「対談」形式で書かれているが実際は「一問一答」形式で進んでいる。そのため議論は深まらず双方の意見は平行線をたどっている。最初はその事に気がつかず「劉氏の強硬な意見に対して、なぜもっと突っ込んだ議論をしないのか」と納得がいかなかったが、読み進めるうちに「現状ではその方法がベストなのではないか」と思うようになった。現状認識に差がありすぎるため、もし相互に突っ込んだ議論をしようとすれば収拾がつかなくなっていただろう。
劉氏の現代の日本に対する認識は高くない。それは日本に来たことがなく、中国国内の世論、中国で得られる限られた情報から持論を展開していることによるのだろう。また劉氏はその立場によるものなのか、軍人に特有なのか分からないが、ある種の気負いや思い込みによる強硬な意見が目立つ。「日本はこういう路線を進もうとしているでしょう?」と日本人としては思いもよらない事を繰り返し述べる。日本が平和的な貢献をしているとどれほど説明しても、その事には耳を貸さないようにも感じられた。また、過去の戦争当時の日本を通して現代の日本を見るという見方も、中国人の一般的な共有認識を出ていない。その強い思い込みがあるために、議論がかみ合わず、深まらない。
そのような激論の中で加藤氏は日本人市民として冷静に意見を述べているのであり、情報量、見識、見聞の広さで見れば、若い加藤氏の方が何倍も上ではないか。情報量と教育の問題が大きい。
議論はかみ合わない部分が多いが、それでも「一般の中国人、或いは中国の軍人が日本の現状をどう認識しているかを表に出す」という意味で良い記録になったのではないか。中国と日本はお隣さんとして今後も共存していかなければならないのだが、これほど見解の違いがあるということ。相互理解の難しさを浮き彫りにした、明確に世に示したのがこの本であろう。現状で相互理解が難しくても、日本は辛抱強く相互理解の方向に進まなければならないのである。それにしても劉氏のような、あの認識が中国の政府や軍人の平均的な認識だとしたら、日本人は彼らの現状に対する認識が成熟するのをだいぶ待たなければならないだろう。
日本の指導者層も明確にできない「ジャパンドリーム」という事に関しては、中国の野心的な国家の政策とは異なり、成長期を過ぎた成熟した社会を目指すこと。個々人の平和で安らかな暮らしを確保すること、そのための国際関係であるというのが落としどころではないだろうか。多様化が進んでいる日本では「ある一つの方向性で」というのは難しく、これまで通り普遍的な価値観を掲げる方向で進むより他ないだろう。
若い加藤氏は難しい仕事をよく頑張ったという印象。彼についてはネット上に様々な意見が見られるが、彼のような発信力、問題意識、そして高い語学力を持ち合わせた日本人は稀有である。
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日本夢 ジャパンドリーム──アメリカと中国の狭間でとるべき日本の戦略 単行本 – 2018/6/26
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中国人民解放軍将校が問う、
「日本人はなぜ夢を語らない? 日本に夢はあるのか?」
日本と中国、国家の夢=ビジョンをめぐる白熱の討論
中国人民解放軍国防大学教授/上級大佐である劉明福は、中国国内でベストセラーとなった『中国夢』の著者であり、その主張は、習近平国家主席が掲げる指導思想・国家目標「チャイナドリーム」の土台になったと言われる。その劉大佐が突きつけた痛烈な問い、「夢を持たない民族に未来はない。日本に夢はあるのか?」。
中国の指導者層は、日本を、アメリカを、世界をどう見ているのか。日本人青年と人民解放軍将校が繰り広げる、日米中3国の未来をめぐっての激論の記録。
【目次】
序章 日中米〝三夢志〟
■第一部 チャイナドリーム、そして中国という謎
第1章 中国人を鼓舞し、世界を震撼させるチャイナドリーム
第2章 チャイナドリームの戦略的意義と奮闘の段階
第3章 チャイナドリームとアメリカンドリーム──一つの地球と二つの夢をめぐる協力と競争
第4章 世界一の政党を目指す中国共産党
■第二部 アメリカンドリーム、そして米国という謎
第5章 アメリカンドリームはこれからも輝き続けるか?
第6章 アジアを分裂させ、日中を対抗させるのが米国の戦略なのか?
第7章 米国が覇権に別れを告げて、世界には初めて未来がある?
第8章 米国が世界を救うのではない、世界が米国を救うのだ
■第三部 ジャパンドリーム、そして日本という謎
第9章 ジャパンドリームは神秘的、秘密主義的で不透明?
第10章 ジャパンドリームをめぐる四つの方向性
第11章 チャイナドリームとアメリカンドリームの狭間で
第12章 〝ジャパンドリーム〟を達成する上で避けては通れない関門
第13章 日本が〝イノベーション大国〟を目指すための戦略と智慧
「日本人はなぜ夢を語らない? 日本に夢はあるのか?」
日本と中国、国家の夢=ビジョンをめぐる白熱の討論
中国人民解放軍国防大学教授/上級大佐である劉明福は、中国国内でベストセラーとなった『中国夢』の著者であり、その主張は、習近平国家主席が掲げる指導思想・国家目標「チャイナドリーム」の土台になったと言われる。その劉大佐が突きつけた痛烈な問い、「夢を持たない民族に未来はない。日本に夢はあるのか?」。
中国の指導者層は、日本を、アメリカを、世界をどう見ているのか。日本人青年と人民解放軍将校が繰り広げる、日米中3国の未来をめぐっての激論の記録。
【目次】
序章 日中米〝三夢志〟
■第一部 チャイナドリーム、そして中国という謎
第1章 中国人を鼓舞し、世界を震撼させるチャイナドリーム
第2章 チャイナドリームの戦略的意義と奮闘の段階
第3章 チャイナドリームとアメリカンドリーム──一つの地球と二つの夢をめぐる協力と競争
第4章 世界一の政党を目指す中国共産党
■第二部 アメリカンドリーム、そして米国という謎
第5章 アメリカンドリームはこれからも輝き続けるか?
第6章 アジアを分裂させ、日中を対抗させるのが米国の戦略なのか?
第7章 米国が覇権に別れを告げて、世界には初めて未来がある?
第8章 米国が世界を救うのではない、世界が米国を救うのだ
■第三部 ジャパンドリーム、そして日本という謎
第9章 ジャパンドリームは神秘的、秘密主義的で不透明?
第10章 ジャパンドリームをめぐる四つの方向性
第11章 チャイナドリームとアメリカンドリームの狭間で
第12章 〝ジャパンドリーム〟を達成する上で避けては通れない関門
第13章 日本が〝イノベーション大国〟を目指すための戦略と智慧
- 本の長さ392ページ
- 言語日本語
- 出版社晶文社
- 発売日2018/6/26
- ISBN-104794970269
- ISBN-13978-4794970268
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商品の説明
著者について
劉明福(リュウ・ミンフー)
中国人民解放軍国防大学教授。1969年入隊後、作戦部隊、大軍区機関、国防大学に勤務。済南軍区政治研究室主任、国防大学軍隊建設研究所所長などを歴任。軍隊建設学学科創設者。“劉伯承科学研究成果特等賞"獲得者。中国人民解放軍“全軍優秀共産党員"。著書に『習近平思想』『習近平が造る第三代解放軍』『覇権の黄昏』『論米国』など多数。2010年1月に出版した『中国夢』はベストセラーとなった。
加藤嘉一(かとう・よしかず)
米ニューヨーク・タイムズ中国語版コラムニスト。1984年静岡県生まれ。北京大学国際関係学院卒業。上海復旦大学新聞学院講座学者、米ハーバード大学ケネディースクール(公共政策大学院)・アジアセンターフェローなどを歴任。著書に『たった独りの外交録──中国・アメリカの狭間で、日本人として生きる』(晶文社)『われ日本海の橋とならん』『中国民主化研究──紅い皇帝・習近平が2021年に描く夢』(ともにダイヤモンド社)など。
中国人民解放軍国防大学教授。1969年入隊後、作戦部隊、大軍区機関、国防大学に勤務。済南軍区政治研究室主任、国防大学軍隊建設研究所所長などを歴任。軍隊建設学学科創設者。“劉伯承科学研究成果特等賞"獲得者。中国人民解放軍“全軍優秀共産党員"。著書に『習近平思想』『習近平が造る第三代解放軍』『覇権の黄昏』『論米国』など多数。2010年1月に出版した『中国夢』はベストセラーとなった。
加藤嘉一(かとう・よしかず)
米ニューヨーク・タイムズ中国語版コラムニスト。1984年静岡県生まれ。北京大学国際関係学院卒業。上海復旦大学新聞学院講座学者、米ハーバード大学ケネディースクール(公共政策大学院)・アジアセンターフェローなどを歴任。著書に『たった独りの外交録──中国・アメリカの狭間で、日本人として生きる』(晶文社)『われ日本海の橋とならん』『中国民主化研究──紅い皇帝・習近平が2021年に描く夢』(ともにダイヤモンド社)など。
登録情報
- 出版社 : 晶文社 (2018/6/26)
- 発売日 : 2018/6/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 392ページ
- ISBN-10 : 4794970269
- ISBN-13 : 978-4794970268
- Amazon 売れ筋ランキング: - 155,138位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 984位外交・国際関係 (本)
- - 27,931位ノンフィクション (本)
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