの影響も感じられますが・・・
2:トマス・カーライトは、自身の絵画の創作に適した地を求め、セヴァーンヴァレー近郊の暗い湖の前の6軒の空き家のうちの1軒に移り住みます。最初は気に入っていたカーライトですが、徐々に不気味なことが起こり始めます。電報のやり取りで事件の経緯を進めるのは、中々効果的です。アブドウル・アルハザード、また、自身のグラーキの黙示録などをちりばめ、神話の雰囲気を高めています。
3:本編は、ウイルソン版の狂気の山脈にて、あるいは、狂気の山脈にての後日談といった類の作品です。しかも、本作の中に同作が出てきて、事件の方針、解決を示したりします。ただし、いかにも、コリン・ウイルソンらしく、エスパーが出てきたり、レーザーが出てきたりします。コリン・ウイルソンは、元来、アウトサイダーでデヴューした評論家です(紀伊國屋書店から出たこの本を読んだ時の衝撃は忘れられません!)。そして、夢見る力でかなりのページを割いて、H・P・ラヴクラフトを取り上げましたが、これがオーガスト・ダーレスの目に留まり、これがクトゥルフ神話の作品を書くきっかけになったようです。
4:インスマスの血を受け継ぐものたちの連帯、悲哀を描いています。プリオンなど目新しいものが出てきます。最後のツイストが作品の効果を上げています。
私にとって、未読のものばかりですから(たぶん全編本邦初訳だと思います)、面白く読ませていただきました。ラムジー・キャンベルの2作は2編とも力作だと思います。しかし、キャンベルの作品は、まだまだ邦訳作品が少ないと思います。それに引き替え、ラムレイの作品は、黒の召喚者、タイタス・クロウ・サガ、など続々と邦訳されています。しかも、どの作品もかなり面白いです。コリン・ウイルソンの作品は、ほとんど邦訳されていますが、すぐに絶版、品切れになります。3:も中々の力作だと思いますが、しかし、どこか神話をちゃかしているような感じがします。
収録作品は、1:ムーン・レンズ(ラムジー・キャンベル) 2:湖畔の住人(ラムジー・キャンベル) 3:古きものたちの墓(コリン・ウイルソン) 4:けがれ(ブライアン・ラムレイ) の4編で、3:長編、2、4、中編、1:短編といった構成になっています。また、意識してか否かはわかりませんが、英国系の作家(コリン・ウイルソンは元来、評論家、思想家だと思いますが)の作品ばかりが収録されています。
1:思いもよらず、ゴーッウッドで足止めされたロイ・クーキーの恐ろしい体験を描いています。そして、自殺したいと訴えたロイを観た医師は、最初その話を信用しませんでしたが・・・最後に強烈な落ちが、この作品には、A・ブラックウッドの影響も感じられますが・・・
2:トマス・カーライトは、自身の絵画の創作に適した地を求め、セヴァーンヴァレー近郊の暗い湖の前の6軒の空き家のうちの1軒に移り住みます。最初は気に入っていたカーライトですが、徐々に不気味なことが起こり始めます。電報のやり取りで事件の経緯を進めるのは、中々効果的です。アブドウル・アルハザード、また、自身のグラーキの黙示録などをちりばめ、神話の雰囲気を高めています。
3:本編は、ウイルソン版の狂気の山脈にて、あるいは、狂気の山脈にての後日談といった類の作品です。しかも、本作の中に同作が出てきて、事件の方針、解決を示したりします。ただし、いかにも、コリン・ウイルソンらしく、エスパーが出てきたり、レーザーが出てきたりします。コリン・ウイルソンは、元来、アウトサイダーでデヴューした評論家です(紀伊國屋書店から出たこの本を読んだ時の衝撃は忘れられません!)。そして、夢見る力でかなりのページを割いて、H・P・ラヴクラフトを取り上げましたが、これがオーガスト・ダーレスの目に留まり、これがクトゥルフ神話の作品を書くきっかけになったようです。
4:インスマスの血を受け継ぐものたちの連帯、悲哀を描いています。プリオンなど目新しいものが出てきます。最後のツイストが作品の効果を上げています。
私にとって、未読のものばかりですから(たぶん全編本邦初訳だと思います)、面白く読ませていただきました。ラムジー・キャンベルの2作は2編とも力作だと思います。しかし、キャンベルの作品は、まだまだ邦訳作品が少ないと思います。それに引き替え、ラムレイの作品は、黒の召喚者、タイタス・クロウ・サガ、など続々と邦訳されています。しかも、どの作品もかなり面白いです。コリン・ウイルソンの作品は、ほとんど邦訳されていますが、すぐに絶版、品切れになります。3:も中々の力作だと思いますが、しかし、どこか神話をちゃかしているような感じがします。
2014年9月6日に日本でレビュー済み
『クトゥルフ神話への招待』シリーズ第二弾にあたる本書は、俗に第二世代とも呼ばれる「ラヴクラフト没後にクトゥルー神話に参画した作家」の作品で構成されている。しかも、全員がそれぞれ名を成した英国人作家だ。
キャンベルの二作品は作家デビュー直後のものだが、丁寧で真摯な恐怖譚の印象。早くからその名が紹介されていたものの、その実態が不明瞭だったグラーキの初出が邦訳されたことは実に喜ばしい。
ウィルソンについては多少好き嫌いが出るだろう。やや冗長と言えなくもないが、「狂気の山脈にて」の続編を企図したものとしてはまあ仕方がないと思える。
ラムレイの作品は今世紀になってから書き下ろされたもので、最後の結末にはうならされた。ラムレイというと日本では『タイタス・クロウ・サーガ』(東京創元社)のヒロイックで陽性なイメージが強いと思うが、そういった要素は本作には微塵も感じられない。
このシリーズが今後も続いていくことに期待したい。
キャンベルの二作品は作家デビュー直後のものだが、丁寧で真摯な恐怖譚の印象。早くからその名が紹介されていたものの、その実態が不明瞭だったグラーキの初出が邦訳されたことは実に喜ばしい。
ウィルソンについては多少好き嫌いが出るだろう。やや冗長と言えなくもないが、「狂気の山脈にて」の続編を企図したものとしてはまあ仕方がないと思える。
ラムレイの作品は今世紀になってから書き下ろされたもので、最後の結末にはうならされた。ラムレイというと日本では『タイタス・クロウ・サーガ』(東京創元社)のヒロイックで陽性なイメージが強いと思うが、そういった要素は本作には微塵も感じられない。
このシリーズが今後も続いていくことに期待したい。