①蜷川実花の展覧会を観て、本書を購入した。すべては風景と人物の写真である。
②『複製技術時代の芸術作品』でベンヤミンが提示したメディウム（媒体）としての芸術作品が解き放つ〈アウラ（オーラ）〉（輝き）を蜷川実花の被写体は現出する。
③これが「現実」と「虚構」の間にあるものである。被写体は〈アウラ〉を伝える〈メディア〉なのである。辺り一面に咲き乱れる桜の花も、そこにまばゆいばかりの閃光が差し込まれると、写真は桜の花の美しさを伝えるメディアから、〈閃光〉そのものを前景に写し出し、桜の花を後景に退かせる〈メデイア〉へと変容し、〈閃光〉が解き放つ〈アウラ〉によって、満開の桜花はその意味を失う。この〈アウラ〉こそ、「虚構」と「現実」の間にあるものである。
④蜷川実花の作品をメディア論から読み解くと面白い。タレントを被写体にした作品も数多い。例えば、乃木坂46の白石麻衣の作品は、白石麻衣の美しさを表現しているのは、本人のクールな表情ではなく、頭に飾り付けられた一面の「花飾り」であり、そこから伸び拡がるピンクの「レース」である。児の写真は、白石の「表情」→頭の「花飾り」→ピンクの「レース」へと美しさが変容し、顔からモノへと美を変容させることによって、〈アウラ〉を伝えている。
⑤一見、カッコ好さを写したかに見えるタレントの写真も、メディア論として見れば、多様・多彩な表現を媒介するメディアになりうるのだ。
実に面白い写真集である。
お勧めの一冊だ。
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