デビュー10周年となった世武裕子さんの作品。といっても、ベスト盤的なもので全くなくて、むしろこれまでの経験をふり絞って斬新な曲を生み出してくれた感じ。その姿勢は、「完結」に際して出したアルバム「誕生」でも新たに打ち込みに挑戦して素晴らしい曲を聴かせてくれたチャットモンチーと重なります。
これまで映画やドラマの劇伴と自分のソロプロジェクトだけでなく、チャットモンチー、西野カナ、ミスチルなどのサポートで本家のファンを驚かせてきた世武さんですが、このアルバムはソロ路線を進めたものです。この路線が好きな方はもちろん、そうでない方も、とにかく1曲ずつがとんでもなく濃密なので、絶対買いです。
特に好きなのは電子音を駆使したダークな曲調の1、2曲目。劇伴方面のファンを驚かせるかもしれませんが、ソロプロジェクトを追って何度かライブにも足を運んだ者にとっては「ぶちかましてくれました」感が強くて、聴いていて思わず笑みがこぼれます。また、5、6曲目では一転ピアノと軽やかなボーカルで、世武さんの以前の曲(「Hello Hello」など)や劇伴のファンにも親しみやすくなっています。7曲目のJohn Doeはsébuhiroko名義での前作「L/GB」に入っている同曲のアレンジですが、速くてダークなピアノでグリグリ押してくる曲に変身してして、ライブではフロアが大揺れすること間違いなし。映画「生きているだけで、愛」の主題歌となった9曲目は、静かなピアノから始まって徐々に音が加わり、世武さんの優しくてどこか物憂げなボーカルに引き込まれます。
などと書いてみましたが、私の拙い言葉ではとても書き表せないのでぜひ聴いていただきたい。