「ラ・ナシオン」紙によると「アルゼンチンのホラーのプリンセスとしての彼女の地位を固めた」(232頁)本なのだそうです。
「帯」の言葉に、驚きました。
「これらの物語は、読む者を不安にして、動揺させて、平穏をかき乱す。読みなさい!」
ケリー・リンクの推薦文です。
「訳者あとがき」に紹介されている<デイヴ・エガーズの言葉>にも、驚きました。
この本の著者の「マリアーナ・エンリケスは、読まれることを要求する魅惑的な作家だ。 (中略) 『汚い子』は、この何年もの間に読んだ最も忘れられない、すぐれたストーリーの一つだ」(233頁)
表題作の短篇「わたしたちが火の中で失くしたもの」が一番こころに残りました。簡潔にして力強い作品でした。
「国中で、男たちは自分の恋人や妻、愛人を燃やしていた」(220頁)
そんな国アルゼンチンで、女たちが、怒りの中から、火の中から「得たもの」について考えさせられました。
この本の「帯」には、「『燃える女たち』の反乱が始まる」
アルゼンチンの男社会に対する、燃える女たちの反乱。
「地下鉄の女の子はびっくりさせるような、容赦のないことを言った。
『男は、このままだったら、慣れなくちゃいけなくなる。女の大半は、死ななかったら、あたしみたいになる。
いいんじゃない? 一つの新しい美で』」(221頁)
あたし、地下鉄の女の子の「顔と腕は、広くて深い、完全な火傷(やけど)でまったく形が変わっていた。(中略)その口に唇はなく、鼻はひどくいいかげんに再建されていた。目は片方しか残っていず、もう一つの目は皮膚のくぼみで、顔全体、頭、首は、蜘蛛(くも)の巣が張りめぐらされたような栗色の仮面だった」(215頁)
ひどい火傷のこんな顔が「一つの新しい美」であるはずがありません。
「でも、シルビニータ、ああ、シルビニータが決心したら、美しい火傷女に、本当の火の花になるでしょうね」(229頁)
この文で短篇は終わります。
「美しい」とか醜いとかの、「本当の」とか嘘のとかの基準、尺度の変化について、著者はどのように考えているのか、もっと彼女の作品を読んでみたくなりました。
<備考>
冒頭作の短篇「汚い子」について:
「家は美しくて快適だった」(6頁)
「コンスティトゥシオンは甘くはないけど、美しい」(7頁)
「サリータは若い異性装者で、ソリス通りで街娼をしてる、そしてとっても美しい」(11頁)
「古い、美しい、大きな浴槽があるけど」(22頁)
「わたしの家族の家で、美しい家なんです」(29頁)
汚い、とか、美しい、とか、何なのか? 分からなくなりました。著者の女性らしい優しい心が読者に響く小説です。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
新品:
¥2,915¥2,915 税込
ポイント: 175pt
(6%)
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
新品:
¥2,915¥2,915 税込
ポイント: 175pt
(6%)
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
中古品: ¥2,400
中古品:
¥2,400

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
わたしたちが火の中で失くしたもの 単行本 – 2018/8/23
マリアーナ・エンリケス
(著),
安藤哲行
(翻訳)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥2,915","priceAmount":2915.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2,915","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"H44hlh1rCbar%2BSH5BzxnrD5EFf1MYuQgsVBISwd9DK3mD%2BXVX%2FeGCZXWddctRx8iPVYFUi4PjykfC7E%2BWMZxkzfQmM2bwZox2ij2AvTPmyFhPxcGjZ2yo0PmINILqwqHuadliJi0Nn4%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥2,400","priceAmount":2400.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2,400","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"H44hlh1rCbar%2BSH5BzxnrD5EFf1MYuQgenfgngEP%2BIuelyj8jjK1NZBzjxzhRdAQ2umLouZvrn8XVkDZZVzwGpeq3xphxRXRvbTAcRRAqRzfzOBLABwHn1YqWBkFy2HaMwRexpQn1RS1bm3B1vA4JNnDaUJgMZnl8jzJBHoaufDVb2BxIOLZjA%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
人間の無意識を見事にえぐり出す悪夢のような12の短篇集。世界20カ国以上で翻訳されている「ホラーのプリンセス」本邦初訳。
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2018/8/23
- 寸法14.2 x 2.4 x 19.8 cm
- ISBN-104309207480
- ISBN-13978-4309207483
よく一緒に購入されている商品

対象商品: わたしたちが火の中で失くしたもの
¥2,915¥2,915
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り5点(入荷予定あり)
¥1,100¥1,100
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り12点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
マリアーナ・エンリケス
1973年アルゼンチン生まれ。95年『降りるのは最悪』で作家デビュー。以後、コンスタントに作品を発表し、2016年本作を上梓。「ホラーのプリンセス」として注目を集め、世界20カ国以上で翻訳されている。
1973年アルゼンチン生まれ。95年『降りるのは最悪』で作家デビュー。以後、コンスタントに作品を発表し、2016年本作を上梓。「ホラーのプリンセス」として注目を集め、世界20カ国以上で翻訳されている。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2018/8/23)
- 発売日 : 2018/8/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 248ページ
- ISBN-10 : 4309207480
- ISBN-13 : 978-4309207483
- 寸法 : 14.2 x 2.4 x 19.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 216,506位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 82位スペイン文学
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.7つ
5つのうち4.7つ
3グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年9月25日に日本でレビュー済み
2018年10月5日に日本でレビュー済み
アルゼンチンのホラー・プリンセス(王女)と呼ばれているそうですが、
これはスティーヴン・キング(王)を8歳で読んで影響を受けたというエピソードありきなんじゃないでしょうか。
もちろんホラーと一口に言っても中身の幅はとても広いものですが、かつてホラーのプリンスと呼ばれているのをみたことがあるクライヴ・バーカーのような、
パワーと斬新さに満ちながらも、いわゆるジャンル・ホラーをしっかり意識した作品群を期待していたら肩透かしを食ってしまいました。
リアルなのだろうアルゼンチン――この段階ですでに社会問題として不穏なことも――を舞台に、
女性や少女視点から描かれる日常に不条理が入り込んでくるという展開が多く、実際に作中で何が起きたのかははっきりしないものも多いです。
あえていうなら幽霊屋敷もの、サイコホラー、クトゥルーものなどと呼べそうなものもありますが、読後にもやもやした感じはつきまといます。
ただ巻末に配された表題作だけは、過激な手法で認識の変容を迫るという、曖昧さを排した社会派ジェンダーホラーで、このインパクトは相当なものでした。
またホラー以外に、コルタサルなどのラテンアメリカ幻想文学の流れでも語られていますが、
私はどちらかというと、舞台の土地以外の部分は、現代作家のミック・ジャクソンから優しさやユーモアを抜いたような印象を受けました。
変にキングやコルタサルの名前を出されるよりも、幻想味のある現代文学といわれた方がしっくりくるのではないかという短編集です。
これはスティーヴン・キング(王)を8歳で読んで影響を受けたというエピソードありきなんじゃないでしょうか。
もちろんホラーと一口に言っても中身の幅はとても広いものですが、かつてホラーのプリンスと呼ばれているのをみたことがあるクライヴ・バーカーのような、
パワーと斬新さに満ちながらも、いわゆるジャンル・ホラーをしっかり意識した作品群を期待していたら肩透かしを食ってしまいました。
リアルなのだろうアルゼンチン――この段階ですでに社会問題として不穏なことも――を舞台に、
女性や少女視点から描かれる日常に不条理が入り込んでくるという展開が多く、実際に作中で何が起きたのかははっきりしないものも多いです。
あえていうなら幽霊屋敷もの、サイコホラー、クトゥルーものなどと呼べそうなものもありますが、読後にもやもやした感じはつきまといます。
ただ巻末に配された表題作だけは、過激な手法で認識の変容を迫るという、曖昧さを排した社会派ジェンダーホラーで、このインパクトは相当なものでした。
またホラー以外に、コルタサルなどのラテンアメリカ幻想文学の流れでも語られていますが、
私はどちらかというと、舞台の土地以外の部分は、現代作家のミック・ジャクソンから優しさやユーモアを抜いたような印象を受けました。
変にキングやコルタサルの名前を出されるよりも、幻想味のある現代文学といわれた方がしっくりくるのではないかという短編集です。