他の本を読んでいる時に、ちょっと息抜きのつもりで前から買っていたこの本を二、三ページの積りで読み始めたら、面白くてあっという間に読み終えてしまった。おかげで夜更かしをしてしまった。
元々この本に興味を持った理由は、歌舞伎を支えるお囃子を演ずる人達のことを知りたいと思っていたことからである。そのような時に、この本を書評で知って、是非読もうと思っていたのだった。
内容は、江戸時代から続く歌舞伎囃子の家柄の第十一世・田中傳左衛門の三女として生まれた、田中佐太郎の話である。跡継ぎが居なかったために、小鼓、大鼓、太鼓の技を女ながらに継いで、自分は子供(後の傳左衛門十三世)への橋渡しの役目をした。その後、本人は襲名披露をすることはなかったが、息子が十三世を名乗るに伴い、十二世を授与されたのだという。
さらに瞠目すべきは、三人の子供をそれぞれ、長男は嫁ぎ先の能楽師の家元として育て、次男と三男は実家の歌舞伎囃子を継がせる、という人間形成にも大きな能力を発揮したことである。そして母として妻としての役割も立派に果たしている。
この本は佐太郎への聞き書きからなっているが、聞き書き者・氷川まりこ氏の文章には心地よさを感じた。その一方で、伝統と格式を重んじ、日々の鍛錬に精を出す古典芸能の伝承者としての厳しい生き様を描写する文章と挿入された写真が、凛とした佇まいの書籍を形作っている。読むものをして思わず背を正すような感を抱いた。
その聞き書き者の表現に次のような言葉があり、新鮮な思いをした。「伝統芸能は定められた枠の中で行うものと思われがちだ。だが、工夫をすることで、その枠はいくらでも広げることができ、豊かな色をかもし出せるのだということを、佐太郎は柿本の稽古から学んでいった。」
黒御簾の中で歌舞伎役者を引き立てているお囃子はどんな人達なのだろうと思いながら歌舞伎を見ていたが、これでまた楽しみが増えた。そして、伝統を守る家風がいつまでも続かんことを祈りながら、良い本を読んだものだ(言葉を変えて言えば、良い伝統芸能者を知ることができたものだ)と感慨深く読み終えた。
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鼓に生きる 歌舞伎囃子方田中佐太郎 単行本(ソフトカバー) – 2018/10/18
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〈「あの人がいなかったら今の歌舞伎囃子はない」──。伝統を守り、次代へ繋いだ一人の女性の闘いの日々〉
〈女人禁制の歌舞伎の世界でたくましく生きた一人の女〉
歌舞伎の上演に欠くことができない音楽「歌舞伎囃子」。男子の後継者に恵まれなかった田中流の家元・11世田中傳左衛門(人間国宝)は江戸時代から続く家の芸を愛娘・佐太郎に託す決断をします。父の厳しい教えを受けながら女人禁制の歌舞伎の世界で歯を食いしばって生き、三人の息子(亀井広忠、13世田中傳左衛門、田中傳次郎)を一流の演奏者として鍛え上げた佐太郎。
古稀を迎えた今、その半生を振り返ります。2017年月刊『なごみ』の連載を大幅に加筆。夫で能楽囃子葛野流大鼓方の亀井忠雄(人間国宝)、息子たちのインタビューなども交えて単行本化。
〈女人禁制の歌舞伎の世界でたくましく生きた一人の女〉
歌舞伎の上演に欠くことができない音楽「歌舞伎囃子」。男子の後継者に恵まれなかった田中流の家元・11世田中傳左衛門(人間国宝)は江戸時代から続く家の芸を愛娘・佐太郎に託す決断をします。父の厳しい教えを受けながら女人禁制の歌舞伎の世界で歯を食いしばって生き、三人の息子(亀井広忠、13世田中傳左衛門、田中傳次郎)を一流の演奏者として鍛え上げた佐太郎。
古稀を迎えた今、その半生を振り返ります。2017年月刊『なごみ』の連載を大幅に加筆。夫で能楽囃子葛野流大鼓方の亀井忠雄(人間国宝)、息子たちのインタビューなども交えて単行本化。
- 本の長さ187ページ
- 言語日本語
- 出版社淡交社
- 発売日2018/10/18
- ISBN-104473042758
- ISBN-13978-4473042750
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商品の説明
著者について
歌舞伎囃子方
伝統文化研究家
伝統文化研究家
登録情報
- 出版社 : 淡交社 (2018/10/18)
- 発売日 : 2018/10/18
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 187ページ
- ISBN-10 : 4473042758
- ISBN-13 : 978-4473042750
- Amazon 売れ筋ランキング: - 479,691位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 240位歌舞伎・文楽・能
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年3月17日に日本でレビュー済み
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2019年12月4日に日本でレビュー済み
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大変参考になりました。
2018年10月31日に日本でレビュー済み
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家業を伝える方に、男女は問われない。 歌舞伎の地方として舞台面に出るには、男性であるべきという不文律を崩すことなく、後継者の育成と家業の継続という道を歩んでいらっしゃる方。 覚悟と努力を継続なさる方として、この方の右に出る方はいらっしゃらないと思う。 潔い生き方を確認する、手引書といえる。