著者はリハビリテーションに携わる専門家ではないが、それによりまっさらな視点からのリハビリテーションの考察がなされている。何より驚かされるのは著者のリハビリ領域、またその関連領域(脳神経など)への造詣の深さである。
リハビリテーションの難しさは同じ障害、もしくは同じ疾患であったとしても、それぞれの患者さんによるバリエーションが豊富なことだと思う。例えば片麻痺の患者さんを考えてみると、呈する症状が同じであっても、その他の全身機能の状態によって全く動きが異なってくる。そのため同じ教育を受けてきたとしても、リハビリの現場ではある一定のレベルを超えると、セラピスト個々人でどうすればいいか考えねばならず、個での対応を求められる。
著者の専門は哲学、その中でも現象学である。本書によると現象学の思考法は日常で当たり前になっていること、普段気に留めないことを疑ってみること、そしてそれにより現実と対峙する態度を身につけることであるという。
リハビリテーションは今後の高齢化社会を鑑みるととても重要で、学問としての発展が求められてくる分野だと私は感じている。今の現状に悩み、一歩ずつでも進んでいきたいと考えている方々にはぜひ手に取ってもらいたい一冊である。
また、これはリハビリテーションに携わる人だけでなく、そういった分野に関連が薄い人にも勧めたい1冊である。リハビリのことを知ると、私たちが普段気にかけていない動作の不思議に気づく。さらに、自分と他者との違いを考えさせられる。
この本は誰にでも開かれている。そして誰をも拒まない、そんな懐の深い一冊だと私は感じている。
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