『ihr HertZ』誌上で連載している頃から、単行本が出たら必ず購入しようと心に
決めていました。
一冊まるまる表題作の二人のお話（表紙カバーの二人のお話）なので、読み応えも
すごくあります。
少しお話を紹介すると、次のようになるのかな、と思います。
高校の頃、天文部で先輩／後輩の関係にあった須藤先輩（表紙右）と星野くん（表紙左）。
11年という月日を経て、二人は再会を果たします。
再会した二人の関係は、小学生の子を持つ保護者とその担任、です。
｢あの時、僕は星の形をした鍵で、消せない暗闇を閉じこめたんだ―｣
裏表紙カバーにも取り上げられている、星野くんの言葉です。
11年前、先輩との間に起こった〈出来事〉を、受け留め難い事実ゆえ、記憶の奥底に
閉じ込めてきた星野くん。
あまりここでは詳しく書きませんが、同性同士であることの戸惑いが須藤先輩を困惑
させた結果、引き起こされた〈出来事〉です。
でもそんな｢閉じ込めた暗闇｣が、再会した先輩との関わりを通して、星野くんの意識に
浮上していきます。
ゆっくりと想い出される過去と、静かに浮かび上がる自分の想い。
星野くんの目線が辿った世界を、そして彼の内面世界を、読者は静かに密やかに見つめる
ことができます。
このゆったりとしたテンポに、自分の心の世界と静かに向き合っている星野くんの様子が
すごく出ていて、いいな、素敵だな＾＾と思いました。
相手に心惹かれながらも、それゆえ相手を傷つけ突き放してばかりの須藤先輩と、
須藤の言動に戸惑い、時に傷つきながらも、静かに須藤先輩への想いを自覚していく星野くん。
須藤先輩の弱さ、臆病さ。
そして、星野くんのひたむきさ、強さ。
そうした色々なものが交錯していて、すごく心を揺さぶられました。
星野くんの心理描写が中心とはいえ、須藤先輩の心中もその言動から十分うかがえるので、
どちらにも感情移入することができたからこその感動なんだろうなぁ、と思います☆
人が人を想って、長年胸に抱えた恋しい気持ちが、しみじみとした情感で、淡い記憶にのせて
描かれていて、ほんとうに素敵でした＾＾
感動作です！！
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