吉川英治文学賞を受賞した畢生の大作である。しかし阿刀田ファンでありながらトロイア戦争にはあまり興味がなかったため、正直、本書のことは避けていた。上梓からおよそ30年、本棚に眠っていた本書を夏の課題図書に挑むつもりで読んでみた。
とてもよかった。トロイア戦争のことだけでなく、その後のことも書かれているのが面白かった。時は紀元前13世紀。主人公はアフロディテの子と言われた英雄、アイネイアス。トロイアからギリシャへ、ギリシャからローマへ、彼がローマ建国の祖となるまでの成長物語が描かれている。
ヘクトル、パリス、アキレウスといったおなじみの英雄ももちろん出てくるが、僕はアイネイアスという人のことは知らなかったので、興味深かった。トロイア戦争といえばホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』が有名だが、ヴェルギリウスの『アエネイス』というのもあるようで、勉強になった。
あとがきを読むと、これだけの大長編を書き上げるのは大変だったんだな、と苦労がしのばれる。本書にはけっこう作者の創作も入っているようだが、そもそも歴史小説とはそういうものだし、むしろ戦国武将を書くよりはるかに創作は必要だったろう。作者によると「これは古代史を舞台とした、現代日本人アイネイアスの物語」なのだとか。
印象的だったのは、作中でたびたび出てくる「戦争が足りていない」という言葉だ。トロイア戦争から3000年以上の時を経ても、人類はいまだに戦争に飽きていない。そのことにしみじみとしてしまう。

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新トロイア物語 (講談社文庫 あ 4-22) 文庫 – 1997/12/1
阿刀田 高
(著)
現代に蘇る壮大な叙事詩
絶世の美女ヘレネと王子パリスが駆け落ちした。ヘレネを略奪した者は、求婚した者全員から報復を受ける。ユニークな「テュンダレオスの掟」が、古代ギリシアに予期せぬ大戦争を巻きおこした。名高い「トロイアの木馬」は真実だったのか。壮大な叙事詩の世界に挑んだ歴史小説。吉川英治文学賞受賞作。
絶世の美女ヘレネと王子パリスが駆け落ちした。ヘレネを略奪した者は、求婚した者全員から報復を受ける。ユニークな「テュンダレオスの掟」が、古代ギリシアに予期せぬ大戦争を巻きおこした。名高い「トロイアの木馬」は真実だったのか。壮大な叙事詩の世界に挑んだ歴史小説。吉川英治文学賞受賞作。
- 本の長さ697ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1997/12/1
- ISBN-104062636581
- ISBN-13978-4062636582
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商品の説明
著者について
1935年東京都生まれ。1979年『来訪者』で日本推理作家協会賞、同年『ナポレオン狂』で直木賞を受賞。主な著書に『新トロイア物語』(吉川英治文学賞受賞)、『獅子王アレクサンドロス』がある。1993年より’97年まで、日本推理作家協会理事長をつとめる。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1997/12/1)
- 発売日 : 1997/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 697ページ
- ISBN-10 : 4062636581
- ISBN-13 : 978-4062636582
- Amazon 売れ筋ランキング: - 353,762位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,702位歴史・時代小説 (本)
- - 5,394位講談社文庫
- - 8,649位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1935(昭和10)年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。
国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、1978年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。1979年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞、1995(平成7)年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞。
他に『花あらし』『シェイクスピアを楽しむために』『チェーホフを楽しむために』『佐保姫伝説』『プルタークの物語』など著書多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年8月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
阿刀田作品は短編が多いが、長編は読みごたえがある。師子王アレクサンドレスも同様に良かった。
2018年11月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ホメロスの「イリアス」「オデユッセイア」、ヴェルギリウスの「アエネイス」というギリシアの叙事詩をもとにした、壮大な歴史小説。
主人公だけでなく、脇役の従者も、個性豊かに描かれていて、躍動する。
叙事詩の翻訳もあるが、読み進むには、相当の辛抱が必要。
その点本書は、わくわくしながら読み進めることができる。
1994年発表、吉川栄治文学賞受賞作。
主人公は、トロイア国の王家の血をひく若者の、アイネイアス。
①トロイアの第二王子パリスは美男子だがやや享楽的。ギリシアのスパルテイ国に公用で赴いた時、スパルテイ王のメネラオスの妻、絶世の美女のヘレネと恋に落ち、略奪してしまう。悲劇はこの美談美女のカップルから起こる。
②これに怒ったのが、メネラオスの兄でミケーネ国王のアガメムノン。トロイア征伐を画策、ギリシアの大軍を率いて船でトロイアに向かう。
③いよいよトロイア城の攻防戦が開始される。激しい戦いで両軍とも武将が次々に戦死していく。トロイア側は、第一王子のヘクトル、戦争のきっかけを作った第二王子のパリスも戦死する。
④決着は、伝説では「トロイの木馬」だが、本書ではその説はとっていない。トロイア城は落城、王のプリアモスも没する。
⑤アイネイアスは丁度城外にいたため落城を逃れる。
⑥アイネイアスは、20人程度の手勢で、船に乗り西へ。ギリシア沖を通り、アフリカ大陸のカルタゴまで行きつく。ここから東へ、シチリア島を経由、イタリアのテルベ川の河口にたどり着く。そこで新トロイア国を建国する。
⑦これが古代ローマ帝国のもととなったとの言い伝え。
主人公だけでなく、脇役の従者も、個性豊かに描かれていて、躍動する。
叙事詩の翻訳もあるが、読み進むには、相当の辛抱が必要。
その点本書は、わくわくしながら読み進めることができる。
1994年発表、吉川栄治文学賞受賞作。
主人公は、トロイア国の王家の血をひく若者の、アイネイアス。
①トロイアの第二王子パリスは美男子だがやや享楽的。ギリシアのスパルテイ国に公用で赴いた時、スパルテイ王のメネラオスの妻、絶世の美女のヘレネと恋に落ち、略奪してしまう。悲劇はこの美談美女のカップルから起こる。
②これに怒ったのが、メネラオスの兄でミケーネ国王のアガメムノン。トロイア征伐を画策、ギリシアの大軍を率いて船でトロイアに向かう。
③いよいよトロイア城の攻防戦が開始される。激しい戦いで両軍とも武将が次々に戦死していく。トロイア側は、第一王子のヘクトル、戦争のきっかけを作った第二王子のパリスも戦死する。
④決着は、伝説では「トロイの木馬」だが、本書ではその説はとっていない。トロイア城は落城、王のプリアモスも没する。
⑤アイネイアスは丁度城外にいたため落城を逃れる。
⑥アイネイアスは、20人程度の手勢で、船に乗り西へ。ギリシア沖を通り、アフリカ大陸のカルタゴまで行きつく。ここから東へ、シチリア島を経由、イタリアのテルベ川の河口にたどり着く。そこで新トロイア国を建国する。
⑦これが古代ローマ帝国のもととなったとの言い伝え。
2022年11月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
良いとの評価で購入したがヤケが思いのほか強かった。評価を信用して購入するので、もっと誠意を持って販売して欲しい。
2018年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
良かったですよ。帯、付属の登場人物説明ペーパーもありまして文句無しです。
2019年8月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
分かりやすく読み易いです。トロイについて歴史的事実を知るのが目的だったので、その意味では少し違ったのかなと思います。
2014年2月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新トロイア物語は納期、商品とも満足できるものでした。有難うございました。
2013年2月4日に日本でレビュー済み
阿刀田さんの著書は、あまり沢山読んでいないのですが、面白くて勉強になるものが多いです。
特にこの「新トロイア物語」と「師子王アレクサンドロス」は素晴らしい。
気宇壮大なことでは、辻邦生の「背教者ユリアヌス」を思わせるものがあります。
北方謙三氏の「水滸伝」に通じるものもあります。
一つは抜群に面白いことです。
もう一つは超常現象的な要素が出てこないことです。
登場人物たちは古代人ですから神の存在を信じていますが、ホメロスの叙事詩のように神様が
登場人物として物語の流れを左右することはありません。
これを読んでから映画「トロイ」を楽しんでもいいでしょうし、
ホメロスの叙事詩に岩波文庫などで挑戦するのもいいでしょう。
特にこの「新トロイア物語」と「師子王アレクサンドロス」は素晴らしい。
気宇壮大なことでは、辻邦生の「背教者ユリアヌス」を思わせるものがあります。
北方謙三氏の「水滸伝」に通じるものもあります。
一つは抜群に面白いことです。
もう一つは超常現象的な要素が出てこないことです。
登場人物たちは古代人ですから神の存在を信じていますが、ホメロスの叙事詩のように神様が
登場人物として物語の流れを左右することはありません。
これを読んでから映画「トロイ」を楽しんでもいいでしょうし、
ホメロスの叙事詩に岩波文庫などで挑戦するのもいいでしょう。