ソーシャル・イノベーションというタイトルから、企業のイノベーションについてマイケル・ポーターの提唱するCSV(Created Social Value)をより実践的に落とし込んだ本かと期待するが本書はそのようなポジショニング学派による手法の展開とは異なる。私の勝手な解釈ではあるが、思い切った右脳的、実践的な論理展開である。
一貫しているテーマは、「社会課題を解決する/生まない経営」である。そこから企業(経済主体)、資本主義の価値軸、企業や市場の成熟、個人の成熟(コヴィー博士の7つの習慣と関連)、という4つの状態の変遷をの在り方を「ソーシャルイノベーション」の段階(世代)によって分類している。
本書では重畳的積み上げによるフェーズの予測ではなく、逆算的(本書ではバックキャスティングと言っている)な論理展開により強い背骨を構築している。
一言で言うと、「法人」は本当の人格をもつ人のような存在として今後社会に参加する事になる。という事かと思う。
・哲学をもって社会活動を行う(株主資本主義や利潤至上主義からの発展)
・シェアより、インパクト(みんなに好かれるより、真の理解者を得る)
・身の回りの人のだれかを犠牲にしていいわけではない(利害関係者の相互作用の中に自分が仲介者としている事実を知る)
・中庸(本書では「振り子」、用いられていないがそう解釈)
・多様性と(アメーバ経営的)自主性が一つの太い紐になったような複合性
・仲良くしながら、クリティカルシンキングを続ける(創造的摩擦)
とまとめられるように感じる。
本理論はマイケル・ポーターのCSVについても認めているが、それが手法として企業の一部分の利益の最適化に用いられることに強い分裂性を感じている。
著者の活動拠点である京都市は行政、市民団体、社会貢献意識の高い企業が多い事で有名である。京都における深い文化への信頼、そして気の抜けない周囲への気遣い、権勢の変化への柔軟な対応といった高い次元の止揚に基づいた俯瞰による先見性によって書かれている。
本書の最後に、分析や言語化をしない、「もやもや」のまま受け入れるという部分がある。これは哲学、価値、ビジョンというものを共有する際の先進的な提言であると感じる。概念はいかに言葉を尽くしても見る角度で変わるものである。それをそのまま受け入れる事は今後の人工知能優越の社会において学ぶべき観点であると思う。
このジャンルの本は具体例の羅列をさけられない傾向があると感じる。読み終わった時に何となく「それで、どうするのか?」という感覚が残る。
本書では著者の実践、そして著者から読者そして、学生へのメッセージが込められている。今や一つのジャンルで語る事の難しい社会へのタックルの仕方の本である。社会貢献活動、企業での社員のWhyの供給、自己実現について考えている読者にはお勧めしたい本である。
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サステイナブル・カンパニー入門: ビジネスと社会的課題をつなぐ企業・地域 単行本(ソフトカバー) – 2016/9/16
大室 悦賀
(著)
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購入オプションとあわせ買い
CSR・CSVやソーシャルビジネスが流行しているが、それぞれには限界があり、重要なのは本流である企業の本業での社会化だ。「企業の本業を通じた社会的課題の解決」、ひいてはその先にある「社会的課題を生まない企業経営」と、著者がリードする「ソーシャル・イノベーション・クラスター」の展開についてわかりやすく解説。
主要目次
1章 一般の企業こそ「社会的課題」解決の旗手に
2章 事例
3章 サステイナブル・カンパニーとは何か
4章 サステイナブル・カンパニーを支える地域づくり
5章 これからのあなたへ
主要目次
1章 一般の企業こそ「社会的課題」解決の旗手に
2章 事例
3章 サステイナブル・カンパニーとは何か
4章 サステイナブル・カンパニーを支える地域づくり
5章 これからのあなたへ
- 本の長さ268ページ
- 言語日本語
- 出版社学芸出版社
- 発売日2016/9/16
- 寸法21 x 14.8 x 2.5 cm
- ISBN-104761526335
- ISBN-13978-4761526337
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商品の説明
出版社からのコメント
出版記念イベント(2016.11.30@京都)を開催します!
大室悦賀 氏×前田展広 氏 対談
日時:2016年11月30日(水)18:30-20:00(開場:18:00)
会場:学芸出版社3階ホール
定員:40名程度
参加費:無料
京都発で各地に広がりつつある「ソーシャル・イノベーション・クラスター」の動きをリードする大室先生と前田コーディネーターが、「企業の本業での社会化」の本質に迫ります。詳しくは学芸出版社HPで!
大室悦賀 氏×前田展広 氏 対談
日時:2016年11月30日(水)18:30-20:00(開場:18:00)
会場:学芸出版社3階ホール
定員:40名程度
参加費:無料
京都発で各地に広がりつつある「ソーシャル・イノベーション・クラスター」の動きをリードする大室先生と前田コーディネーターが、「企業の本業での社会化」の本質に迫ります。詳しくは学芸出版社HPで!
著者について
大室悦賀(おおむろ のぶよし)
京都産業大学経営学部教授。京都市ソーシャルイノベーション研究所所長。1961年東京都府中市生まれ。一橋大学大学院商学研究科博士後期課程満期退学。1985年東京都府中市入職、2007年京都産業大学経営学部専任講師、同准教授を経て、2015年から現職。共著に『ソーシャルビジネス 地域の課題をビジネスで解決する』(中央経済社、2011年)、『ソーシャル・イノベーションの創出と普及』(NTT出版、2013年)。
京都産業大学経営学部教授。京都市ソーシャルイノベーション研究所所長。1961年東京都府中市生まれ。一橋大学大学院商学研究科博士後期課程満期退学。1985年東京都府中市入職、2007年京都産業大学経営学部専任講師、同准教授を経て、2015年から現職。共著に『ソーシャルビジネス 地域の課題をビジネスで解決する』(中央経済社、2011年)、『ソーシャル・イノベーションの創出と普及』(NTT出版、2013年)。
登録情報
- 出版社 : 学芸出版社 (2016/9/16)
- 発売日 : 2016/9/16
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 268ページ
- ISBN-10 : 4761526335
- ISBN-13 : 978-4761526337
- 寸法 : 21 x 14.8 x 2.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 704,155位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年4月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「筆者の考えた」概念の提示であり、経営者の参考にはなりません。
興味深い事例が紹介されていますが、無理に筆者の枠組みにはめ込もうとしていて興を削ぎます。
主要な企業はすでにCSR報告書やアニュアルレポートを進化させ、統合報告書としてサスティナビリティに踏み込みつつあります。企業経営に携わる方は、そちらの最新の解説書を手に取られたほうがいいでしょう。
CSR、ソーシャルビジネス、CSV、NPOの限界を示し、それを乗り越える概念を提唱すると述べているのですが、思いつきのレベルです。行政関係者やコンサルが地域振興計画などを作る際に、目新しいキーワードが欲しいときには使えるかもしれません。
興味深い事例が紹介されていますが、無理に筆者の枠組みにはめ込もうとしていて興を削ぎます。
主要な企業はすでにCSR報告書やアニュアルレポートを進化させ、統合報告書としてサスティナビリティに踏み込みつつあります。企業経営に携わる方は、そちらの最新の解説書を手に取られたほうがいいでしょう。
CSR、ソーシャルビジネス、CSV、NPOの限界を示し、それを乗り越える概念を提唱すると述べているのですが、思いつきのレベルです。行政関係者やコンサルが地域振興計画などを作る際に、目新しいキーワードが欲しいときには使えるかもしれません。