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発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ 単行本 – 2017/4/28
月刊「ソトコト」連載「発酵文化人類学」の単行本化。
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社木楽舎
- 発売日2017/4/28
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- ISBN-104863241127
- ISBN-13978-4863241121
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出版社より
【目次】
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はじめに〜発酵をめぐる冒険に、いざ出発! 〜COLUMN1 発酵ってそもそも何ぞや? |
PART1:ホモ・ファーメンタム 〜発酵する、ゆえに我あり〜第一章のテーマは「ヒトと発酵の出会い」。微生物のはたらきが自分たちの世界を豊かにすることに気づいた時、ホモ・ファーメンタム(発酵するヒト) が生まれました。日本の創世記にも「神のカビ」が大事な役割を果たしています。 【メイントピックス】ヒトと発酵の出会い / 麹(こうじ)の起源 / 発酵と神さまの関係性 COLUMN2 発酵と腐敗を分かつもの |
PART2:風土と菌のブリコラージュ 〜手前みそとDIYムーブメント〜第二章のテーマは「手前みそとDIY ムーブメント」。レヴィ= ストロースによるブリコラージュの概念を下敷きに、発酵食品を手づくりする楽しさと味噌の奥深さに迫ります。なぜ今、こんなにも手前みそムーブメントが盛り上がっているのでしょうか? 【メイントピックス】ブリコラージュとは何か? / 手前みそは楽しい! / オープンな文化の醸しかた COLUMN3 発酵文化の見取り図 |
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PART3:制限から生まれる多様性 〜マイナスをプラスに醸すデザイン術〜第三章のテーマは「発酵文化の多様性」。僕が日本各地で出会った個性的な発酵食品を解説しながら、土地に伝承されてきた郷土食文化の奥深さを紐解きます。現代の科学の目で見てみると、奇想天外に見える発酵食品も合理的にデザインされていることがわかります。 【メイントピックス】すんきの無塩乳酸発酵 / 碁石茶の二段発酵 / くさやの複雑系発酵 COLUMN4 発酵菌と酵素の違いとは? |
PART4:ヒトと菌の贈与経済 〜巡り続けるコミュニケーションの環〜第四章のテーマは「生態系を巡る贈与の環」。文化人類学の主要テーマである「交換儀礼」と、微生物学の主要テーマである「エネルギーの代謝」を重ね合わせながら、生態系のなかでどのように物質やエネルギーが循環しているのかを見ていきましょう。 【メイントピックス】クラ交換とは何か? / 生物のエネルギー代謝 / 生態系における贈与経済 COLUMN5 恥ずかしくて人に聞けないお酒の基本 |
PART5:醸造芸術論 〜美と感性のコスモロジー〜第五章のテーマは「酒とヒトの感性」。甲州ワインと日本酒の製法と歴史を系譜的に見つつ、人間にとって美とは何かをしつこく掘り下げていきます。醸造技術の詳細解説と文化論が入り交じる、本書でいちばんの読みどころです。 【メイントピックス】甲州ワインの歴史と製法 / 現代における日本酒の系譜 / アートを感じる人間の感性とは? COLUMN6 醸造とは何か? |
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PART6:発酵的ワークスタイル 〜醸造家の喜怒哀楽〜第六章のテーマは「醸造家の働きかた」。日本酒・味噌・醤油・ワインのものづくりに関わる四人の醸造家を紹介しながら、仕事の哲学や、組織やビジネスのモデルづくりの方法論を取り出していきます。発酵の仕事って、奥が深い……! 【メイントピックス】醸造家の仕事の現場 / 発酵とビジネスの関係性 / 手づくりであることの意味 COLUMN7 発酵ムーブメントの見取り図 |
PART7:よみがえるヤマタノオロチ 〜発酵の未来は、ヒトの未来〜第七章のテーマは「バイオテクノロジーとヒトの未来」。最先端のバイオテクノロジーと伝統的な発酵技術を比較しながら、これから僕たちがどのように生命と向き合っていくべきなのかを考えていきます。ヒトはヤマタノオロチの剣を使いこなせるのでしょうか? 【メイントピックス】冷たい社会と熱い社会 / クリスパーとゲノム編集 / ヒトはどこまで生命を触れるのか? |
あとがき〜いざ、次なる冒険へ! 〜 |
本文「はじめに〜発酵をめぐる冒険に、いざ出発! 〜」より
皆さまはじめまして。発酵デザイナーの小倉ヒラクです。
「発酵デザイナー?いったいナニモノ?」
まあそうなりますよね。
僕は、目に見えない微生物の世界のナビゲーター。普段意識しないけれど、実は僕たちの暮らしを支えている発酵菌たちのエヴァンジェリスト(伝道師)として、日本はもちろん世界の東西南北あちこちを巡りながら、世界中で育まれた不思議な発酵文化を皆さまに伝える仕事をしているのです。
「伝えるだって?どんな風に?」
そのためにこの本があるのだ!
昨今、CMや雑誌の特集でよく見かける「発酵」というキーワード。一般的には「美味しい」「健康にいい」と実利的な側面で語られることが多いけれど、実は文化的に紐解いてみるともっと奥深い魅力を発見することができます。
例えば。身近な発酵食品である味噌を紐解けば、アナタが住む土地の歴史が明らかになる。あるいは、ヨーグルトがなぜ健康に良いのかを調べると、ミクロの生命の秘密が見えてくる。
「発酵のひみつ」をひとたび知れば、見えないはずの微生物たちと友だちになれる。
「微生物の視点」を借りれば、この社会のカタチが今までと違って見える。
この本を読めば、発酵の仕組みがなんとなくわかるのはもちろん、微生物と人間の関わり、僕たちが長年培ってきた暮らしの文化の奥深さ、日本人がどのように「見えない自然と向かい合ってきたのか」というスタンス、そして美味しさや美しさを感じる人間の認知システムのカラクリなど、色んな「ひみつ」が見えてくる。
文化の本質は隠されている。目に見えない自然のシンボルである微生物たちは、隠された「ひみつ」をこっそり教えてくれるメッセンジャー。
微生物の目線で社会を見てみよう。そこには「ホモ・ファーメンタム(発酵するヒト)」が愉快に食卓を囲んでいる姿が見えるはずだ。
発酵文化人類学とは何か?
それでは本編を始める前に、本書のタイトルにもなっている「発酵文化人類学」の定義をしたいと思います(なぜなら僕が勝手につくった造語だからね!)。
大学時代に僕が学んでいたのは、文化人類学。十代の終わり頃からバックパックをかついで世界中あちこち旅して、色んな文化を見て回るのにハマっていました。そんなバックパッカー少年にとって、文化人類学は「なぜ世界にはこんなにもたくさんの文化があるのか」という疑問に答えてくれる学問だったのですね。
僻地にせっせと足を運んで宝飾品や器を集めたり、祭りや入れ墨や建築の細かい特徴を写し取ってコレクションにしたり。旅が終わったら書斎に戻ってきて、素材を分類して分析し、具体的なオブジェやモチーフの裏に潜む「文化のひみつ」をあぶり出す……という文化人類学者の姿は、バックパッカーやってモラトリアムを満喫していた自分を勇気づけてくれる憧れの存在でした。
そして時は流れ、僕はデザイナー兼発酵研究家という不思議な仕事をするようになり、僻地にせっせと足を運び、お味噌だのお酒だの、醸造用の道具だの、蔵の土壁のカケラだのをせっせと収集し、自宅に持ち帰った素材を顕微鏡で覗き込みながら日夜微生物の世界の研究に没頭するようになっていました。
「あれっ……なんかこれって大学時代に夢中だった文化人類学の研究に似ているぞ?」
と気づいた瞬間に「発酵+文化人類学」という発想が浮かんだんですね。普通だったら絶対に交わらないはずの線がつながってしまった。しかしだ。考えてみれば発酵の道も文化人類学の道もそれぞれ「交わらないはずの線がつながった学問」だと言えるのですね。
発酵の道は「生命工学と社会学の交差点」。お酒が発酵する現象は、化学式に変換できる=生命工学。けれども、どうして人それぞれ好きなお酒が違うのかは、化学式にはできない=社会学。
文化人類学も同じような構造になっています。様々なオブジェや民話をデータとして分解して共通項を再構築して体系化する=情報工学。けれども、どうして人類がこんなにも多様な文化を生み出したのかを考えるには、データを超えた仮説を生み出す想像力がいる=社会学。
具体的なモノからスタートし、抽象的なメソッドとして体系化する。その時、歴史の奥に隠された「世界のひみつ」の扉が開く。その扉を開けるにはクリエイティブな感性と広い視野でものを見る思考力が試される。
これはまさに、文化人類学からスタートし、デザイナーを通過し、発酵に行き着いた僕にしかできない試みではないか……? と勝手に思い込んでしまったが最後、各地で面白い発酵食品や微生物を見るたびに「僕は今、発酵文化人類学者なのだ!」とがぜん研究モードになっているわけなのでした。
さて、では「発酵文化人類学」を暫定ですが定義してみましょう。発酵文化人類学とは、
発酵を通して、人類の暮らしにまつわる文化や技術の謎を紐解く学問
のこと。生命工学=バイオテクノロジーの応用研究のように、新しい技術や商品を開発するのではなく、すでにあるものを集めて編集しなおし、文化や技術の歴史に新しい視点を持ち込む。つまり、発明するものは「技術」ではなく「視点」。
「発酵」や「微生物」というキーワードによって、今まで関係ないと思われたものの関連性が明らかになったり、当たり前すぎて見落としていた文化の重要性が思いもかけないスケールで浮上してくる……そんなことを目指していきたいと思っています。押忍!
商品の説明
出版社からのコメント
著者について
発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市の山の上に発酵ラボをつくり、日々菌を育てながら微生物の世界を探求している。絵本&アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。2015年より新作絵本『おうちでかんたん こうじづくり』とともに「こうじづくりワークショップ」をスタート。のべ1000人以上に麹菌の培養方法を伝授。自由大学や桜美林大学等の一般向け講座で発酵学の講師も務めているほか、海外でも発酵文化の伝道師として活動。雑誌ソトコト『発酵文化人類学』の連載、YBSラジオ『発酵兄妹のCOZYTALK』パーソナリティも務めている。
登録情報
- 出版社 : 木楽舎 (2017/4/28)
- 発売日 : 2017/4/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 384ページ
- ISBN-10 : 4863241127
- ISBN-13 : 978-4863241121
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 109,120位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 27位微生物学
- カスタマーレビュー:
著者について
小倉ヒラク(おぐら・ひらく)
1983年、東京都生まれ。発酵デザイナー。早稲田大学第一文学部で文化人類学を学び、在学中にフランスへ留学。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市に発酵ラボをつくる。「見えない発酵菌の働きを、デザインを通してみえるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。絵本&アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。2020年、発酵食品の専門店「発酵デパートメント」を東京・下北沢にオープン。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』『オッス!食国美味しいにっぽん』など。
イメージ付きのレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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発酵についての説明もわかりやすく
日本の発酵食品の歴史なども興味深かった!
著者の文才は特筆もので、例えば日本酒の事例では、カビ(麹菌)と酵母との共同作業の賜物という説明を、カビ(麹菌)を「発酵界のタモリ」と例えて読者の興味を惹きながら、読者に"何となく"日本酒における「発酵」の仕組みを分らせる筆力には感心した。同時に、日本の(コメ用の)「糀」と中国の(雑多な穀物・薬草類用の)「麹」との相違を指摘し、<神話>と絡めて「『発酵カビ』が『食のアイデンティティ』」を作ったと文化人類学的に分析する辺りの硬軟自在さも際立つ。また、世界各国に存在する多様な「発酵」食品の由来を各地の食材を集めて作ったプリコラージュ(フランス版DIY)の無名の"達人"に帰するメタファーも巧みであると同時に分かり易い。更に、「発酵」と「腐敗」(双方とも人間から見た時の観点)の違いを改めて気付かせてくれると共に、人類にとってこの区別をする事及び「発酵」によって食物を保存する事が食文化において重要だったという言説も本書の趣旨に沿っている(特に現在、「発酵」食品の代表の味噌に対して"達人"に依るプリコラージュと反対の運動が起きている事由を「手前みそ」と呼ぶ才気煥発さ)。
次いで、「『発酵』に見る文化の多様性」において主に"東西"の「発酵」文化へと分類して、"東"に属する日本の(素人のDIY風味の)「発酵」文化の歴史を多彩なトピックスを織り込みながら辿るという展開も流麗(「『発酵』菌=ジョン・レノン、酵素=イマジン」という卓抜した比喩もあり、我々は酵素を享受している事が理解出来る)。続いて、コミュニケーションを主題とした「生態系における微生物の役割」において、人間と微生物とが地球の物質循環の中で無償の「取引」をしている(「発酵」は微生物からの贈り物であって、「『発酵』=酸素も光も使わないエネルギー獲得法」)という論旨は持続可能性を目指す人間社会の本質を衝いていて深い。一方、山梨ワインや日本酒から美味しさや美しさの認知機構へと飛躍させるパートは凡庸な印象だが、風土の相違に依って普遍性は存在しないという説明は首肯出来る。ラストはDNA編集も語って一種の未来論にもなっている。著者の文才・見識が光り、「発酵」をキーワードとして、多彩な「発酵」関連知識を与えてくれると共に文化論、社会(コミュニケーション)論、未来論まで論旨を敷衍した快著だと思った。
私が知りたかったことが全て書いてあり、まだ半分までしか読んでませんが、すごく内容が充実しており、価格以上の価値があります。あと半分読むのが楽しみです。
科学的な話も噛み砕いて書かれていて、分かりやすく読みやすい。