たぶん、この本はおもしろいのだろう。わたしは、読めていない。内容と文体が撚り合ったようなかたちで、内容が入ってくることは、文体が入ってくること、文体が入ってくるとともに内容も入ってくるという感じでは読めていないので。約めて言えば、ナルシシズムにとらわれた者(紗奈江という女性)が、欠損された、欠けたナルシシズムにおおわれている者が、この世で生きていくことの不可能性――社会はそういう存在を許さない、そんな存在を受け入れないように徹底的にスクラムを組んでいる。人権派弁護士などと言う空けた存在が、そんな徹底的にスクラムを組まれた社会に彼ら自身が生きられないことの隠蔽のように、特権的だと誤解している(なぜなら彼らは法律を知っているのだから)社会の空中庭園のようなへりから「寄り添って」くれるだけだ――を描いていると言えるかも知れない。爪に火をともすようにがりがりにまで追い込んだように、心の線を萎縮したように小さく細く、(紗奈江という)女をとらえ、それに呼応するような、あるいは、そういう女にぎりぎりのところで交差できるような(僕という)男を配しながら。そして、彼女らの、彼らの心の中を描くのに、大がかりな迷宮事件をフィールドとして、その上を徹底的に転げまわすというように。しかし、上記のようなちぐはぐな読みしかできていないわたしには、うまくつかめていないと言った方がいいに違いない。
ただ、レヴューでどなたかが仰っているが、これは恋愛小説なのだ。わたしもそう感じる。行き違いなどは必ずある。彼らはお互いに惹かれあうが、根本的なところでそっぽを向いている。根本的なところでそっぽを向いていたって、結婚して、もしかしたら、仲睦まじく過ごすことができるかも知れない。そんな意味で、恋愛小説だ。もちろん、仲睦まじく全うしないかも知れない。それは分からない。
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迷宮 (新潮文庫) 文庫 – 2015/3/28
中村 文則
(著)
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胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな無数の折鶴が螺旋を描く――。都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、睡眠薬で昏睡状態だった。事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。時を経て成長した遺児が深層を口にするとき、深く沈められていたはずの狂気が人を闇に引き摺り込む。善悪が混濁する衝撃の長編。
- 本の長さ205ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2015/3/28
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101289557
- ISBN-13978-4101289557
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迷宮
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価格 | ¥539¥539 | ¥539¥539 | ¥473¥473 | ¥506¥506 |
【新潮文庫】中村文則 作品 | 親から捨てられ、殴る蹴るの暴行を受け続けた少年。彼の脳裏には土に埋められた記憶が焼き付いていた。新世代の芥川賞受賞作!〈芥川賞受賞〉 | 黒ビニールに包まれた謎の瓶。私は「恋人」と片時も離れたくはなかった。純愛か、狂気か?芥川賞・大江賞受賞作家の衝撃の物語。〈野間文芸新人賞受賞〉 | いつまでもこの腕に絡みつく、人を殺した感触。人はなぜ人を殺してはいけないのか。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家が挑む衝撃の問題作。 | 密室状態の家で両親と兄が殺され、小学生の少女だけが生き残った。迷宮入りした事件の狂気に搦め取られる人間を描く衝撃の長編。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 文庫版 (2015/3/28)
- 発売日 : 2015/3/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 205ページ
- ISBN-10 : 4101289557
- ISBN-13 : 978-4101289557
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 373,961位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2015年7月3日に日本でレビュー済みAmazonで購入友人が「絶対お前に合うと思うから読んでみろよ」と勧めてくれて初めて読んだ中村文則作品が『迷宮』である。友人は私を何か狂人のように(いい意味で?)みなしているようだが、この作品を読んで自分がどれほど「正常」かを思い知らされた。それは安心とともにほんの少しの落胆をもたらした。はっきり言って作者は狂人である。恐ろしい「自分という存在」を内に秘めている。だからこそある意味作者の本心の吐露であろう『迷宮』という作品は蠱惑的で、読んだ人の中に潜む「何か」を刺激し目覚めさせる。
- 2016年4月19日に日本でレビュー済みAmazonで購入この小説は、私にとっては非常に感想を書くのが難しい小説だった。
一度読み終わって、この「迷宮事件」の謎が一応の答えに辿りついていたとしても、それが何を意味するのか、一度読んだだけではわからなかった。
もっと言えば、なんのために中村さんがこの小説を書いたのか、その理由がわからなかった。それで、もう一度、最初から読み直す必要があった。
再読しながら、少しずつ、この小説の意味を探った。私自身が迷宮で迷わないように。作者が、いや人間が抱えている闇の温度というものがいったいどんなものなのか、知りたいと同時に自分がそれに惑わされないように、注意しながら読み進めた。その中で、この感覚には覚えがあると実感しながら、そこにある感触が悪を引き寄せるのだろうかと探った。
「どこか他人とズレている自分を常識に合わせなければならない」
そんなふうに思うことは誰にでもあるのではないか。
そして、幸福の価値基準も、世間に合わせなければならない。そこに歪みを感じながら、それでもなんとかやり過ごして普通を装っている、そんな日常を憎みながら。
でもそんな価値基準なんて、突然の天災で奪われてしまうということを私たちは知ってしまった。あるいは、それはテロなのかもしれない。戦争かもしれない。
天災だろうと人災だろうと、一個人なんて簡単にひねりつぶしてしまうような暴力が存在していて、それがいつ起きるかわからないのに、私たちは世間が定めている基準に合わせて、生の自分を殺して生きている。それに何の意味があるのか。
この小説の主人公は、幼少の頃、世界と自分を合わせられずに内面の世界に閉じていた。それは親との関係が上手くいっていないことがベースにある。
幼い頃というのは、自分一人では生きられない非力な存在であり、世界は恐ろしい存在である。その幼い自分を守る唯一のものは親の存在である。その親が、自分を守ってくれなかったら、自分を愛してくれていなかったら、その子は最初に覚えるべき「信頼」という感覚を知ることができない。信頼すべき存在がなかったら、その子は常に不安に苛まれ、人に対して疑心暗鬼になってしまう。
自分が存在できる場所であるはずの「家庭」がもし安定を欠いていたら、そこに居ることを望むことはできず、自分を不安に追いつめる何かを排除したいと思うようになるかもしれない。
主人公も、主人公が出会った折鶴事件の遺児である紗奈江も、親との関係が歪だった。家庭が安らぎの場所ではなかった。そういうなかで自我を形成していくとき、人はかよわい自分を守るために何か強い存在を自分の中に創り出そうとするのかもしれない。それが、小説のなかでは「R」であったり、「ヒーロー」であったり、「多神」だったりするのかもしれない。
主人公と紗奈江が惹かれ合うことになるのは、自分の存在価値への不安が根底にあるからであろうか。自分の駄目な部分を刺激する存在、同じ傷を内面に隠している存在、それが互いを惹きつけたのだろうか。
「迷宮」とは、迷宮入りした殺人事件の謎という意味もあるのだろうが、これは人が陥る人生の迷宮という意味もあるのだろう。どんなふうに「生きる」ことが、その人にとって幸福なのか。そもそも「幸福に生きる」ことが生きていることの目的なのか。人はなんのために生きるのか。
結局、答えなんてみつからない。この小説も答えを導き出してはいない。
ただ、自分の内面の不可思議な衝動と向き合ってみただけだ。
この小説は、中村さんの初期作品の臭いがする。自分が抱えているドロドロしたものと、距離を置かずに向き合っている。だから、何か酔ったような感覚を覚え、なんだか気持ち悪い不安定な粘りが体に纏わりつくのかもしれない。
結局、うまく感想を書けないことに気づく。申し訳ない。
またしばらく時間を置いて、再読することにしよう。
これ以上、酔っているわけにもいかないだろうから。
- 2016年4月21日に日本でレビュー済み普通に生きる、とはどういうことだろう。日常と非日常の境目はどこで線引きされるのだろう。本物の狂人や、 恐ろしいものとはどういうものなのか。いわゆる普通に生きている、生きることができる人は、これらの疑問を持たないのかもしれない。
いや、立ち止まって考えてはいけないのかもしれない。普段、僕は誰かと会話をする際、わかっていて敢えて相手を怒らせてみたい、当惑させてみたい、と考えたことはなかった。まあ、実行してしまったら後々めんどくさくなるし、考えないほうがいいのかもしれない。自分からわざわざ不都合な環境を作るのは、馬鹿か狂っているかのどちらかでしかない。でも、どんな人間でも時には一切をかなぐり捨てて、自分の中に鬱積した塊を掻きだしたくなるのではないだろうか。何の躊躇もなく、それができる人間を社会では狂人とか、異常などというのではないか。僕の頭の なかで、今、様々な憶測と疑問がパスを出し合い、手探りのなか正しいゴールへと向かおうと奮闘しているのがわかる 。 中村文則はいつだってフィールドとゲームを提供してくれる。だが、そこで僕や貴方がどのようにプレイするのかは、それぞれに委ねられているので、結果もそれぞれになる。その結果が出るまでを楽しめるのが中村文則の楽しみ方だと僕は勝手に思っている。
この本は、法律事務所で働く主人公新見と、迷宮入りした一家殺害事件「折鶴事件」の生き残りである紗奈江の出会いから始まる(冒頭の新見の回想については敢えて触れません。個人的に恐怖をそそられて、たまらないんだけどね)。彼女と会ったことをきっかけに、新見は自分でもはっきりした理由がわからないまま、事件を探るようになる。元刑事の探偵、会社での不正経理がばれて失踪する 紗奈江の男、事件にかかわった老弁護士にフリーライター。物語にはさまざまな「狂気じみている」人間が壇上に現れる。
僕たちの多くは、普段狂気というものを恐ろしいものとして忌み嫌っている。でも、人によっては快楽を与えてくれる何がしかを意味している(酔狂という言葉があるように)。新見に接触してくる、自分をおかしい奴と訝しがる人間たち。彼らは社会人としては何ら問題はなく、普通という名の檻からは全くはみ出てはいないだろう。本当に恐ろしいのは、自分が狂っているとわからない、自覚していない(またはそれが弱い)人間ではないか。僕にとって、本作品中で立派な狂人といえるのは、新見と 紗奈江だった。特に彼女は危険極まりなく、本を持つ手の震えが止まらなかった(あと、おしっこちびりそうになりました)。 事件の真相が、 紗奈江の口から開かされる後半の頁をめくっていくと 、彼女の家族(彼女含め)が、4人とも異常すぎて、恐怖と嫌悪感に襲われる。なぜこの家族はいびつになってしまったのか。頁をめくってもめくっても理解ができない。わからないから恐ろしくなる。途中で嫌悪感に耐えられなくなり、僕にこの本を閉じるようきつく警告を発してくる。でも、物語から伸びてくる無数の手が僕の腕や指をつかみ、無理やりにでも頁をめくらせようとする。本というものに対し、ここまでおびえたのは初めてだ。 巷にあふれる恐怖体験本などが、子供だましに思えるほどの一冊なので、真夜中のお供としておススメですよ。
- 2017年8月30日に日本でレビュー済みAmazonで購入中村文則の作品は初期から大体読んでいるが、暗い文体は健在だ。近年はミステリー仕立ての作品を書き、本作もそうだが、グイグイと読ませる文章力はさすがである。200頁ほどあるが、あっという間に読ませる。
ただ、紗奈江は美人らしいが、読んでいてそれほど魅力的あるいは魅惑的な女性だとは思えず、何故主人公が惹かれるのかよくわからなかった。設定が東日本大震災後になっているらしいが、震災を描く意味はこの作品からは感じられなかった。著者は学生時代を福島で過ごしたので震災に対する思いはあるだろうが、この作品ではまだうまく描こうとしていないと感じる。
- 2012年8月30日に日本でレビュー済みAmazonで購入猟奇的な一家殺害事件の生き残りであった女と深い仲になった若い男を語り手として、
物語が展開されていく。
一読した際の正直な感想は「良くない」である。その理由について考えてみる。
ここには「悪事」が書かれている。
だが、その事に接触する語り手の立場は、あくまで傍観者の領域から超えていかない。
この物語には、悪事に関わった当事者が一切登場してこないため、読み手は物語の核心に入り込んでいくことができない。
語り手が抱えている心の問題(Rと名付けられた、語り手の内面に潜む別人格)や、女に向けて語られた内面の苦悩が、
読み手としての自分の心に響いてこなかった。頁によっては、ある種の白々しささえ感じさせた。
後半、殺人事件の遺児となった若い女が事件を語る構成となっているが、事件の猟奇性があまりにエキセントリックで、
読者としてついていけなかった。また、女の言動が病的であるため、感情移入できない。
浮かんだ事柄をそのまま書き記していくと、このような感じになる。
初期作品と比較した場合、初期作品は、語り手が、明確な意思を持って行動しており、文体も、
語り手の明確な意思を反映したかのような緊張感と強度に満ちたものだった。
対して近作では、主人公の意思は脆弱で、常に動揺しており、文体も、それに見合った不安定なものになっている。
このこと自体に問題があるとは思わない。だが、近作に見られる作風は、時として、掴みどころのない、
どこかわけのわからない印象を読者に与えてしまうような、悪しき傾向を備えているように思う。