モノやことがら、心情などを表わす言葉は一つだけとは限らない。私たちは、言葉を書く、言葉を連ねた文章を書く、文章を連ねて段落を書く、段落を連ねて一篇としてまとめる。そういう書くという行為から、考えるというところまでもって行く、というシラバスでの講義だ。その言葉を書くという経験が、「よりよく考えるための、つまり自分と向かい合う一つの経験の場」(p.1)なのだ、「頭と手」を使え、と著者は強調している。
本書の構成は、全9回の講義と最後に物書きとしての著者の所感を述べている。前半4回までは、言語表記法の法を中心に、美しいモノはなぜ美しいのかを知る講義で、後半は学生が課題に沿って紙に書いたものを著者が講評を加えつつ、「これはいい」から「不満はあるが」までとダメまでの評点で、それはなぜなのかを講義の中心に据えている。
興味を持ったのは、第8回の「砂糖が溶けるまでには誰もが待たなければならない」の節と「転んだ後の杖」の節である。「待つ」という時間は、言葉に対する外部の存在があるということで、「経験から言葉になるまでは時間がかかる、ということでもあるし、また、経験そのものの中に、短縮されないものがある」(p.192)という指摘をしている。また、「杖」は、効率的なものの考えで通すならば転ぶ前に持っていた方が良いに違いないが、「一回転んでなるほど、杖が必要だ、と納得して杖を手にする」、この無駄、他者の教訓を知りつつも、転んでその答えを手にする点に「意味の全量がある」(p.197)との記述と説明である。読者によって、体験は異なるだろうが、読んでいて一旦顔を上げる箇所ではなかろうか。
どこで入手したのか、雅子様の小学生の時の作文が載っている。絶賛。
目次は章節に相当。索引なし。参考文献あり(引用で読みたかった鶴見俊輔『文章心得帖』は絶版だった)、しおり紐なし。
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言語表現法講義 (岩波テキストブックス) 単行本 – 1996/10/8
加藤 典洋
(著)
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言葉を書くということは,どんな経験だろう.それは技法の問題ではない.よりよく考えるための,自分と向かい合うための経験の場だ.このことは,同時に批評の方法へとつながっていく.経験としての書くということの意味を,考えるということの1つの方法として位置付ける,これまでの文章教室とは異なったユニークな講義.
- ISBN-104000260030
- ISBN-13978-4000260039
- 出版社岩波書店
- 発売日1996/10/8
- 言語日本語
- 本の長さ224ページ
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
言葉を書くということは、技法の問題だけでなく、自分と向かい合うための経験の場でもある。批評を支えるその根拠について語った、これまでの文章教室とは全く違ったユニークな言語表現法講義。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1996/10/8)
- 発売日 : 1996/10/8
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 224ページ
- ISBN-10 : 4000260030
- ISBN-13 : 978-4000260039
- Amazon 売れ筋ランキング: - 70,317位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 151位論文作法・文章技術
- - 305位言語学 (本)
- - 1,305位その他の語学・教育関連書籍
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年12月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年8月11日に日本でレビュー済み
熱っぽいレビューが多いという事実は,本書が他に類を見ない出色の文章(≠論文)作法論であることの何よりの傍証だろう。かく言う評者も,恩師の熱烈な推薦に押され通読した次第。
自らの「書くことに備わる,かけがえのない生の経験」(140頁)をベースに,筆者が等身大で執筆している点に好感が持てる。本書からは「良い文章とはこういうものだ」といった上から目線を微塵も感じない。むしろ「書くことってこんな感じよ,実際」という穏やかな語りかけに満ちている。いずれも「他人への関係意識」(19頁)に開かれた謙虚な洞察だ。以下,抜粋。
①この本は素晴らしい,こういう感動というか,感想,これが,その本について何か書きたい,という動機になります(178頁)/驚かなくてはいけないんです,スゴイ,と(73頁)。
②何かを書こうとすると,どう自分に迫るか,が問題になります(207頁)/本当に話したいこと,考えなくてはいけないこと,自分の身に触れてくること,そういうことに触れる場所で考えないと,文章を書く行為というのも,机の上での水練,お勉強になるだけだ,ということです(9頁)。
③自分が書く限り,自分から自由にはなれません(212頁)/誰でも,自分がこう感じる,ああ感じた,というところからしか考え進めることはできません(133頁)。
④自分の経験から得た感想はxだが,このxが[…]Xと符号するのだ,というように,自分の持ち分をここに出してもらいたいものです(183頁)。
⑤白紙の前に立つと,自分って何にも考えていない,頼りにならない,ということにはじめて,気づくんです(103頁)。
⑥書けないところから書く。まあ,これは極端で命を縮めますからすすめませんが,少なくとも,書けない,これはチャンスだということです(116頁)/書けなくなること,そこから書くという仕事がはじまる(13頁)。
⑦誰もが待つしかない,そういう時間がある。[…]それは,あることが経験され,それが言葉になるまでは時間がかかる,ということでもあるし,また,経験そのもののなかに,短縮されないものがある,ということでもあります(192頁)。
⑧文章の力を一番のばすのは褒められることです。(52頁)/ほめられるということ,けなされるということが,書く手を育てる(255頁)。
⑨喧騒のなか,構わず呟いているので,えっ,えっ,と顔を寄せ,耳をすまさないと,という気になります(170頁)/僕たちはつい,言葉かずの少ない人のほうに耳をすませます(91頁)/あまり読者との距離感を意識しない,読者の目を忘れている,その広がり(167頁)。
⑩「まとめ」が,たとえそれまで個人の声を伝えようとしていても,それを台無しにしてしまう(74頁)/言わないことの方がずっと,言おうとしていることに近い場合は,言わないことが言ったことなんです(186頁)。
深い人間への洞察(「時に人間は非人間的になる必要があるもののようです」227頁)に裏付けられた筆者の口ぶりに,どうして「センスの押し付け」などを読み込むことができようか。「明晰な思考とその表現」を求める姿勢こそ,名文に滲む「呼吸」(61頁)を根こぎにする「閉鎖的」なものではないか。「A(小川)のよさをB(流れ込む大河)の言葉で語るな」(68頁)。Aには本書『言語表現法講義』を,Bには『 敗戦後論 』をそれぞれ代入したということだろう。本書の「言葉はどこで考えることと出会うか」を読めば,いわゆる「歴史主体論争」に与する必要性などなくなりそうなものなのだが。
苦言は一点だけ。本書全体の進行からはやや浮いた内容になっている,第9回講義のフィクション論は,別の機会に譲ってもよかったのではないか。
目次は次の通り。
頭と手:この授業について
課題とタイトル
他者と大河:推敲・書き出し・終わり
文と文の間
糸屑と再結晶:ヨソから来るもの
言葉はどこで考えることと出会うか
いまどきの文章
遅れの問題
フィクションの自由
方法の話
基本文献案内
山頂編の弁(あとがき)
自らの「書くことに備わる,かけがえのない生の経験」(140頁)をベースに,筆者が等身大で執筆している点に好感が持てる。本書からは「良い文章とはこういうものだ」といった上から目線を微塵も感じない。むしろ「書くことってこんな感じよ,実際」という穏やかな語りかけに満ちている。いずれも「他人への関係意識」(19頁)に開かれた謙虚な洞察だ。以下,抜粋。
①この本は素晴らしい,こういう感動というか,感想,これが,その本について何か書きたい,という動機になります(178頁)/驚かなくてはいけないんです,スゴイ,と(73頁)。
②何かを書こうとすると,どう自分に迫るか,が問題になります(207頁)/本当に話したいこと,考えなくてはいけないこと,自分の身に触れてくること,そういうことに触れる場所で考えないと,文章を書く行為というのも,机の上での水練,お勉強になるだけだ,ということです(9頁)。
③自分が書く限り,自分から自由にはなれません(212頁)/誰でも,自分がこう感じる,ああ感じた,というところからしか考え進めることはできません(133頁)。
④自分の経験から得た感想はxだが,このxが[…]Xと符号するのだ,というように,自分の持ち分をここに出してもらいたいものです(183頁)。
⑤白紙の前に立つと,自分って何にも考えていない,頼りにならない,ということにはじめて,気づくんです(103頁)。
⑥書けないところから書く。まあ,これは極端で命を縮めますからすすめませんが,少なくとも,書けない,これはチャンスだということです(116頁)/書けなくなること,そこから書くという仕事がはじまる(13頁)。
⑦誰もが待つしかない,そういう時間がある。[…]それは,あることが経験され,それが言葉になるまでは時間がかかる,ということでもあるし,また,経験そのもののなかに,短縮されないものがある,ということでもあります(192頁)。
⑧文章の力を一番のばすのは褒められることです。(52頁)/ほめられるということ,けなされるということが,書く手を育てる(255頁)。
⑨喧騒のなか,構わず呟いているので,えっ,えっ,と顔を寄せ,耳をすまさないと,という気になります(170頁)/僕たちはつい,言葉かずの少ない人のほうに耳をすませます(91頁)/あまり読者との距離感を意識しない,読者の目を忘れている,その広がり(167頁)。
⑩「まとめ」が,たとえそれまで個人の声を伝えようとしていても,それを台無しにしてしまう(74頁)/言わないことの方がずっと,言おうとしていることに近い場合は,言わないことが言ったことなんです(186頁)。
深い人間への洞察(「時に人間は非人間的になる必要があるもののようです」227頁)に裏付けられた筆者の口ぶりに,どうして「センスの押し付け」などを読み込むことができようか。「明晰な思考とその表現」を求める姿勢こそ,名文に滲む「呼吸」(61頁)を根こぎにする「閉鎖的」なものではないか。「A(小川)のよさをB(流れ込む大河)の言葉で語るな」(68頁)。Aには本書『言語表現法講義』を,Bには『 敗戦後論 』をそれぞれ代入したということだろう。本書の「言葉はどこで考えることと出会うか」を読めば,いわゆる「歴史主体論争」に与する必要性などなくなりそうなものなのだが。
苦言は一点だけ。本書全体の進行からはやや浮いた内容になっている,第9回講義のフィクション論は,別の機会に譲ってもよかったのではないか。
目次は次の通り。
頭と手:この授業について
課題とタイトル
他者と大河:推敲・書き出し・終わり
文と文の間
糸屑と再結晶:ヨソから来るもの
言葉はどこで考えることと出会うか
いまどきの文章
遅れの問題
フィクションの自由
方法の話
基本文献案内
山頂編の弁(あとがき)
2014年8月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
エッセーを書くための基本的要素がきちんと講義形式で示されている良い本です。作文からじぶんの書きたい文へ進化したい人は読んで損はしない。論文を効率よい文で表現したい人にも最適です。全ての大学生が読むべき本かもしれません。
2019年5月15日に日本でレビュー済み
文章表現のスランプに陥っているときたまたま本屋で手に取った本です。
小難しそうなタイトルに反しての読みやすさ、理解しやすさに、
ほんの数行を立ち読みしただけで即レジへ。
小賢しい(といってはあれですが)技法的なものを紹介したりする本はいくつも読みましたが、
こんな本は初めてです。
それらの本と本書がどうちがうのかと聞かれると説明が難しいですが
「言霊の宿し方」といえばちょっとは近いかな?
という意味でいえば本のタイトルはちょっと小難しそうで違和感がある。
ですが実はこのタイトルにも意味があって、なぜこんな名前になったのかは本書の中で説明がされてます。
それを読めば「考えて付けられてるんだなあ」と感心します。
私の出会えてよかった本ベスト3には入ります。あなたもぜひ。
小難しそうなタイトルに反しての読みやすさ、理解しやすさに、
ほんの数行を立ち読みしただけで即レジへ。
小賢しい(といってはあれですが)技法的なものを紹介したりする本はいくつも読みましたが、
こんな本は初めてです。
それらの本と本書がどうちがうのかと聞かれると説明が難しいですが
「言霊の宿し方」といえばちょっとは近いかな?
という意味でいえば本のタイトルはちょっと小難しそうで違和感がある。
ですが実はこのタイトルにも意味があって、なぜこんな名前になったのかは本書の中で説明がされてます。
それを読めば「考えて付けられてるんだなあ」と感心します。
私の出会えてよかった本ベスト3には入ります。あなたもぜひ。
2021年5月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
文意はよく理解できました。しかし言われることが奥の深い意味を持っているように感じるので、簡単に真似が出来るとは思えなかったです。
2009年10月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中身のぎっしり詰まった素敵な一冊です。
心の奥に手を入れられてギュッと掴まれる。これほど魂に響く文章の本はなかなかお目にかかりません。
著者が鶴見俊輔氏の言葉として紹介している文章に大切な要素は一に誠実さ、二に明晰さ、三に分かりやすさ。この本自体が最高の見本でしょう。
間違えたり、人を傷つけたりする恐れがあっても、まずは自分が感じたことから出発する大切さ。書くというのは知識を伝えるのではなく、考える過程であるということ。フィクションはなぜ必要なのか。書くという行為の核心を突いた問題に誠実に答えています。
著者は「感動そのものを書くことはできない」と言います。「できるのは、その感動のなかで何かを書くことだけだ」と。この本の読後感も伝達不可能ですが、いったんあきらめたところに書くことが出てくることがある、かもしれない。これもこの本にあるアドバイスです。
心の奥に手を入れられてギュッと掴まれる。これほど魂に響く文章の本はなかなかお目にかかりません。
著者が鶴見俊輔氏の言葉として紹介している文章に大切な要素は一に誠実さ、二に明晰さ、三に分かりやすさ。この本自体が最高の見本でしょう。
間違えたり、人を傷つけたりする恐れがあっても、まずは自分が感じたことから出発する大切さ。書くというのは知識を伝えるのではなく、考える過程であるということ。フィクションはなぜ必要なのか。書くという行為の核心を突いた問題に誠実に答えています。
著者は「感動そのものを書くことはできない」と言います。「できるのは、その感動のなかで何かを書くことだけだ」と。この本の読後感も伝達不可能ですが、いったんあきらめたところに書くことが出てくることがある、かもしれない。これもこの本にあるアドバイスです。
2010年2月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一行を書くということは、ひとつ決断することである。加藤典洋さんは、今あなたがたっている場所から書き始めることが大切であると、メッセージを送る。言語表現法講義、確かにそうだ。言葉で現在を表す方法を講じて、義とする。涙が出そうな箇所が一講義に1つ以上ある。書くということは、自分に思い切って決着をつけることなのだ。本書を読む前と読んだあとでは文章の書き方が一変することうけあい。
2019年11月3日に日本でレビュー済み
これを読まずに国語教師をやってきた自分は「無免許運転」だったのではないかと思う。
国語教師必読。
国語教師必読。