私は幼い頃、東京・杉並の荻窪1丁目に住んでいました。母にくっついて近所の近松さんというお宅に伺うと、品のよい老婦人が庭を案内してくれたものです。当時のあの辺りの庭としては平均的な、それほど広い庭ではありませんでしたが、枝折り戸を開けると、迷路のような緑の世界が広がっていました。今、考えると、よく工夫された和風の庭だったようです。私の小さな庭好きは、この幼児体験が影響しているのだと思います。
『小住宅の庭』(吉田徳治著、保育社・カラーブックス。出版元品切れだが、amazonで入手可能)では、小住宅の玄関庭、路地庭、主庭、中庭が、カラー写真と平面図で紹介されています。
「小庭も満足にとれないような、狭い敷地に居を構えた場合の庭づくりを中心にして、私なりにまとめてみることにしました」。
玄関庭については、「門から玄関までの庭ですから、使いやすいということが第一ですが、それと同時に住まいの顔としての品位と重みが感ぜられるようにつくられねばなりません」。
「路地庭は裏庭や主庭への通路となる庭の部分のことで、園路がその中心になります。したがって、路地庭づくりはそれが細長い形をしているという特性を生かして、園路を中心として通景線を利用したり、明暗の手法を用いたり、リズム感を出すように工夫したりして、路地庭でないとできない独特の意匠に仕上げることです」。尾崎邸の庭には、「狭いながらも奥行きを深くみせる工夫がなされた路地庭」とのコメントが付されています。
片山邸の庭は、「灯ろうを中心に雑木と苔でつくられた野趣味のあふれる主庭」と説明されています。
「中庭の庭づくりは他の庭の部分に比べて、日照や通風が悪いから僅かな日照、通風でも、これを妨げないように工夫して進めることが大切です」。新谷邸の「縁先きに作られた中庭風の小庭」は、御簾垣、織部灯籠、筧手水鉢が何とも言えない風情を醸し出しています。また、藤井邸の茶庭風の中庭は、かわいらしい枝折り戸が庭を引き立てています。
狭い庭であっても、工夫次第で奥行きを感じさせる、風情のある庭にできますよ、と本書が語りかけてきます。

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小住宅の庭 (カラーブックス 351) ペーパーバック – 1976/3/1
吉田 徳治
(著)
- 本の長さ151ページ
- 言語日本語
- 出版社保育社
- 発売日1976/3/1
- ISBN-104586503513
- ISBN-13978-4586503513
登録情報
- 出版社 : 保育社 (1976/3/1)
- 発売日 : 1976/3/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 151ページ
- ISBN-10 : 4586503513
- ISBN-13 : 978-4586503513
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,132,458位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 202位カラーブックス
- - 130,915位暮らし・健康・子育て (本)
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