Amazonで購入させていただきました。
インテリゲンちゃんこと高橋源一郎さんの小説『日本文学盛衰史』(講談社、2001)の続編である「戦後文学篇」です。
奥付の初出によると、2009年10月〜2012年6月まで断続的に『群像』に掲載され、最終章である「エピローグ」だけが『日本2.0 思想地図βvol.3』に掲載されたものだということです。
前作『日本文学盛衰史』がかなり小説らしい小説だったのに対し、本作は高橋さんの『ニッポンの小説』・『さよなら、ニッポン』・『「あの戦争」から「この戦争へ」』系譜の評論のような小説です。
柄谷行人さんが「近代文学の終り」を語ったのが2004年、そしてとうとう小説家自身が「文学なんてもうありませんよ」(帯の惹句より)と結論づける日が来たのですね。刊行日は2018年8月21日。
「文学なんてもうありませんよ」と嘯きつつ「今夜はひとりぼっちかい?」と優しく包みこんでくれる小説です。
このレビューを見てくださった方の便宜のために、以下に目次とともに、その章で取りあげられている人名等を列挙しました(敬称略)。
プロローグ 全身小説家←井上光晴
ラップで歌え、サルトル!←サルトル、野間宏
今夜はひとりぼっちかい?←内田裕也、モブ・ノリオ
政治家の文章←モブ・ノリオ、内田裕也、武田泰淳、堀江貴文
twitte上にて←奥泉光、角田光代、島田雅彦、平野啓一郎
twitter上にて・続←(シェークスピア)、(ロラン・バルト)、(ドラえもん)、小林秀雄、大岡昇平、中原中也
「革命」について←小熊英二、内田樹、武田泰淳
「純文学」リストラなう←たぬきち、佐々木俊尚
アナーキー・イン・ザ・JP ←中森明夫、川内康範、島成郎、高見順
サイタマの光る海←入江悠
サイタマの光る海② ←石坂洋次郎
サイタマの光る海③ ←石坂洋次郎、太宰治、鶴見俊輔
サイタマの光る海④ ←宮崎駿、石坂洋次郎
タカハシさん、「戦災」に遭う←勝谷誠彦、赤木智弘、小熊英二、今上陛下の御言葉
タカハシさん、「戦災」に遭う②←鶴見俊輔、山田風太郎、ポンキッキーズの歌(『レッツゴーいいことあるさ』)、小沢信男、坂口安吾
タカハシさん、「戦災」に遭う③←和合亮一、加藤典洋、鶴見俊輔
エピローグ←なし(だと思われます)
いろいろな意味で「小説の書き方」の本としても読めると思います。
オススメです。

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今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇 単行本 – 2018/8/23
高橋 源一郎
(著)
文学史そのものを小説にする「日本文学盛衰史」の次なるテーマは「戦後文学」。誰にも読まれなくなった難物を、ロックンロールやパンク、ラップにのせ、ブログやtwitter、YouTubeまで使って揉みほぐす。そんなある日、タカハシさんは「戦災」に遭う……。
「文学なんてもうありませんよ」
文学史そのものを小説にする「日本文学盛衰史」の次なるテーマは「戦後文学」。誰にも読まれなくなった難物を、ロックンロールやパンク、ラップにのせ、ブログやtwitter、YouTubeまで使って揉みほぐす。そんなある日、タカハシさんは「戦災」に遭う……。
オオオカ きみは死んだ。ぼくも死んだ。幸いなことに、ぼくもきみも全集は出版された。けれど、いまや、ぼくたちの読者も少ない。というか、文学そのものが風前の灯だ。
コバヤシ わかった。テレビに駆逐されたんだろう。待てよ、マンガかな。SF……ミステリー……あと、何があったっけ。
オオオカ 違うんだ、こばやし。パソコンと携帯電話だよ、文学を滅ぼそうとしているのは。
コバヤシ わけがわからん。ぱそこんに電話? それと文学にどんな関係があるの。
オオオカ アップルがマッキントッシュを発売したのが、きみが亡くなった翌年だものね。きみに理解できないのも無理はない。だが、そんな説明をする必要はあるまい。こばやし。
コバヤシ なに?
オオオカ もう、本は売れんぞ。
――「twitter上にて・続」より
「文学なんてもうありませんよ」
文学史そのものを小説にする「日本文学盛衰史」の次なるテーマは「戦後文学」。誰にも読まれなくなった難物を、ロックンロールやパンク、ラップにのせ、ブログやtwitter、YouTubeまで使って揉みほぐす。そんなある日、タカハシさんは「戦災」に遭う……。
オオオカ きみは死んだ。ぼくも死んだ。幸いなことに、ぼくもきみも全集は出版された。けれど、いまや、ぼくたちの読者も少ない。というか、文学そのものが風前の灯だ。
コバヤシ わかった。テレビに駆逐されたんだろう。待てよ、マンガかな。SF……ミステリー……あと、何があったっけ。
オオオカ 違うんだ、こばやし。パソコンと携帯電話だよ、文学を滅ぼそうとしているのは。
コバヤシ わけがわからん。ぱそこんに電話? それと文学にどんな関係があるの。
オオオカ アップルがマッキントッシュを発売したのが、きみが亡くなった翌年だものね。きみに理解できないのも無理はない。だが、そんな説明をする必要はあるまい。こばやし。
コバヤシ なに?
オオオカ もう、本は売れんぞ。
――「twitter上にて・続」より
- 本の長さ370ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2018/8/23
- 寸法13.8 x 3 x 19.5 cm
- ISBN-104062180111
- ISBN-13978-4062180115
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2018/8/23)
- 発売日 : 2018/8/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 370ページ
- ISBN-10 : 4062180111
- ISBN-13 : 978-4062180115
- 寸法 : 13.8 x 3 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 195,056位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1951年、広島県生まれ。81年、『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長編小説賞優秀作を受賞しデビュー。88年、『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞、02年、『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞を受賞。著書に『いつかソウル・トレインに乗る日まで』『一億三千万人のための小説教室』『ニッポンの小説―百年の孤独』他多数ある。10年5月には、『「悪」と戦う』も刊行された。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年10月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2018年9月9日に日本でレビュー済み
巻末の初出を見ると、エピローグ以外は「群像」の2009年10月号から2012年6月号に数度の休載を挟みながら断続的に掲載されています。内容については、いわゆる物語ではなく、東日本大地震と福島第一原発を軸に、小説の在り方や行く末であったり、井上光晴(「全身小説家」)や石坂洋次郎といった昭和の作家の掘り下げであったりの開陳を、かなりフレキシブルに展開して、一応エピローグで収斂していくような構成の一冊です。
読み終わった後、フランク・ザッパの、自らのライブ音源を自在に再構成してアルバムを作り、あとの評価や解釈は潔く受け手に委ねる方法論を思い出しました。
好悪は人によって異なり、読む人を選ぶかとも思いますが、途中で何度も巻を措き、ページ数の割に読み進めるのに時間がかかったこと、身辺雑記を積極的に綴りながらも決して内省に陥らず、自分を相対化しつつもやはりどこまでも自己言及的であること、そしてなにより読了後の余韻が間違いなく小説のものであること、帯の惹句には「文学なんてもうありませんよ」とありますが、紛うことのない「文学」作品だと思います。
読み終わった後、フランク・ザッパの、自らのライブ音源を自在に再構成してアルバムを作り、あとの評価や解釈は潔く受け手に委ねる方法論を思い出しました。
好悪は人によって異なり、読む人を選ぶかとも思いますが、途中で何度も巻を措き、ページ数の割に読み進めるのに時間がかかったこと、身辺雑記を積極的に綴りながらも決して内省に陥らず、自分を相対化しつつもやはりどこまでも自己言及的であること、そしてなにより読了後の余韻が間違いなく小説のものであること、帯の惹句には「文学なんてもうありませんよ」とありますが、紛うことのない「文学」作品だと思います。
2019年6月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
源ちゃんも、宮部みゆきと京極夏彦はお好きのようで。源ちゃんファンにして、宮部・京極フリークのわたしは安心しました。正編の『日本文学盛衰史』よりも、パワーがイマイチだなと思いながら読んでいると、終盤のシンサイに遭ったタカハシサンが自粛ムードのなか卒業式ままならなず、卒業証書を取りに来た学生たちに呼びかけた「時代の正義に染まらないでください】の一言が何故か忘れられない。「正義」は不変ではないからだ。だが、意志薄弱な私には、時代の正義に「染まらないでいること」の方が困難極まりない。