上下巻通してのレビューです。
著者は、患者やその家族だけでなく、科学者や学生、文学好きの読者にも読んでほしいとのこと。
本書は癌治療の歴史の書というだけではない。
数学や物理学、テクノロジー、宣伝など多分野の知見を総動員して、癌という得体の知れぬ敵と人生の全てを賭けて戦う臨床医や研究者の物語でもある。
また、姿も見せずに突然襲い掛かってきた癌に命を奪われまいと、不屈の意志力で戦う患者やその家族の物語でもある。
睡眠時間ゼロで研究するためにコカインを自分自身に注射するハルステッド。
大学に拒否された小児がんセンター設立を募金活動により自力で設立したファーバー。
後に胃癌の原因と判明するピロリ菌をヒトで実験することは正当化できないと、自らビーカーの懸濁液を飲み干したマーシャル。
癌を治してみせるという、自らが「殺意のような決意」と呼ぶ決意をしたスレイモン。
研究のために妻の出産の際の臍帯血を採取するムカージー。
治療しても治療しても増殖する癌。
ただ読んでいるだけのこちら側が絶望的な気分になる程の失敗に次ぐ失敗。
それにも関わらず、彼等を研究に駆り立てる強烈な何か。
使命感。
何としても患者を助けたい、いや、助けなければならないという強烈な使命感。
その使命感は彼等だけではなく、患者とその家族、そして社会に共有されて巨大な流れを作り出して行く。
社会が癌の研究に大きな影響を与え、癌が社会に大きな影響を与える、その相互作用の流れだ。
その流れによって、遂に現在使われているような分子標的薬に辿り着く。
絶望から希望へ。
癌の6つの法則が明らかになり、癌の予知と治療は科学となった。
私は心の底から感動せざるを得なかった。
だが、根治的乳房切除術により大きく損ねられた外見に耐えた女性は50万人。
更に多数の癌患者の失われた命。
科学になるためには「何一つ、無駄なことはなかった」と言われても、その重さに圧倒される。
医学に限らず、科学に携わる方々には、その分野が科学と呼ばれるようになるまでの歴史を忘れないで頂きたい、と切に願うばかりである。
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病の「皇帝」がんに挑む 人類4000年の苦闘(上) Kindle版
ピュリッツァー賞
ガーディアン賞
PEN/E・O・ウィルソン賞受賞!
《ニューヨーク・タイムズ》ベストブック
《タイム》オールタイム・ベスト・ノンフィクション選出!
仲野徹氏(大阪大学大学院教授)絶賛!
「読み始めてあまりの面白さに驚嘆した。数多くのエピソードが、一本の大樹のようにみごとにまとめられ、ミステリーを読むかのように一気に読み終えることができる。(本書解説より)」
■ムカジーの手にかかれば、科学は単にわかりやすいだけでなく、スリルに満ちたものへと変わる……読みはじめたら止まらない、高揚感に包まれた鮮やかな物語。 ――《オプラ・マガジン》
■綿密な調査によってがんの歴史の全貌を浮き彫りにする物語……苦労に満ちた研究の軌跡を、ミステリ小説のような緊迫感とともに描き出すムカジーに筆力にはただただ驚かされる。
――《ボストン・グローブ》紙
■歴史上最もすばらしい医学の本のひとつである。
――《ニューヨーク・タイムズ》紙
地球全体で、年間700万以上の人命を奪うがん。紀元前の昔から現代まで、人間を苦しめてきた「病の皇帝」の真の姿を、患者、医師の苦闘の歴史をとおして迫真の筆致で明らかにするノンフィクション。
古代エジプトのパピルスにイムホテプはこう記した「この病の治療法はない」。この病を「カルキノス」と呼んだ医聖ヒポクラテスもまた「がんは治療しないほうがよい。そのほうがより長く生きるから」と述べている。人類は4000年にわたって、この怖るべき病気と闘い続けてきた。
外科手術による病巣の切除、X線による放射線療法、抗がん剤と骨髄移植を組み合わせた超大量化学療法、さらに「がんに対する魔法の弾丸」になると期待される分子標的療法……
不治の病から治癒可能な病へといたるその治療の歴史と、「がん」をめぐる患者、医師、研究者たちの人間ドラマを見事に描きだした「病の皇帝」がんの伝記。
ガーディアン賞
PEN/E・O・ウィルソン賞受賞!
《ニューヨーク・タイムズ》ベストブック
《タイム》オールタイム・ベスト・ノンフィクション選出!
仲野徹氏(大阪大学大学院教授)絶賛!
「読み始めてあまりの面白さに驚嘆した。数多くのエピソードが、一本の大樹のようにみごとにまとめられ、ミステリーを読むかのように一気に読み終えることができる。(本書解説より)」
■ムカジーの手にかかれば、科学は単にわかりやすいだけでなく、スリルに満ちたものへと変わる……読みはじめたら止まらない、高揚感に包まれた鮮やかな物語。 ――《オプラ・マガジン》
■綿密な調査によってがんの歴史の全貌を浮き彫りにする物語……苦労に満ちた研究の軌跡を、ミステリ小説のような緊迫感とともに描き出すムカジーに筆力にはただただ驚かされる。
――《ボストン・グローブ》紙
■歴史上最もすばらしい医学の本のひとつである。
――《ニューヨーク・タイムズ》紙
地球全体で、年間700万以上の人命を奪うがん。紀元前の昔から現代まで、人間を苦しめてきた「病の皇帝」の真の姿を、患者、医師の苦闘の歴史をとおして迫真の筆致で明らかにするノンフィクション。
古代エジプトのパピルスにイムホテプはこう記した「この病の治療法はない」。この病を「カルキノス」と呼んだ医聖ヒポクラテスもまた「がんは治療しないほうがよい。そのほうがより長く生きるから」と述べている。人類は4000年にわたって、この怖るべき病気と闘い続けてきた。
外科手術による病巣の切除、X線による放射線療法、抗がん剤と骨髄移植を組み合わせた超大量化学療法、さらに「がんに対する魔法の弾丸」になると期待される分子標的療法……
不治の病から治癒可能な病へといたるその治療の歴史と、「がん」をめぐる患者、医師、研究者たちの人間ドラマを見事に描きだした「病の皇帝」がんの伝記。
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2013/8/24
- ファイルサイズ3246 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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商品の説明
著者について
シッダールタ・ムカジー Siddhartha Mukherjee
腫瘍内科医で、がん研究者。現在はコロンビア大学医学部准教授、およびコロンビア大学メディカル・センターの指導医を務める。
1970年、インドのニューデリーの生まれ。デリーの高校を卒業後、スタンフォード大学で生物学を学んだあと、
ローズ奨学金を獲得してオックスフォード大学に入学、卒業後、ハーバード大学医学部に進んだという学歴を持つ。
大学院卒業後は、ボストンのダナ・ファーバーがん研究所とマサチューセッツ総合病院でがん医療(腫瘍内科学)の専門研修を開始する。
この研修中から執筆がはじめられた本書は、古代エジプトから現代までのがんとその治療法の歴史を、一般読者にもわかりやすく、かつ生き生きと描きだし、
《ニューヨーク・タイムズ》の「2010年のベストブック10冊」に選ばれ、翌2011年にはピュリッツァー賞、PEN/E・O・ウィルソン・リテラリイ・サイエンス・ライティング賞、ガーディアン賞を受賞した。
田中文 (タナカフミ)
東北大学医学部卒。医師、翻訳家。訳書は『フリント船長がまだいい人だったころ』(早川書房刊)。
腫瘍内科医で、がん研究者。現在はコロンビア大学医学部准教授、およびコロンビア大学メディカル・センターの指導医を務める。
1970年、インドのニューデリーの生まれ。デリーの高校を卒業後、スタンフォード大学で生物学を学んだあと、
ローズ奨学金を獲得してオックスフォード大学に入学、卒業後、ハーバード大学医学部に進んだという学歴を持つ。
大学院卒業後は、ボストンのダナ・ファーバーがん研究所とマサチューセッツ総合病院でがん医療(腫瘍内科学)の専門研修を開始する。
この研修中から執筆がはじめられた本書は、古代エジプトから現代までのがんとその治療法の歴史を、一般読者にもわかりやすく、かつ生き生きと描きだし、
《ニューヨーク・タイムズ》の「2010年のベストブック10冊」に選ばれ、翌2011年にはピュリッツァー賞、PEN/E・O・ウィルソン・リテラリイ・サイエンス・ライティング賞、ガーディアン賞を受賞した。
田中文 (タナカフミ)
東北大学医学部卒。医師、翻訳家。訳書は『フリント船長がまだいい人だったころ』(早川書房刊)。
登録情報
- ASIN : B00FKSJ58A
- 出版社 : 早川書房 (2013/8/24)
- 発売日 : 2013/8/24
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 3246 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 463ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 45,703位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 238位世界史 (Kindleストア)
- - 3,366位科学・テクノロジー (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
すばらしい良質のノンフィクション。これは現役の医師によって書かれた「がん」の治療の歴史書なのだが、さまざまにちりばめられた治療法の発見とそれの臨床応用に関するドラマがまるでミステリのように描写されページを来るのがもどかしい。上下二巻800ページは去年読んだ「海賊と呼ばれた男」並だが、中身の濃さは数倍はある。それにもかかわらずほとんど一気読みしてしまった。
これを読むと「がん」との戦いは実に困難な闘いであったのがよくわかる。ある治療法が発見されて、一時的には効いたかのように見えても、それがまた副作用や別の疾患をよんで否定されていく。あまりに過酷な手術法、たとえば乳がんに対する根治的乳房切除術(乳房だけでなく胸筋から時には肋骨まで切り取る)の有効性が否定される1980年までほぼ100年間にわたって患者に施されてきたなどの悲劇も胸をうつ。
「がん」の克服はこれを読んでもそうたやすいことではなさそうに見えるが、着実に歩を進めているのも確かなようだ。不治の病から生還した人が増えつつあることだ。たばこの喫煙率が減ったことでアメリカの男性の肺がんがへり、乳がんが手術と化学療法の併用で劇的に生存率があがっているという嬉しいこともある。長年の医師、研究者、そして患者の努力の末のこの結果、「何ひとつ無駄な努力はなかった」という言葉を目にしたとき、涙が出た。
ちなみに著者のシッダールタ・ムカジーは名前からわかる通り、インド生まれのインド人でオックスフォードからハーバードの医学大学院を出たというが、アメリカは実に人材をひきつけるのがうまい国だということもわかる。
難を言えば、解説はあるが分子生物学とがんの関係あたりになるとさすがに文系出身者では読みこなしにくいこと。本質的に説明しにくい部分ではあるが、もう一工夫欲しいとは思った。
これを読むと「がん」との戦いは実に困難な闘いであったのがよくわかる。ある治療法が発見されて、一時的には効いたかのように見えても、それがまた副作用や別の疾患をよんで否定されていく。あまりに過酷な手術法、たとえば乳がんに対する根治的乳房切除術(乳房だけでなく胸筋から時には肋骨まで切り取る)の有効性が否定される1980年までほぼ100年間にわたって患者に施されてきたなどの悲劇も胸をうつ。
「がん」の克服はこれを読んでもそうたやすいことではなさそうに見えるが、着実に歩を進めているのも確かなようだ。不治の病から生還した人が増えつつあることだ。たばこの喫煙率が減ったことでアメリカの男性の肺がんがへり、乳がんが手術と化学療法の併用で劇的に生存率があがっているという嬉しいこともある。長年の医師、研究者、そして患者の努力の末のこの結果、「何ひとつ無駄な努力はなかった」という言葉を目にしたとき、涙が出た。
ちなみに著者のシッダールタ・ムカジーは名前からわかる通り、インド生まれのインド人でオックスフォードからハーバードの医学大学院を出たというが、アメリカは実に人材をひきつけるのがうまい国だということもわかる。
難を言えば、解説はあるが分子生物学とがんの関係あたりになるとさすがに文系出身者では読みこなしにくいこと。本質的に説明しにくい部分ではあるが、もう一工夫欲しいとは思った。
2020年3月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私よりも知恵があり、情熱があり、努力家な人々が、人生を捧げて、挫折し、苦しみ悶え、それでも諦めずに前に進んだ先に、今の医療というものが存在するのだと痛感しました。オススメの一冊です。
2020年3月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
癌の標準治療になる外科手術や化学療法や放射線治療などを手に入れるまで、医療者や患者がどれだけ犠牲を払ってきたんだと思うと、今の治療が出来る有難さを感じます。
2015年6月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
解りやすく実証的で興味深く拝読いたしました。参考になりました。
2015年1月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
人の体は不確かで、予測不能で未知にあふれている。
そんな対象の失調(=病)を、寝る暇を惜しんで治そうと、善意で、戦ってきた医師たち。
それが後年、歴史的に「患者への害であった」ということが証明されたとき、
その研究者・老いた医師にかける言葉はあるか?
非常に切ない内容です。
ハルステッドさんは、患者に害をなし続けた、誇り高き外科医であるが、
彼に、どんな言葉をかけたら良いのだろうか。思いつかない・・・・。
医療にたずさわる人だけではなく、研究者一般にも強い示唆をあたえてくれる傑作と思います。
(それ以前に、この人の文体が非常にリーダブルです。上下巻ありますが、難なく読めると思います。)
そんな対象の失調(=病)を、寝る暇を惜しんで治そうと、善意で、戦ってきた医師たち。
それが後年、歴史的に「患者への害であった」ということが証明されたとき、
その研究者・老いた医師にかける言葉はあるか?
非常に切ない内容です。
ハルステッドさんは、患者に害をなし続けた、誇り高き外科医であるが、
彼に、どんな言葉をかけたら良いのだろうか。思いつかない・・・・。
医療にたずさわる人だけではなく、研究者一般にも強い示唆をあたえてくれる傑作と思います。
(それ以前に、この人の文体が非常にリーダブルです。上下巻ありますが、難なく読めると思います。)
2013年12月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は80歳を過ぎるまでほぼ健康で、親族に誰もガンの経験者がなく、「俺はガンにはかからない」と自分で決めていたのです。ところが半年ほど前、たまたま人間ドックで超音波検査を受けたところ腎臓に腫瘍があると言われ、知り合いの泌尿科医の診断で腎臓ガンと宣告されて、3月程前二週間ほどの入院で腎臓の一部を切除し、現座はほぼ健康を回復して今後様子を見るようにと指示されています。
たまたま退院直後にこの本を発見し、少し骨が折れましたが一月程かけて上下2巻を通読し、この本の素晴らしさに感激しました。
著者はインド出身のまだ若い人のようですが、見事な構想力と筆力で四千年前から記録されたガンという不思議な病気について、歴史と自分の臨床経験を中心にしてガンという病気の見事な立体像を描いています。
そして私にわかったことは、
★ ガンとは人の生命活動それ自体の一部がほんの少し狂ったもので、誰でも、いつでもかかる可能性がある。
★ がんの治療のために医者は途方もない苦労をしてそれなりの成果は得られているが、その将来は決して容易ではない。
★ ガンにかかってもその状態に応じて患者と医師が共同して最善の努力をすることが必要で、決してあきらめてはいけない。
少し専門的な言葉がたくさんあって、現在の私の知識ではこの程度のことしか書けませんが、一般の方も専門の方もぜひ一度読まれることをお勧めします。
たまたま退院直後にこの本を発見し、少し骨が折れましたが一月程かけて上下2巻を通読し、この本の素晴らしさに感激しました。
著者はインド出身のまだ若い人のようですが、見事な構想力と筆力で四千年前から記録されたガンという不思議な病気について、歴史と自分の臨床経験を中心にしてガンという病気の見事な立体像を描いています。
そして私にわかったことは、
★ ガンとは人の生命活動それ自体の一部がほんの少し狂ったもので、誰でも、いつでもかかる可能性がある。
★ がんの治療のために医者は途方もない苦労をしてそれなりの成果は得られているが、その将来は決して容易ではない。
★ ガンにかかってもその状態に応じて患者と医師が共同して最善の努力をすることが必要で、決してあきらめてはいけない。
少し専門的な言葉がたくさんあって、現在の私の知識ではこの程度のことしか書けませんが、一般の方も専門の方もぜひ一度読まれることをお勧めします。
2013年10月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ひと昔まではがんと聞くと、死のみだったが、近年は明るい望みを抱くことができるようになっていた。ちかごろは様々な医療方法が増え、がんの姿も明らかになっている。今日に至るまでの、医学界・政界などのさまざまな戦いが分かり、興味深く読めた。