Amazonで購入させていただきました。
まずぼく個人のことを述べさせていただくと、ぼくは(社会的)ひきこもり経験者です。
その後、アルバイトを経て、現在は正社員として働かせていただいています。
本書は最近購入させていただいたものですが、いつまた(社会的)ひきこもりになるかもしれないぼくにとって有益な情報が詰めこまれていたので、経験者のぼくのレビューが誰かの役に立ったら、と思い筆を取った次第です。
本書は斎藤環(さいとう・たまき)さんと、畠中雅子(はたなか・まさこ)さんの共著です。
斎藤さんは、
①(社会的)ひきこもり
②病跡学(『関係の化学としての文学』で2010年度の日本病跡学会賞を受賞)
③(ラカンの)精神分析(『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』で2013年に第11回角川学芸財団賞を受賞)
④思春期・青年期の精神病理学
を専門とする精神科医でいらっしゃいます。
本レビュー執筆当時(2016/11/4)には母校・筑波大学の医学医療系社会精神保健学の教授に就任していらっしゃいます。
一方、畠中さんは関しては、本書の奥付によるならば、「ファイナンシャルプランナー.雑誌・新聞・インターネットに多数の連載をもつほか,講演,個人のマネー相談,金融機関のアドバイザー業務などを行っている」とのことです。
斎藤さんが書かれた「はじめに」はとても有益な情報が詰まっていると思われるので、以下、全文引用します。
「ひきこもり支援の難しさは、それが広い意味で「生き方」の問題に結びついてしまうためもあります。「病気」の問題ならともかく、「生き方」の問題には治療だけでは対処できません。教育、カウンセリング、哲学、経済学など、学際的な協力が必要となります。/ひきこもりの青少年が高年齢化し、平均年齢が三〇歳を超えてしまった今、「いかにして生き延びるか」はますます重要なテーマとなりつつあります。早くからこの問題に取り組んできた畠中雅子さんとの出会いは、私にとって決定的なものでした。無理を言って参加してもらったシンポジウムで、彼女の具体的なアドバイスを聞けば聞くほど、こうした知恵こそ私たちに欠けていたものだと痛感しました。/その後、内閣府からの依頼で参加した『ひきこもり支援者読本』の執筆陣に畠中さんの名前もありました。就労支援からサバイバルプランにまで踏み込んだ画期的な本ができましたが、残念ながら配布されたのは支援者のみでした。/それではあまりに惜しい、という思いから、たまたま縁のあった岩波書店に相談したところ、ブックレットという形を提案されました。かくして『支援者読本』の、私と畠中さんのパートを大幅に加筆修正したものが本書です。/本書はひきこもりの問題に、主に経済的な視点から検討と対策を試みたはじめての本です。ひきこもっている当事者の方々や、不安を抱えるご家族に役立てていただければ、うれしく思います」
さて、本書は2部構成になっています。
Ⅰ部が精神科医である斎藤さんによるパートです。
それは以下のような内容です(煩雑になるため、また読みやすさを考慮して、以下、「(社会的)ひきこもり」は「ひきこもり」に統一します)。
①ひきこもりの定義
②ひきこもりに至る原因
③「ひきもりシステム」と呼ばれる、ひきこもりのメカニズム
④ひきこもりに伴う精神症状
⑤ひきこもりの鑑別診断(クライアント<患者>がひきこもりかどうかを判断すること)
⑥ひきこもりの治療的支援の三段階(家族相談→個人治療→集団適応支援)
⑦ひきこもりの訪問支援活動
⑧ひきこもり支援におけるメールとネットの利用について
⑨ひきこもり問題におけるお金とライフプランの重要性について
⑩ひきこもり問題における福祉サービスの利用について
Ⅱ部はファイナンシャルプランナーの畠中さんのパートです。
それは以下のような内容です(ぼく自身が要約しました)。
ひきこもりの方々が最期まで生きのびるための「サバイバル・ライフプラン」(「生きのびるための人生設計」ぐらいの意味)を提示する。
そのためには、まず各家庭がバランスシートとキャッシュフロー表を作ることが第一である。
そうすると、ひきこもり当事者の両親と当事者双方ともが平均寿命まで生きるとして、一体いまの段階でいくら必要なのかが見えてくる。
もし現段階で必要な金額に達していなかったのなら、一分一秒でも速く対策を立てる。
当事者が簡単なアルバイトをするのでもいいし、出費を切りつめるでもいい。もしくは、リバースモーゲージ(自宅や土地を担保にお金を借りる制度)を利用して不足分を補うのでもいい。
その他、親亡きあとの対策として、成年後見制度を利用したり、不動産屋に事情を説明しておく(息子あるいは娘はひきこもりなのでスムーズに家賃を納入できない可能性があることなどを説明しておく)。
また、いずれ訪れるひきこもり当事者の一人暮らしに備えて、あらゆる請求を口座引きおとしにしておく。また、当事者がATMからお金を引きだせるように訓練しておく。銀行や役所に慣れるようにしておく。役所の手続きに慣れておく。また、食費はただでさえお金がたくさんかかってしまう領域のため、自炊の訓練もさせておく。
その他、まだまだたくさんのことが書かれていますが、一応ポイントは押さえたかな、と思っています。
本書で一番大事なところはもちろんファイナンシャルプランナー畠中さんが担当されたⅡ部の「サバイバルプラン」だと思いますので、ぼくの拙い要約であっても何かしら気になったことがあった方は現物に当たった方がいいと思われます。
本書は岩波ブックレットですから、端的に安く700円です(税抜き)。
また、103ページしかない薄い本ですから30分から1時間あれば読めてしまいます。難しい表現も何も使っていません。非常に読者想いの本だと思います。
ちなみに。
斎藤さんによれば、「日本にいるひきこもりは100万人」だそうです(いろいろなところでそう書いていらっしゃいます)。
「2030年問題」というものもあるそうです。
斎藤さんの著書・『ひきこもり文化論』から引用します。
「(前略)私がかねてから懸念しているのが、「二〇三〇年問題」です。/私の推計では、二〇三〇年頃から、ひきこもりやニートの第一世代が、老齢年金の支給開始年齢である六五歳を迎えはじめます。親の年金で生活し、ほとんど所得税も納めたことのない高齢者が、突如として数万人規模で出現することになるのです。その時果たして、年金の財源がその負担に耐えられるでしょうか。そのとき世論は、彼らのような存在にどこまで寛容であり得るでしょうか。/私の予測が外れるとしたら、それは彼らが年金を請求する代わりに、自殺や孤独死を選んだ場合のみです。深刻な事態には変わりはありません。現時点で十分に予測可能な問題だけに、政策レベルでの対応が望まれる問題の筆頭格、と言えます。念のために付け加えておけば、これを予防しうる政策がありうるとすれば、大規模で包括的・継続的な就労支援策をいますぐ実施することをおいて他にありません」
「2025年問題」というのもあります。
これは、(人数の多い)団塊の世代が後期高齢者になってしまうことによって、福祉財源がパンクしてしまうのではないか、という問題です。
これらを考え合わせると、やはり畠中さんがおっしゃるように国をあてにするのではなく自力でサバイバルするのが肝要だと思います。
そして「自力でサバイバル」という戦略は、特に「ひきこもり当事者」だけの問題ではなく、いまこの国に生きているすべての人にとって大事な戦略となっていると思います。
本書は題名のとおり、「ひきこもりのライフプラン」ですが、「すべての人のためのライフプラン」としても読めると思います。第一、いつ自分がひきこもりやニートになってしまいかねない世の中ですから。
*斎藤さんはひきこもり問題の対処法に関する本を2冊出されています。『「ひきこもり」救出マニュアル<理論編>』(ちくま文庫、2014)と
『「ひきこもり」救出マニュアル<実践編>』(ちくま文庫、2014)です。本書と合わせて読んでみるといいかもしれません。
**ぼくは精神医学やファイナンシャルプランニングについて門外漢ですので、本レビューに間違い等散見されるかもしれませんが、文責はぼくにあります。

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ひきこもりのライフプラン――「親亡き後」をどうするか (岩波ブックレット) 単行本(ソフトカバー) – 2012/6/7
ひきこもり状態にある人たちの平均年齢は今や30歳を越えている。大半は親の経済的支援のもとで暮らしているが、親の死亡に伴う、長期のひきこもりの人たちの貧困化が懸念されている。ひきこもりが一生続いたとしても、親の現在の資産を最大限に活用して、子を生涯支えられるライフプランの作り方をアドバイスする。
- 本の長さ96ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2012/6/7
- 寸法15 x 0.7 x 21 cm
- ISBN-104002708381
- ISBN-13978-4002708386
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2012/6/7)
- 発売日 : 2012/6/7
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 96ページ
- ISBN-10 : 4002708381
- ISBN-13 : 978-4002708386
- 寸法 : 15 x 0.7 x 21 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 551,185位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2016年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年4月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
引きこもりの子どもを持つ親はもちろんの事いつ親は子どもを残して死んでしまうかわからないので、参考になることが沢山ありました
2017年9月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
残念ながら、本書に記載されている、求められている水準、すなわち経済力は、おそらく両親共働きで、かなりの高所得者を親にもつひきこもり者にのみ通用する、かもしれない算定基準で、大方の家庭では通用しない水準です。もっと所得階層というものを、全国的、地域的にみて算定しないことには、参考にならないような、計算をしています。経済的観点からの救済、というアプローチは一つの手段として良いと思います。
2014年3月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、思いの外現実的かつ実用的な内容で、非常に興味深く読めました。
私としては、若干地味な記述ながら、特に以下部分に関心を抱きました。
「お子さんが精神症状を伴っておらず、親の資産が途中で底を突いてしまうことが明らかなときは(中略)キャッシュフロー表をお子さんに見せつつ、お子さんの人生に大きく立ちはだかる『働く』ことについては、『正規雇用』でなくてもいいので、親の資産では足りない部分をお子さんが自分で補えるようにしなくてはならないと考えてもらえるように、努力してみて下さい。」(84-85頁)
生活に必要なお金を稼ぐために仕事をする。実にシンプルです。
ところで、多くの人々は「生活に必要なお金」以外に、「人間的成長」、「自己実現」、「生きがい」、「達成感」、「充実感」、「刺激」、「格好良さ」、「社会との繋がり」等々、多くのことがらを仕事に依存しています。
一方で、それらを仕事以外に依存することなど、できるはずが無いという意見も根強くあります。背景にはそれらのことがらを仕事以外のことに依存してきた人が周囲に余りいないということがある様に思います。
しかし、現代日本の労働市場は、若い世代が「生活に必要なお金」以外のことがらを、仕事に依存できる程には、甘くありません。
こんなことを書くと、「どんな仕事でも人間的に成長することや生きがいを見つけることは出来る。職場に適応しようとする努力や、業務に興味を持とうとする努力、自分で課題を見つけてそれを克服しようとする努力、が足らないだけだ」という意見が聞こえてきそうです。しかし、個人的にはそうは思えません。
私の職場や取引先を見回しても、今はどこも、5人の監督と5人の選手でチームを組んで野球をやっている様なものなので、ベンチの監督達にヘタクソーと怒鳴られながら5人だけでプレーしている選手達は、それはもう皆ヘロヘロになっています。そして、働く自分が格好良いとは思えず、自身が惨めに思えてくることさえ日常的にあると思います。そんな中、無理してその仕事に上記のことがらを依存することは、精神的にも肉体的にも過酷だと思います。
個人的には、もうそれらのことがらを、仕事以外のことに依存する努力をしてもいいのではと感じます(もちろん仕事にそれらを依存できれば良いですが、それは幸運なことです)。
例えば、アメリカでは、多くの人々が休日に教会に行くと聞いたことがあります。私は宗教学者や社会学者ではありませんが、おそらく、多くの日本人が今迄仕事に依存してきた「生活に必要なお金」以外のことがらの内の多くを、アメリカの人々は教会に依存しているのでは無いかと推測します。
これは一例です。別に宗教が有効または必要と言っている訳ではありません。ただ、「生活に必要なお金」以外の多くのことがらを仕事に依存しない努力をすることが、この厳しい日本社会を生きのびていくための知恵として、非常に大切なことである様に感じるだけです。
本書の先程のシンプルな記述は、仕事への依存内容の考察についてのものではありませんが、私には非常に新鮮に感じられた次第です。
本書は極めて現実的かつ実用的内容のため、(場合によっては来年の相続税の基礎控除額変更を頭の片隅に置いておく必要があるのかもしれませんが)大変参考になりお薦めです。
私としては、若干地味な記述ながら、特に以下部分に関心を抱きました。
「お子さんが精神症状を伴っておらず、親の資産が途中で底を突いてしまうことが明らかなときは(中略)キャッシュフロー表をお子さんに見せつつ、お子さんの人生に大きく立ちはだかる『働く』ことについては、『正規雇用』でなくてもいいので、親の資産では足りない部分をお子さんが自分で補えるようにしなくてはならないと考えてもらえるように、努力してみて下さい。」(84-85頁)
生活に必要なお金を稼ぐために仕事をする。実にシンプルです。
ところで、多くの人々は「生活に必要なお金」以外に、「人間的成長」、「自己実現」、「生きがい」、「達成感」、「充実感」、「刺激」、「格好良さ」、「社会との繋がり」等々、多くのことがらを仕事に依存しています。
一方で、それらを仕事以外に依存することなど、できるはずが無いという意見も根強くあります。背景にはそれらのことがらを仕事以外のことに依存してきた人が周囲に余りいないということがある様に思います。
しかし、現代日本の労働市場は、若い世代が「生活に必要なお金」以外のことがらを、仕事に依存できる程には、甘くありません。
こんなことを書くと、「どんな仕事でも人間的に成長することや生きがいを見つけることは出来る。職場に適応しようとする努力や、業務に興味を持とうとする努力、自分で課題を見つけてそれを克服しようとする努力、が足らないだけだ」という意見が聞こえてきそうです。しかし、個人的にはそうは思えません。
私の職場や取引先を見回しても、今はどこも、5人の監督と5人の選手でチームを組んで野球をやっている様なものなので、ベンチの監督達にヘタクソーと怒鳴られながら5人だけでプレーしている選手達は、それはもう皆ヘロヘロになっています。そして、働く自分が格好良いとは思えず、自身が惨めに思えてくることさえ日常的にあると思います。そんな中、無理してその仕事に上記のことがらを依存することは、精神的にも肉体的にも過酷だと思います。
個人的には、もうそれらのことがらを、仕事以外のことに依存する努力をしてもいいのではと感じます(もちろん仕事にそれらを依存できれば良いですが、それは幸運なことです)。
例えば、アメリカでは、多くの人々が休日に教会に行くと聞いたことがあります。私は宗教学者や社会学者ではありませんが、おそらく、多くの日本人が今迄仕事に依存してきた「生活に必要なお金」以外のことがらの内の多くを、アメリカの人々は教会に依存しているのでは無いかと推測します。
これは一例です。別に宗教が有効または必要と言っている訳ではありません。ただ、「生活に必要なお金」以外の多くのことがらを仕事に依存しない努力をすることが、この厳しい日本社会を生きのびていくための知恵として、非常に大切なことである様に感じるだけです。
本書の先程のシンプルな記述は、仕事への依存内容の考察についてのものではありませんが、私には非常に新鮮に感じられた次第です。
本書は極めて現実的かつ実用的内容のため、(場合によっては来年の相続税の基礎控除額変更を頭の片隅に置いておく必要があるのかもしれませんが)大変参考になりお薦めです。
2018年12月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
実はこの本、以前図書館で読んだことがありました。次男が自律神経失調症で登校できず、隣市の心療内科に通っていたので待ち合い時間を利用して通いつめていたのです。
今も完治はしていません。朝起きられず、夜眠れず、外に出られない。大学を休学し、ひきこもり中です。このまま一生外に出られない状態が続いたら…健康は、仕事は、お金は。悩みは尽きません。
せめてお金の心配だけでも何とかならないかと、手もとに置いて事ある毎に読み直すために買いました。
具体例も多く、おすすめです。
今も完治はしていません。朝起きられず、夜眠れず、外に出られない。大学を休学し、ひきこもり中です。このまま一生外に出られない状態が続いたら…健康は、仕事は、お金は。悩みは尽きません。
せめてお金の心配だけでも何とかならないかと、手もとに置いて事ある毎に読み直すために買いました。
具体例も多く、おすすめです。
2012年11月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ひきこもりの第一人者とファイナンシャルプランナーによる共著。
'一部では斉藤環氏が「ひきこもりの理解と対応」について述べる。著者の臨床経験と研究から提示される具体的な関わり方は、臨床家や家族すべてにとって役に立つものとなっている。あいまいな助言に留まるのではなく、しっかりと具体的なアドバイスが多く含まれているのが何より魅力。
'二部では畠中雅子氏が、「ひきこもりのライフプラン」について述べる。本書のサブタイトルでもある「親亡き後」をどうするか、について経済的な観点からリアルに書いている。親亡き後どうするか、はひきこもりに限らず、様々な障がいを持つ人などにとっても大事な話だ。ひきこもり支援に経済的な観点を臆面もなく打ち出した畠中氏は余人にとって代えがたいFPであろう。
この本は、すべてのひきこもり支援者にとっての指針とすべきだ。
'一部では斉藤環氏が「ひきこもりの理解と対応」について述べる。著者の臨床経験と研究から提示される具体的な関わり方は、臨床家や家族すべてにとって役に立つものとなっている。あいまいな助言に留まるのではなく、しっかりと具体的なアドバイスが多く含まれているのが何より魅力。
'二部では畠中雅子氏が、「ひきこもりのライフプラン」について述べる。本書のサブタイトルでもある「親亡き後」をどうするか、について経済的な観点からリアルに書いている。親亡き後どうするか、はひきこもりに限らず、様々な障がいを持つ人などにとっても大事な話だ。ひきこもり支援に経済的な観点を臆面もなく打ち出した畠中氏は余人にとって代えがたいFPであろう。
この本は、すべてのひきこもり支援者にとっての指針とすべきだ。
2014年5月25日に日本でレビュー済み
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前半では、斎藤環氏が、子どもの親との同居率が高い地域では「ひきこもり」となり、
同居率が低い地域では「若年ホームレス」となるという社会現象を記載していますが、
そのようなマクロの現象とは別に、家族のミクロなレベルでの対処法が細かく記されています。
マズローの欲求5段階説による生理・安全・関係の欲求を満たしたうえで
承認欲求=就労意欲につなげる:たとえば、会話においては将来の話、同世代の友人の話、
学校の話など本人が劣等感を持っている話は避けるが、本人のいいなりにはならないこと、
物を買うという社会参加をするためと、お金を使わない無為の生活を避けるために
毎月一定額の小遣いを渡すことなどです。
後半では、畠中雅子氏が、お金の面から
(1)親の側として、青年が働けない状況が永遠に続くとした最悪の場合に、
生活が成り立つのかどうかを親の不動産・預金・保険・支出を洗い出して見積もること、
介護付有料老人ホームへの住み替えを検討すること、家族と本人のシミュレーションについて記載しています。
(2)本人の側として、国民年金保険料を支払うか免除の手続きをすること、
生活保護の利用は最後の手段とすること、リバースモーゲージの利用を検討すること、
親亡き後のサポートとして任意後見制度を検討すること、相続のことを記載しています。
お金の心配をなくしたうえで、本人の承認欲求を満たせるようにするという
現実的な方針で書かれた、たいへん良い本だと思います。
同居率が低い地域では「若年ホームレス」となるという社会現象を記載していますが、
そのようなマクロの現象とは別に、家族のミクロなレベルでの対処法が細かく記されています。
マズローの欲求5段階説による生理・安全・関係の欲求を満たしたうえで
承認欲求=就労意欲につなげる:たとえば、会話においては将来の話、同世代の友人の話、
学校の話など本人が劣等感を持っている話は避けるが、本人のいいなりにはならないこと、
物を買うという社会参加をするためと、お金を使わない無為の生活を避けるために
毎月一定額の小遣いを渡すことなどです。
後半では、畠中雅子氏が、お金の面から
(1)親の側として、青年が働けない状況が永遠に続くとした最悪の場合に、
生活が成り立つのかどうかを親の不動産・預金・保険・支出を洗い出して見積もること、
介護付有料老人ホームへの住み替えを検討すること、家族と本人のシミュレーションについて記載しています。
(2)本人の側として、国民年金保険料を支払うか免除の手続きをすること、
生活保護の利用は最後の手段とすること、リバースモーゲージの利用を検討すること、
親亡き後のサポートとして任意後見制度を検討すること、相続のことを記載しています。
お金の心配をなくしたうえで、本人の承認欲求を満たせるようにするという
現実的な方針で書かれた、たいへん良い本だと思います。
2014年1月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
当然予想される答えを詳しく掘り下げているだけで、特別想定外のアイデアは無かった。