<内容について>
アカデミック寄りです。詳細に先行研究を解説しています。
社会運動についての卒論を書く大学生には、本書を強くお薦めしたいと思います。
量的なものよりも質的なものを対象にしています。
社会についても考察しますが、主に個人の語りにフォーカスしています。
『社会運動と若者』の中には「社会問題の解決策は、これだ」などという短絡的な答えはありません。
「政治について語ることや社会運動をすることで、他人から引かれる、避けられる」と感じる若者や、
「周囲の若者が政治に無関心で、議論ができない」ということに違和感を抱く若者が、
どのような考えを巡らせ、自分たちの社会運動にどのような意味づけをするのか?
そこに『社会運動と若者』の醍醐味があります。
ちょっとネタバレしますが、富永京子先生は、
「社会運動をする若者は、自分たちの社会運動を日常の延長に位置づける」という結論を導出しました。
<表現と文体について>
富永京子先生の豊富な語彙力と文章のリズム感が私に伝わってきました。
洗練された格調高い文体で書かれており、あいまいな表現や大雑把な表現は排除されています。
しかしインタビューに答える若者たちの語りは、話し言葉のまま掲載されています。
富永京子先生は、若者の情緒的な語りや、あいまいな話し言葉や戸惑いの感情と丁寧に向き合います。
おそらく先生はハイコンテクストとローコンテクストを相互変換することが得意で、主観と客観の両方を大切にされる方なのでしょう。
読者が知っていることから読者が知らないことへと順に書かれているため、頭に入りやすいと私は感じました。
論文調の文体なので、先生は本文中で「私は・・・・と考える」「私は・・・・をした」という一人称をほとんど使いませんが、
しかし私は先生と同じ方向を見ながら共に調査研究しているような感覚になりました。
質的調査について学びたい方は、
『質的社会調査の方法 他者の合理性の理解社会学』 (有斐閣ストゥディア、2016年)を読んでください。
さて、2017年9月23日の毎日新聞に
「Theme 「関西の社会学者」著作続々 マイノリティーの現場を深く」
という記事が掲載されました。
関西の大学教員や、関西の大学出身の教員が、2016年くらいから人文学や社会学を盛り上げているようです。
特に立命館大学には勢いがあります。富永京子先生も、立命館大学に勤務されています。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
社会運動と若者:日常と出来事を往還する政治 単行本 – 2017/3/31
富永京子
(著)
誰もが個別に特殊な形でしか政治を体験できないのが現代の日本社会であり、彼らは自らが体験した政治を、自らの文法で語っているにすぎないのではないか。(中略)私たち年長者は自分たちが思うほど若くないし、若者たちは思った以上に年長者とは異なる体験を生きている。だからこそ、彼らの意味世界を汲み尽くす試みからまずは始める必要があるのではないか。(「はじめに」より)
- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社ナカニシヤ出版
- 発売日2017/3/31
- 寸法13.8 x 2.3 x 19.5 cm
- ISBN-10477951164X
- ISBN-13978-4779511646
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
富永 京子(とみなが きょうこ) 1986年生まれ。立命館大学産業社会学部准教授。シノドス国際社会動向研究所理事。
専攻は社会運動論・国際社会学。北海道大学経済学部卒。東京大学大学院人文社会研究科修士課程・博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015 年より現職。
著書に『社会運動のサブカルチャー化――G8 サミット抗議行動の経験分析』(せりか書房)、『奇妙なナショナリズムの時代――排外主義に抗して』(共著、岩波書店)、『サミット・プロテスト――グローバル化時代の社会運動』(共著、新泉社)。主な論文として、“Social Reproduction and the Limitations of Protest Camps:Openness and Exclusion of Social Movements in Japan", Social Movement Studies, Vol.16(3)など。
専攻は社会運動論・国際社会学。北海道大学経済学部卒。東京大学大学院人文社会研究科修士課程・博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015 年より現職。
著書に『社会運動のサブカルチャー化――G8 サミット抗議行動の経験分析』(せりか書房)、『奇妙なナショナリズムの時代――排外主義に抗して』(共著、岩波書店)、『サミット・プロテスト――グローバル化時代の社会運動』(共著、新泉社)。主な論文として、“Social Reproduction and the Limitations of Protest Camps:Openness and Exclusion of Social Movements in Japan", Social Movement Studies, Vol.16(3)など。
登録情報
- 出版社 : ナカニシヤ出版 (2017/3/31)
- 発売日 : 2017/3/31
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 280ページ
- ISBN-10 : 477951164X
- ISBN-13 : 978-4779511646
- 寸法 : 13.8 x 2.3 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 476,169位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 18,659位社会学 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

富永京子(とみなが きょうこ) 1986年生。立命館大学産業社会学部准教授。博士(社会学)。北海道大学経済学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科修士・博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て現職。共著として、『サミット・プロテスト』(新泉社、2016年)、『奇妙なナショナリズムの時代』(岩波書店、2015年)。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年5月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前著『社会運動のサブカルチャー化』で社会運動参加者のこだわりから社会運動を読み解くという観点を提示した著者が、その観点をもとに昨今注目を浴びた若者による社会運動を分析したのが本書である。
背景が異なる多様な人たちが自身を「若者」と語り、自身の主張を届けたい人たちを「若者」とラベル付して、運動が展開される。若者とは年齢によって決まるものではなく、運動のメッセージの送り手と受け手の関係で決まる。
「若者」による社会運動に込められた参加者たちの「思い」を丹念に読み解くことによって、マスコミが提示する社会運動像とは異なるものが見えてくる。そういった点で、本書は社会運動論の好著ではなかろうか。
背景が異なる多様な人たちが自身を「若者」と語り、自身の主張を届けたい人たちを「若者」とラベル付して、運動が展開される。若者とは年齢によって決まるものではなく、運動のメッセージの送り手と受け手の関係で決まる。
「若者」による社会運動に込められた参加者たちの「思い」を丹念に読み解くことによって、マスコミが提示する社会運動像とは異なるものが見えてくる。そういった点で、本書は社会運動論の好著ではなかろうか。
2020年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本では、社会運動を細かく説明してくれています。ここまで細かいことはあまり私には必要ありませんでしたが、社会運動や、組織論を勉強する方にはおすすめです。