今やＡＩが小説を書こうという２１世紀に、新しいスタイルの小説を書くことは人間に可能なのだろうか。第一部第三章では「絵画」の特殊性、独自性に「新しい小説」に使える何かが潜在しているのではとして、セザンヌの例を挙げている。セザンヌは風景写真を見て描いても、写真を選択的かつ圧縮的に「翻訳」して元の写真とは印象の異なる絵を描くという。不思議なのは、レプリカ作品は、元の写真とセザンヌの絵の中間くらいに見えるそうだ。そこから小説の表現について論じられるのだが、そこは本書を読んでほしい。
ちなみに第二部第三章で、出典がわからないとされていたＡの文章は葛西善蔵の「悪魔」の一節である。参考までに。
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