マルセル・デュシャンの「泉」のような小説、というとかえってわかりにくいだろうか。でも、この作品を読めば読むほど、そんな気がしてきてならない。
デュシャンが便器に、「泉」と、ありもしないタイトルを付けた作品は、大いに物議をかもし、その後、美術史の転換点となるエポックメイキング的作品となった。
『炸裂志』は炸裂というありもしない名前の市の市史を、作者の閻連科が引き受けた、というありもしない話から始まる。続いて、作品の要となる女性、朱頴の父親が、村中の人々に痰を吐かれ、その痰におぼれて死ぬ、という荒唐無稽なエピソードが展開する。
そこで、以前、中国人から聞いた話を思い出す。
「今の中国で起きている、ありえそうにない不条理で不合理なひどい話の数々は、おそらくすべて本当の出来事だ」という話だ。
もちろん、現実では、痰におぼれて死ぬことはありえないかもしれないが、でもそれと同じくらいひどくてやるせないことが、かつてないほどの勢いで発展し富んだこの巨大な国では起こり得る。
本書の巻末に収録された「中国の作家から村上春樹への返信」で、筆者は「現在の中国では、どんなことも起こり得る!」と書く。また「同時に心の中ではやるせない苦笑と涙を浮かべている」と述べる。『炸裂志』という作品の「水底」には、そんな筆者の心情が、静かに流れているように思う。
でも「水面」では、炸裂は、デフォルメされた欲と富と権力にまみれながら、村から鎮へ、さらには直轄市へとのぼりつめる。女たちの出稼ぎ売春で村に家が建ち、妓楼と娯楽エリアで外国投資がもたらされ、人口が増えていくその様は、「泉」と題された便器のようだ。
と、同時に、人々のあきれるほどのパワフルさと情念と毒気には、奇妙な魅力も感じる。
物語は、現実と非現実が錯綜し、それらすべてが、今の中国を形づくる「何か」のようでもある。そして、怒涛の如く展開する炸裂の物語に翻弄され、おぼれそうになりながら、最後に浮上したあとは、今の中国をどっぷり体感し、すっかり魂を抜かれた気がした。
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炸裂志 単行本 – 2016/11/26
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作家・閻連科は、炸裂市の歴史、売春婦と盗賊の年代記を綴り始める。発禁にも関わらず問題作を世に問うノーベル賞候補作家の大作。
- 本の長さ480ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2016/11/26
- 寸法14 x 3.8 x 19.8 cm
- ISBN-104309207219
- ISBN-13978-4309207216
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商品の説明
著者について
[閻連科]
1958年、中国河南省の貧しい農村に生まれる。20歳で解放軍に入隊。在軍中に河南大学と芸術学院を卒業。2004年に軍を離れ、作家生活に専念。『堅硬如水』で魯迅文学賞、『受活』で老舎文学賞を受賞。現代中国を代表する反体制派の作家。
[泉京鹿]
1971年東京生まれ。北京大学留学。翻訳家。訳書に、余華『兄弟』(2008)、郭敬明『悲しみは逆流して河になる』(11)、王躍文『紫禁城の月:大清相国清の宰相陳廷敬』(16)など多数。
1958年、中国河南省の貧しい農村に生まれる。20歳で解放軍に入隊。在軍中に河南大学と芸術学院を卒業。2004年に軍を離れ、作家生活に専念。『堅硬如水』で魯迅文学賞、『受活』で老舎文学賞を受賞。現代中国を代表する反体制派の作家。
[泉京鹿]
1971年東京生まれ。北京大学留学。翻訳家。訳書に、余華『兄弟』(2008)、郭敬明『悲しみは逆流して河になる』(11)、王躍文『紫禁城の月:大清相国清の宰相陳廷敬』(16)など多数。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2016/11/26)
- 発売日 : 2016/11/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 480ページ
- ISBN-10 : 4309207219
- ISBN-13 : 978-4309207216
- 寸法 : 14 x 3.8 x 19.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 732,228位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年6月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
非常不错的书,配送也比较快。
2017年3月5日に日本でレビュー済み
読み終わってから時間が経ちましたが、感想を書きました。
現代中国をよく現す超大作、丁寧で中身が濃くて、作者と翻訳者に大変敬意を現したいので
遅ればせながら感想を共有します。
ご興味ある方、ぜひご覧下さい。
炸裂志
閻連科作、泉京鹿訳
https://www.amazon.co.jp/炸裂志-閻-連科/dp/4309207219
【感想】炸裂志
作者のあとがきにあるこの言葉がずっしり心に刺さった。
「今日の中国は、まさに早馬に鞭を当てるようなやり方で、最短の時間で欧米の歴史の進度を追い越さんとしている。ここにおいて、あらゆるる規則とプロセスがは目標にとって代わられた。手段を選ばぬ近道が、発展、富裕、英雄と成功者の知恵及び出世への階段となった。権力と金が共謀して人々の魂をすり替えたことで、十四億の人口を擁するこの淳朴な地に時々起こるのは、みな驚愕することばかりで、どれだけ噛みしめても味わいが尽きることはない。
それは不条理で複雑で、混乱して無秩序で、あらゆる美醜、善悪、優劣、実在と虚無、価値あるもの及び無意味なもので、それをつなぎ合わせて起こっていることとその存在は、判定することも整理することもできない。人類の物事に対するあらゆる解釈は、そこでは、磁石が黄土高原の険しく切り立った台上の土地を前にして言葉もなく、力強い磁性と地場を持つようなものであり、海に落ちた隕石がもはや存在しないようなものである。」
自分がこの本を読んで中国らしいと思った場面はこの3つ。
・「我が孔家のもの」
その地域の長は社会に奉仕するものではなく、その土地の支配者になる。
これは、昔の役人がそこを支配するのと考え方が変わらない。
誰がどんな会社を経営するかの利権や、市民を軍隊に駆り出すなどのようなどんな条例も、市長が命令すれば即実行される。良くも悪くもその地域の発展はその支配者の器量次第であり、また、自分が繁栄できるかどうかはそことの関係如何であり、この構図は昔から今まで変わっておらず、変わっているとすれば、その支配者の選ばれ方だろうか。
・女と金でのし上がる 道徳の堕落
道徳の抑止力がなくなり発展のために手段を選ばないくなった、改革開放時期の中国らしい。「白い猫も黒い猫もネズミを取る猫はよい猫」とはよく言ったものだが、それを肯定する国民や社会でもあったのだろう。主人公の妻が父の仇を討つために外で成功して帰郷するが、裕福になった事業とは売春の商売であった。帰郷して同様の商売をするが、売春で裕福になり家も建て替えられたのよ、と人々の貞節を欲望で飲み込む。極めつけは、物語最後の政治操作である。以前福島香織さんの「現代中国悪女列伝」に出てきた大物政治家の女になることでのし上がった女達を思い出した。共有娼婦のような人もいたようで、政治と女性関係の権力闘争がお互いにに影響し合っていたらしい事を考えると、この物語の女性による政治操作も現実味がある。
・偏狭なナショナリズム
確かに欧米や日本は中国が強大になり自分たちが脅かされるのが怖いと思っているが、主人公の弟が大会社の大金を元に自分で軍隊を作り、敵国をやっつける訓練をし、しまいには市長の兄を脅して(部下は殺してしまい)市民全員を動員してしまう歯止めの利かない恐ろしさは、まさに中国政府が手を焼いている、暴動に発展しかねない国民のナショナリズムを連想させた。
中国のニュースや人々の話しようが、大陸と他の地域の華人と大きく違うと思わせるのが、植民地であった屈辱と、「老大」であるという態度、「老百姓」が声高にそれらを叫んでいることである。この国のナショナリズムはいったいどこに向かいどう影響するのだろうと思わせる。
PS
もちろん、これらばかりではなく、情に厚く多様性に溢れ、懐の広くエネルギーに満ちているが中国の良さでありおもしろさであり、大好きな人達にもたくさん会いました。
現代中国のありようを実にリアルに、そしてそれに至るまでの過程を生き生きと具体的に詳細に描いてくれた作者閻連科さんと、この長大な作品を丁寧に翻訳してくれた泉京鹿さんにどんなに現そうと思っても敬意を現しきれない。
自分は読書量が少なく、批評なんぞできる資格はないが、少なくとも自分が体験した中国の様子とぴったり合致し、現代に至る背景をありありと描いてくれて、非常に勉強になった。
物語としてとても奥深く、中国の現代史だけでなく、文章表現から中国の感性も感じ取れる貴重な作品だと思う。
断片的なニュースで触れる中国だけでなく、それに至る人々と社会の葛藤と発展を、この本を通して少しでも多くの日本人に知ってほしいと思った。
貴重な本を世に出してくれて、どうもありがとうございます。
現代中国をよく現す超大作、丁寧で中身が濃くて、作者と翻訳者に大変敬意を現したいので
遅ればせながら感想を共有します。
ご興味ある方、ぜひご覧下さい。
炸裂志
閻連科作、泉京鹿訳
https://www.amazon.co.jp/炸裂志-閻-連科/dp/4309207219
【感想】炸裂志
作者のあとがきにあるこの言葉がずっしり心に刺さった。
「今日の中国は、まさに早馬に鞭を当てるようなやり方で、最短の時間で欧米の歴史の進度を追い越さんとしている。ここにおいて、あらゆるる規則とプロセスがは目標にとって代わられた。手段を選ばぬ近道が、発展、富裕、英雄と成功者の知恵及び出世への階段となった。権力と金が共謀して人々の魂をすり替えたことで、十四億の人口を擁するこの淳朴な地に時々起こるのは、みな驚愕することばかりで、どれだけ噛みしめても味わいが尽きることはない。
それは不条理で複雑で、混乱して無秩序で、あらゆる美醜、善悪、優劣、実在と虚無、価値あるもの及び無意味なもので、それをつなぎ合わせて起こっていることとその存在は、判定することも整理することもできない。人類の物事に対するあらゆる解釈は、そこでは、磁石が黄土高原の険しく切り立った台上の土地を前にして言葉もなく、力強い磁性と地場を持つようなものであり、海に落ちた隕石がもはや存在しないようなものである。」
自分がこの本を読んで中国らしいと思った場面はこの3つ。
・「我が孔家のもの」
その地域の長は社会に奉仕するものではなく、その土地の支配者になる。
これは、昔の役人がそこを支配するのと考え方が変わらない。
誰がどんな会社を経営するかの利権や、市民を軍隊に駆り出すなどのようなどんな条例も、市長が命令すれば即実行される。良くも悪くもその地域の発展はその支配者の器量次第であり、また、自分が繁栄できるかどうかはそことの関係如何であり、この構図は昔から今まで変わっておらず、変わっているとすれば、その支配者の選ばれ方だろうか。
・女と金でのし上がる 道徳の堕落
道徳の抑止力がなくなり発展のために手段を選ばないくなった、改革開放時期の中国らしい。「白い猫も黒い猫もネズミを取る猫はよい猫」とはよく言ったものだが、それを肯定する国民や社会でもあったのだろう。主人公の妻が父の仇を討つために外で成功して帰郷するが、裕福になった事業とは売春の商売であった。帰郷して同様の商売をするが、売春で裕福になり家も建て替えられたのよ、と人々の貞節を欲望で飲み込む。極めつけは、物語最後の政治操作である。以前福島香織さんの「現代中国悪女列伝」に出てきた大物政治家の女になることでのし上がった女達を思い出した。共有娼婦のような人もいたようで、政治と女性関係の権力闘争がお互いにに影響し合っていたらしい事を考えると、この物語の女性による政治操作も現実味がある。
・偏狭なナショナリズム
確かに欧米や日本は中国が強大になり自分たちが脅かされるのが怖いと思っているが、主人公の弟が大会社の大金を元に自分で軍隊を作り、敵国をやっつける訓練をし、しまいには市長の兄を脅して(部下は殺してしまい)市民全員を動員してしまう歯止めの利かない恐ろしさは、まさに中国政府が手を焼いている、暴動に発展しかねない国民のナショナリズムを連想させた。
中国のニュースや人々の話しようが、大陸と他の地域の華人と大きく違うと思わせるのが、植民地であった屈辱と、「老大」であるという態度、「老百姓」が声高にそれらを叫んでいることである。この国のナショナリズムはいったいどこに向かいどう影響するのだろうと思わせる。
PS
もちろん、これらばかりではなく、情に厚く多様性に溢れ、懐の広くエネルギーに満ちているが中国の良さでありおもしろさであり、大好きな人達にもたくさん会いました。
現代中国のありようを実にリアルに、そしてそれに至るまでの過程を生き生きと具体的に詳細に描いてくれた作者閻連科さんと、この長大な作品を丁寧に翻訳してくれた泉京鹿さんにどんなに現そうと思っても敬意を現しきれない。
自分は読書量が少なく、批評なんぞできる資格はないが、少なくとも自分が体験した中国の様子とぴったり合致し、現代に至る背景をありありと描いてくれて、非常に勉強になった。
物語としてとても奥深く、中国の現代史だけでなく、文章表現から中国の感性も感じ取れる貴重な作品だと思う。
断片的なニュースで触れる中国だけでなく、それに至る人々と社会の葛藤と発展を、この本を通して少しでも多くの日本人に知ってほしいと思った。
貴重な本を世に出してくれて、どうもありがとうございます。
2017年1月30日に日本でレビュー済み
誰であれ中国人作家の書いた小説には文章の並べ方に独特の特徴があり、数ページ読んだだけでそれと分かってしまうという印象を私は昔から持っている。かの魯迅からしてそうで、金庸もそうだし、その他読んだけど名前を思い出せないたくさんの現代作家もそう。たとえ中国語以外の文章で書かれた作品でも、中国人作家が書いた文章には同じような特色があり、日本語で書いた邱永漢やヤン・イーは無論、フランス語で書いたシャン・サやカオシンチェンも同様に感じる。そしてなぜかはわからないが、こうした中国的表現は私が高校生の頃に夢中で読んだ史記列伝や三国志演義等の表現に通じているような気がする。
この作品も、現代中国が舞台なのに、しかもマジック・リアリズム的表現も多いのに、なんだか古典的な中国の悲喜劇を読んでいるような錯覚にとらわれる。神実主義というのも、もともとからして大げさな表現が多かった中国の古典文学にむしろ近いんじゃなかろうか。私はもともと中国人作家のオーバーな文章が大好きなので本書も十分堪能したが、大げさな表現や内容が好きではない人には勧めずらい小説だとは思いました。
この作品も、現代中国が舞台なのに、しかもマジック・リアリズム的表現も多いのに、なんだか古典的な中国の悲喜劇を読んでいるような錯覚にとらわれる。神実主義というのも、もともとからして大げさな表現が多かった中国の古典文学にむしろ近いんじゃなかろうか。私はもともと中国人作家のオーバーな文章が大好きなので本書も十分堪能したが、大げさな表現や内容が好きではない人には勧めずらい小説だとは思いました。
2016年12月30日に日本でレビュー済み
あまりの的確な物語の魅力に2日がかりで読み切った。
これまで語られることの少ない現代中国の歴史を人間の内面のメカニズムから見る「神実」主義を唱える筆者が描き出す。内陸の寒村が、盗賊行為で町になり、出稼ぎ売春で鎮になり、鉱山と軍隊式の建設業で省になり、アメリカ資本の産業化で市になり、血まみれの空港と地下鉄で直轄市になるまでを孔家と朱家の争いを交えて描き出す。リーマンショック後の金融危機のなか中国の財政出動から、世界の海の制覇を目指す「草原の海軍」を見ることから尖閣列島の中国からの見方をしる。
尖閣問題で反日激化の中で村上春樹の「安酒の酔いに似ている」という文章に、的確にコメントを寄せた知識人筆者による現代中国をしるのに必須の書であろう。
これまで語られることの少ない現代中国の歴史を人間の内面のメカニズムから見る「神実」主義を唱える筆者が描き出す。内陸の寒村が、盗賊行為で町になり、出稼ぎ売春で鎮になり、鉱山と軍隊式の建設業で省になり、アメリカ資本の産業化で市になり、血まみれの空港と地下鉄で直轄市になるまでを孔家と朱家の争いを交えて描き出す。リーマンショック後の金融危機のなか中国の財政出動から、世界の海の制覇を目指す「草原の海軍」を見ることから尖閣列島の中国からの見方をしる。
尖閣問題で反日激化の中で村上春樹の「安酒の酔いに似ている」という文章に、的確にコメントを寄せた知識人筆者による現代中国をしるのに必須の書であろう。
2017年4月23日に日本でレビュー済み
筆者は河南省出身の作家で、2014年カフカ賞受賞。あとがきを見ると、日本文学にも造詣が深い。
本書は中国では2013年出版。内容は既に優れたレビューがあるが、架空の村である炸裂の直轄市までの発展のダイナミズムと生き馬の目を抜く競争を描く。モデルはたぶん前半は深圳、後半は重慶を想起させる。
「現在の中国ではどんなことも起こり得る」ということと、「炸裂の発展のさなかで人々が失ったもの良心であった」という作者や訳者のあとがきも印象的。また、読後感として、中国社会が人を信用しない前提で成り立っているのに対し、日本社会は人を信用する前提なので、中国人観光客の多くが日本に来て安心感を得るのもそのためだろうとも感じた。
本書は中国では2013年出版。内容は既に優れたレビューがあるが、架空の村である炸裂の直轄市までの発展のダイナミズムと生き馬の目を抜く競争を描く。モデルはたぶん前半は深圳、後半は重慶を想起させる。
「現在の中国ではどんなことも起こり得る」ということと、「炸裂の発展のさなかで人々が失ったもの良心であった」という作者や訳者のあとがきも印象的。また、読後感として、中国社会が人を信用しない前提で成り立っているのに対し、日本社会は人を信用する前提なので、中国人観光客の多くが日本に来て安心感を得るのもそのためだろうとも感じた。