① 物理学(量子論)による化学現象の解説なので、面倒な化学構造式などは出て来ない。化学よりも物理が好きな人が、物理の知識を用いて化学現象を理解できるので楽しいだけである。この本で化学が好きになることはまずないと思う。
② 掲載されているエピソードには、歴史的に重要なものも多いのだが、科学史や産業史の本ではないので、厳密な考証による位置づけがなされている訳ではない。レベルの高い授業中の雑談と思えば良い。
③小生の感じる限りでは、 近年の蛍光X線分析装置の発達により、元素の検出が非常に容易になった。元素の話はもはや研究室の中だけのものではない。環境問題、製造現場の品質管理、営業現場のクレーム対応なども元素のレベルで話をするのが当たり前になってきている。不純物の混入ルート、汚染物質の発生元などを元素を元に調べるのだ。例えば、汚れや錆の元素を調べて、原因が海水か淡水か汗か判別する。その何れにも含まれるはずのない元素があれば、原材料~流通までの過程でその元素が存在する場面を推定すると言った手法だ。グリーン調達仕様書や有害物質不使用証明書にも元素記号が列記されることが多い。
身近になった元素記号の素行調査と思うと、滅法楽しい本である。女たらしもいれば、尻軽女もいる。元素記号を見たり書いたりする人の気分転換には最適である。
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スプーンと元素周期表 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 文庫 – 2015/10/6
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購入オプションとあわせ買い
紅茶に溶ける金属製スプーンがあるって本当? 空調ダクトを清潔に保つ素材は? ネオン管が光るのはなぜ? 戦闘機に最適な金属は? そもそも周期表の順番はなにで決まる? 万物を構成するたった100種類余りの元素がもたらす不思議な自然現象。その謎解きに奔走する古今東西の科学者たちや諸刃の剣となりうる科学技術の光と影など、元素周期表に凝縮された歴史を繙く比類なきポピュラー・サイエンス。解説/左巻健男
- 本の長さ496ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2015/10/6
- ISBN-104150504474
- ISBN-13978-4150504472
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出版社からのコメント
左巻健男氏(法政大学教授/《理科の探検》編集長)推薦!
この世界は究極的に何からできているのか?
その答えと、その先の世界を見るのに本書はお薦めだ。
この世界は究極的に何からできているのか?
その答えと、その先の世界を見るのに本書はお薦めだ。
著者について
ワシントン州在住のサイエンス・ライター、〈ニューヨーク・タイムズ・マガジン〉〈ニューヨーク・サイエンティスト〉などの各誌に寄稿する。初の著書である本書は〈ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー〉のベストセラーリストにも登場した。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2015/10/6)
- 発売日 : 2015/10/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 496ページ
- ISBN-10 : 4150504474
- ISBN-13 : 978-4150504472
- Amazon 売れ筋ランキング: - 466,359位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 106,874位文庫
- カスタマーレビュー:
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2017年5月23日に日本でレビュー済み
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2020年2月6日に日本でレビュー済み
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原題は”The Disappearing Spoon”。
一つの切り口を元素周期表、もう一つを近代科学諸分野の研究史や人物伝でまとめた所謂ポピュラーサイエンス読本です。
化学はもちろん核物理や宇宙物理、地質学に(古)生物学、もちろん医学に薬学までいろいろな分野を行き来しますが、全体を通じては周期表に並ぶ元素を少しずつ取り上げ、その一つ一つにまつわる発見や研究の顛末を紹介していくという構成です。なかには歴史的な事件や政治・経済上の出来事にまで影響を及ぼしたような逸話もあり、元素の名前なんて最初の十数個くらいしか空で思い出せないような自分でしたが結果的には飽きずに読み進めることができるほど話題の豊富な内容でした。
基礎化学としての知識や工学的な応用に関する内容は薄いので実地の知識としてはさほど役に立ちそうにはありませんが、関心をもつにはまず面白いサイドストーリーを知るというのも一つの勉強ではあります。自分は技術系の仕事をしながら化学や材料といった分野にはてんで関心がなかったのですが、仕事上の話題や技術系のニュースを読む中でもこの本で印象に残った元素の名前にたびたび気付くようになり、自然とその材料がどうして注目に値するのかについて興味を持てるようになっていました。直接的に役に立った訳ではないけれど、そういうときには少し得した気分になれます。こういう書籍が記憶に残るかどうかは、そういう体験をできたかどうかが大事ですね。
それと、自分が大学を卒業してからン十年経ち、その間にもさまざまな新しい発見があることにも驚かされます。改めて、新聞だけ読んでいてもテクノロジーの進歩にはついていけないものだと思い知る事しきりです。
一つの切り口を元素周期表、もう一つを近代科学諸分野の研究史や人物伝でまとめた所謂ポピュラーサイエンス読本です。
化学はもちろん核物理や宇宙物理、地質学に(古)生物学、もちろん医学に薬学までいろいろな分野を行き来しますが、全体を通じては周期表に並ぶ元素を少しずつ取り上げ、その一つ一つにまつわる発見や研究の顛末を紹介していくという構成です。なかには歴史的な事件や政治・経済上の出来事にまで影響を及ぼしたような逸話もあり、元素の名前なんて最初の十数個くらいしか空で思い出せないような自分でしたが結果的には飽きずに読み進めることができるほど話題の豊富な内容でした。
基礎化学としての知識や工学的な応用に関する内容は薄いので実地の知識としてはさほど役に立ちそうにはありませんが、関心をもつにはまず面白いサイドストーリーを知るというのも一つの勉強ではあります。自分は技術系の仕事をしながら化学や材料といった分野にはてんで関心がなかったのですが、仕事上の話題や技術系のニュースを読む中でもこの本で印象に残った元素の名前にたびたび気付くようになり、自然とその材料がどうして注目に値するのかについて興味を持てるようになっていました。直接的に役に立った訳ではないけれど、そういうときには少し得した気分になれます。こういう書籍が記憶に残るかどうかは、そういう体験をできたかどうかが大事ですね。
それと、自分が大学を卒業してからン十年経ち、その間にもさまざまな新しい発見があることにも驚かされます。改めて、新聞だけ読んでいてもテクノロジーの進歩にはついていけないものだと思い知る事しきりです。
2015年11月23日に日本でレビュー済み
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元素ごとに歴史や人物史が書いてあり、ノーベル賞を取ったり戦犯となった人物がたくさん出てきて、人類がどれほど元素に執着してきたか、そして元素からどれだけ恩恵と破壊を受けてきたかがわかる一冊。作者がアメリカ人の物理学者なので、歴史や戦争の見方がアメリカ的で配慮不足なところがあり、また名声欲にかられた人物が多く出てくるのは少し邪推しすぎのような気もする。中高生ではわかりずらい難しい表現や、英語の直訳的な(日本語に訳しきれていない)部分があるのは少し残念。。。 まぁいろいろあるけど、元素ごとに様々な歴史があることがわかり、そして今日でもまだまだ研究段階のものが多いということもわかり、物理・科学がますます好きになったし、楽しくなった。 わかりやすいマンガにすれば高校生とかにも受けると思う→物理・科学好きを増やせると思う。今、小学生の娘が高校になるころまでに、誰か本書のマンガ本を作ってください!!! 少なくともマンガ10冊分くらいはある。
2016年7月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
各元素の化学的特徴、その元素の発見者や発見方法などを、周期表内の位置関係も交えつつ紹介する。陽子・電子・中性子からなる原子の基本構造、原子間における電子のやり取りが引き起こす化学反応、放射能や核分裂によりある元素が別元素に変わる仕組み、陽子と中性子を束ねる「強い力」の及ぶ範囲、番号の大きい元素が不安定で壊れやすい事実など、原子構造の基本的な学習(復習)ができる点がよい。銅の強い殺菌性を取り上げ、硬貨などの人の手によく触れる金属に多用されている理由の1つとして紹介している点などは、身近な話題としてなるほどと感心する。また、明治時代に小川正孝が発見「しかけた」幻の43番元素を当時「ニッポニウム」と命名した逸話などは、つい最近日本人による新元素「ニホニウム」の発見ともタイミングのいい話題だ。
章によっては話題があっちこっちに飛ぶためやや読みにくい箇所もあるが、中学・高校の物理の復習を兼ね、物理・化学関連の読み物として、基礎知識の整理に役立つ1冊である。
章によっては話題があっちこっちに飛ぶためやや読みにくい箇所もあるが、中学・高校の物理の復習を兼ね、物理・化学関連の読み物として、基礎知識の整理に役立つ1冊である。
2013年4月13日に日本でレビュー済み
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化学についてうそは書いていないし、すこしヨーロッパ文化と科学との関係がうかがえたり、文筆家の書いているものなので文章がなかなか面白い。化学を専門としない理系の1年生などで、これを半年読むことにして、教科書にしたらよいと思う。
2011年6月29日に日本でレビュー済み
科学が好きという人に出くわすことは、少なからずある。しかし、一口に科学と言っても、その範囲は広い。学校で習った範疇だけでも、物理、化学、生物、地学とあるし、書籍のジャンルにおいても、量子力学、宇宙学、地層学、進化論、遺伝子、認知科学と実にさまざまだ。
その中でも、化学が好きという人には、めったにお目にかかることがない。自分自身のの経験を振り返っても、「水平リーベ僕の船・・・」に始める元素周期表や、モル計算には、壮大さやロマンを感じることはなかった。
本書は、そんな化学の暗いイメージを払拭してくれる有り難い一冊。元素周期表をインデックス代わりに、人類史を読み解くという試みなのだ。化学がいかに社会に密接に関係したサイエンスであるかを、エキサイティングに紹介している。
◆本書の目次
第1部 オリエンテーション − 行ごとに、列ごとに
第1章 位置こそさだめ
第2章 双子もどきと一族の厄介者 − 元素の系統学
第3章 周期表のガラパゴス諸島
第二部 原子をつくる、原子を壊す
第4章 原子はどこでつかれられるのか − 「私たちはみんな星くず」
第5章 戦時の元素
第6章 表の仕上げ・・・・・・と爆発
第7章 表の拡張、冷戦の拡大
第三部 臭気をもって現れる混乱 − 複雑性の出現
第8章 物理学から生物学
第9章 毒の回廊 − 「イタイ、イタイ」
第10章 元素を二種類服んで、しばらく様子を見ましょう
第11章 元素のだまし手口
第四部 元素に見る人の性
第12章 政治と元素
第13章 貨幣と元素
第14章 芸術と元素
第五部 元素の科学、今日とこれから
第16章 零下はるかでの化学
第17章 究極の球体 − 泡の科学
第18章 あきれる精度を持つ道具
第19章 周期表を重ねる(延ばす)
科学系の読み物で、読んでいて面白いと思うのは、特定分野に閉じたものというより、突き詰めていったその先が、他の分野と密接に交わりあうようなものであることが多い。例えば、進化論が宗教と密接に結びつくような話、地質学の中に太古の歴史を見出す話、あるいはロボット工学の中で、人の意識や知性と結び付くような話も、その類であるだろう。
本書の内容も、そんな例にもれない。「周期表は人類学の奇跡」とまで言う著者の手によって、周期表の中に、詐欺、爆弾、通貨、錬金術、政治、歴史、毒、犯罪、愛までが見出だされている。
そもそも、この元素周期表、設立に至るまでの最大の立役者は、本書の表紙も飾っているメンデレーエフという人物である。メンデレーエフは生涯を通して、元素の感触や臭い、その反応についての深い知識を得ていた。また、表の改訂を執拗に繰り返しており、常に自室で化学版ソリティアにふけっていたという。そして、何より重要だったのは、表でまだ元素が見つかっていないところを空欄とし、新しい元素の発見を予言したということにある。
元素周期表の配置には、もちろん意味がある。各元素は、概ね左隣の元素より電子を一個余計に持っているほか、縦列は似たような系統のものが並んでいる。一番右側の列をなす元素は、希ガス。その隣には、ハロゲンと総称される反応性の高い気体。一番左端は、最も過激な元素アルカリ金属と言った感じである。ちなみに、右半分の中央下あたり、ここが毒の回廊の中心部だ。カドミウム、その一つ下には水銀、そのまた右にあるタリウム、鉛、ポロニウム。周期表は、数々の高揚の瞬間を演出するばかりではなく、人間の最も醜く残虐な本能にも訴えてきたのである。
強国の蹂躙が科学をもゆがめうることは、二十世紀には最高の史実が揃っている。第一次世界大戦が始まると、ドイツ軍はユダヤ人のハーバーを毒ガス戦部門に起用した。臭素や塩素を使った研究をしていたハーバーは、ツィクロンAを開発し、効率の良い第二世代ガスを開発した。後にナチスが実験を握ると、ユダヤ人のハーバーは追放されるのだが、彼の研究成果は、何百万というハーバーの同胞に使用されてしまうのである。
また、昨今すっかりイメージの悪くなった放射性物質の話題にもことかかない。ウランという最も重い天然元素に関する研究でノーベル賞を受賞したキュリー夫人は、ウラン精錬する実験をしたのち、残った廃物からウランより圧倒的に強い放射能を持つ未知の元素を発見する。ポーランド人であった彼女は、当時存在しなかった祖国の名にちなみポロニウムと名付けたのである。しかし、彼女の思惑には沿わず、世間の注目は彼女の下世話な私生活ネタにばかり注目が集まってしまったそうではあるが。
本書を読むと、化学は覚えるものではなく、理解するものだということがよくわかる。そして化学と他のジャンルが交錯するポイントでは、常に予想もつかない化学反応が起こっている。少なくとも元素を取り扱う領域のステークスホルダーは、すべからく先人たちの教訓を踏まえ、畏敬の念を持って、判断にあたるべきであろう。
その中でも、化学が好きという人には、めったにお目にかかることがない。自分自身のの経験を振り返っても、「水平リーベ僕の船・・・」に始める元素周期表や、モル計算には、壮大さやロマンを感じることはなかった。
本書は、そんな化学の暗いイメージを払拭してくれる有り難い一冊。元素周期表をインデックス代わりに、人類史を読み解くという試みなのだ。化学がいかに社会に密接に関係したサイエンスであるかを、エキサイティングに紹介している。
◆本書の目次
第1部 オリエンテーション − 行ごとに、列ごとに
第1章 位置こそさだめ
第2章 双子もどきと一族の厄介者 − 元素の系統学
第3章 周期表のガラパゴス諸島
第二部 原子をつくる、原子を壊す
第4章 原子はどこでつかれられるのか − 「私たちはみんな星くず」
第5章 戦時の元素
第6章 表の仕上げ・・・・・・と爆発
第7章 表の拡張、冷戦の拡大
第三部 臭気をもって現れる混乱 − 複雑性の出現
第8章 物理学から生物学
第9章 毒の回廊 − 「イタイ、イタイ」
第10章 元素を二種類服んで、しばらく様子を見ましょう
第11章 元素のだまし手口
第四部 元素に見る人の性
第12章 政治と元素
第13章 貨幣と元素
第14章 芸術と元素
第五部 元素の科学、今日とこれから
第16章 零下はるかでの化学
第17章 究極の球体 − 泡の科学
第18章 あきれる精度を持つ道具
第19章 周期表を重ねる(延ばす)
科学系の読み物で、読んでいて面白いと思うのは、特定分野に閉じたものというより、突き詰めていったその先が、他の分野と密接に交わりあうようなものであることが多い。例えば、進化論が宗教と密接に結びつくような話、地質学の中に太古の歴史を見出す話、あるいはロボット工学の中で、人の意識や知性と結び付くような話も、その類であるだろう。
本書の内容も、そんな例にもれない。「周期表は人類学の奇跡」とまで言う著者の手によって、周期表の中に、詐欺、爆弾、通貨、錬金術、政治、歴史、毒、犯罪、愛までが見出だされている。
そもそも、この元素周期表、設立に至るまでの最大の立役者は、本書の表紙も飾っているメンデレーエフという人物である。メンデレーエフは生涯を通して、元素の感触や臭い、その反応についての深い知識を得ていた。また、表の改訂を執拗に繰り返しており、常に自室で化学版ソリティアにふけっていたという。そして、何より重要だったのは、表でまだ元素が見つかっていないところを空欄とし、新しい元素の発見を予言したということにある。
元素周期表の配置には、もちろん意味がある。各元素は、概ね左隣の元素より電子を一個余計に持っているほか、縦列は似たような系統のものが並んでいる。一番右側の列をなす元素は、希ガス。その隣には、ハロゲンと総称される反応性の高い気体。一番左端は、最も過激な元素アルカリ金属と言った感じである。ちなみに、右半分の中央下あたり、ここが毒の回廊の中心部だ。カドミウム、その一つ下には水銀、そのまた右にあるタリウム、鉛、ポロニウム。周期表は、数々の高揚の瞬間を演出するばかりではなく、人間の最も醜く残虐な本能にも訴えてきたのである。
強国の蹂躙が科学をもゆがめうることは、二十世紀には最高の史実が揃っている。第一次世界大戦が始まると、ドイツ軍はユダヤ人のハーバーを毒ガス戦部門に起用した。臭素や塩素を使った研究をしていたハーバーは、ツィクロンAを開発し、効率の良い第二世代ガスを開発した。後にナチスが実験を握ると、ユダヤ人のハーバーは追放されるのだが、彼の研究成果は、何百万というハーバーの同胞に使用されてしまうのである。
また、昨今すっかりイメージの悪くなった放射性物質の話題にもことかかない。ウランという最も重い天然元素に関する研究でノーベル賞を受賞したキュリー夫人は、ウラン精錬する実験をしたのち、残った廃物からウランより圧倒的に強い放射能を持つ未知の元素を発見する。ポーランド人であった彼女は、当時存在しなかった祖国の名にちなみポロニウムと名付けたのである。しかし、彼女の思惑には沿わず、世間の注目は彼女の下世話な私生活ネタにばかり注目が集まってしまったそうではあるが。
本書を読むと、化学は覚えるものではなく、理解するものだということがよくわかる。そして化学と他のジャンルが交錯するポイントでは、常に予想もつかない化学反応が起こっている。少なくとも元素を取り扱う領域のステークスホルダーは、すべからく先人たちの教訓を踏まえ、畏敬の念を持って、判断にあたるべきであろう。
2016年11月6日に日本でレビュー済み
元素周期表というと、無味乾燥で丸暗記するしかないという、つまらないイメージを持っている人も多いだろう。
だが、一つ一つの元素の意味、縦横のつながりなどが分かれば、周期表も全く違った姿で見えてくる。
本書は、各元素にまつわる様々なエピソードを紹介しながら、それぞれの元素の性質を垣間見せてくれる。
例えば炭素はたんぱく質を作り、ひいては生命の体を作るのに欠かせないものである。
地球外生命体の構成要素としてしばしばあげられる周期表で一つ下のケイ素とは何が同じで何が違うのか(あるいはケイ素の生命はなぜ難しそうなのか)、。
そしてケイ素は半導体で今や大活躍だが、その一つ下のゲルマニウムもかつて候補になったことがある。どのように歴史の舞台にゲルマニウムが出て、そして消えたのかを、トランジスタの歴史をなぞりながら見ていく。
第一次大戦では、窒素固定法を開発したハーバーが、臭素(これはちっとも実用にならなかった)・塩素(これは凶悪だった)の毒ガス開発にいそしむ一方で、攻撃砲の材料のモリブデンの価値が沸騰し、第二次大戦ではタングステンが渇望された、等々我々の知る歴史の裏側に元素の視点から光を当ててくれたりする。
重い方の元素は生成の物語が出てくる一方で、生物との関係(DNAにおけるリン)やら19世紀後半にはアルミニウムが最も高価な金属だった(のでワシントン記念塔のてっぺんはアルミニウムがかぶせられている)話など、面白い話が尽きない。
最後に周期表のはるか先にあるはずの超重核の安定の島や超元素(アルミニウム原子13個で臭素と区別がつかない振る舞いをする)の話で本書は締めくくられている。
元素の話といっても、各元素ごとに一節ずつ割くのではなく、あくまでとっかかり程度に複数の元素がまとめて触れられているが、その方がテンポよく読めるのでこの方法は正解だったように思う。
本書はさまざまな元素をその歴史から眺めてくれる本になっている。
純粋な元素と周期表の性質だけを知るには 元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書) がまとまっていてかつ読みやすい。
本書と併せて読むことで、周期表への理解と親しみがさらに増すだろう。
だが、一つ一つの元素の意味、縦横のつながりなどが分かれば、周期表も全く違った姿で見えてくる。
本書は、各元素にまつわる様々なエピソードを紹介しながら、それぞれの元素の性質を垣間見せてくれる。
例えば炭素はたんぱく質を作り、ひいては生命の体を作るのに欠かせないものである。
地球外生命体の構成要素としてしばしばあげられる周期表で一つ下のケイ素とは何が同じで何が違うのか(あるいはケイ素の生命はなぜ難しそうなのか)、。
そしてケイ素は半導体で今や大活躍だが、その一つ下のゲルマニウムもかつて候補になったことがある。どのように歴史の舞台にゲルマニウムが出て、そして消えたのかを、トランジスタの歴史をなぞりながら見ていく。
第一次大戦では、窒素固定法を開発したハーバーが、臭素(これはちっとも実用にならなかった)・塩素(これは凶悪だった)の毒ガス開発にいそしむ一方で、攻撃砲の材料のモリブデンの価値が沸騰し、第二次大戦ではタングステンが渇望された、等々我々の知る歴史の裏側に元素の視点から光を当ててくれたりする。
重い方の元素は生成の物語が出てくる一方で、生物との関係(DNAにおけるリン)やら19世紀後半にはアルミニウムが最も高価な金属だった(のでワシントン記念塔のてっぺんはアルミニウムがかぶせられている)話など、面白い話が尽きない。
最後に周期表のはるか先にあるはずの超重核の安定の島や超元素(アルミニウム原子13個で臭素と区別がつかない振る舞いをする)の話で本書は締めくくられている。
元素の話といっても、各元素ごとに一節ずつ割くのではなく、あくまでとっかかり程度に複数の元素がまとめて触れられているが、その方がテンポよく読めるのでこの方法は正解だったように思う。
本書はさまざまな元素をその歴史から眺めてくれる本になっている。
純粋な元素と周期表の性質だけを知るには 元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書) がまとまっていてかつ読みやすい。
本書と併せて読むことで、周期表への理解と親しみがさらに増すだろう。