本書は『たとえば……どら焼きだったら』とあるように、宇宙のスケールを比喩的に平易に解説したような印象を受ける。それは当初一昔前に話題となった『
世界がもし100人の村だったら
』を連想させたが、本書の内容・構成は断片的な形式ではなく宇宙の各要素のスケール論に留まらず、太陽系外縁天体、恒星の誕生・超新星爆発、星間航法(ホーマン軌道の方程式)、ニューホライズン計画、ブラックホール、素粒子論(ニュートリノ・ヒッグス粒子)、重力レンズ効果、宇宙マイクロ波背景放射、ビッグバン理論、インフレーション理論、ダークマター(ダークエネルギー)、系外惑星等宇宙理論に関して最新理論まで一通り順序だてて概説するものである。宇宙理論にある程度習熟した読者にはトピックの掘り下げには物足りなさがあるかもしれないが、イラストも添えるなど一般的な読者には充分すぎる内容と言ってもよいだろう。
本書のコンセプトを如実に表すのは、アンドロメダ銀河と太陽系のある銀河系との比較に象徴されている。アンドロメダ銀河の見かけの大きさを「3度×1度もある……満月よりも数倍も広がっている」と解説し、その大きさは「12万光年」と算出し、他方銀河系の大きさ「10万光年」との差を簡略にするためその差を無視する。すると右二つの銀河の距離「230万光年」は、2個の「直径10cmのどら焼き」が「2.3mほど離して」置かれた関係にあるというものである(本書6章)。本書は当初2008年に書かれ2012年に加筆修正を得たもので、また著者が当時ハワイの「国立天文台ハワイ観測所」(すばる望遠鏡を備える)の研究員だったらしく、「すばる」観測による「129億1000万光年」の銀河発見(2012年6月)に言及している。余談ながら同年11月にHST(ハッブル宇宙望遠鏡)とスピッツァー(赤外線宇宙望遠鏡)を利用してNASA等が約133億光年彼方の銀河発見・写真を公開した。

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たとえば銀河がどら焼きだったら 比較でわかるオモシロ宇宙科学 (角川ソフィア文庫) 文庫 – 2012/11/22
布施 哲治
(著)
銀河系が直径10センチのどら焼きなら、アンドロメダは2メートル離れた同じ大きさのどら焼き――。銀河や、惑星、ブラックホールなどの宇宙の不思議を身近なものにたとえてわかりやすく解説する科学エッセイ。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社角川学芸出版
- 発売日2012/11/22
- 寸法10.7 x 1 x 14.9 cm
- ISBN-104044052131
- ISBN-13978-4044052133
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商品の説明
著者について
1970年神奈川県生まれ。1999年総合研究大学院大学修了。理学博士。国立天文台ハワイ観測所勤務ののち、現在、鹿島宇宙技術センター宇宙通信システム研究室主任研究員。著書は『なぜ、めい王星は惑星じゃないの?』『ようこそ宇宙の研究室へ』(ともにくもん出版)など多数。