1952(昭和27)年4月26日、海上保安庁に海上警備隊が設置された。のちの海上自衛隊の前身となる組織である。その背景には「海軍再建」を悲願とする吉田英三元海軍大佐らの極秘研究と秘密工作が隠されていたのであった。
本作は、2002(平成14)年8月14日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「海上自衛隊はこうして生まれた〜全容を明かす機密文書〜」をDVD化したものであり、海上幕僚監部に保管された「Y文書」を手がかりに海上自衛隊の創設を追ったものである。
特に陸上自衛隊が旧帝国陸軍との決別を図ったのに対し、海上自衛隊は海上自衛隊創設50周年式典で石川亨海上幕僚長が「我々は今後とも海軍のよき伝統を日本の財産として堂々と継承して参ります」と述べているとおり、旧帝国海軍の「古きよき伝統の継承者」という位置づけにある。
しかし、帝国海軍77年の伝統を継承するということは、その負の歴史をも背負うということである。これからの海上自衛隊は一体どこへ向かうのであろうか。そうしたことを考える上でも、その創設までの経緯を知ることは重要である。少し難解な箇所もあるが、戦後史の舞台裏を是非とも垣間見ていただきたいと思う。