開発途上のしろいろの街を舞台に、少女の成長を描く作品。その中で語られる最も重大なポイントとして私が思いますのは、どのように自分らしく生きるか? という最も根源的で、少女の頭の中を常に悩ませている、誰にとっても難しい問題です。
作品は客観的にも主題が繰り返し登場するという美しい構成になっており、ひしひしと張り詰める、主人公およびその周りの人物を囲む環境が、主観的な心情にも非常な没入感を与えてくれ、私は途中で何度も読む手を休めながら、そして時に考えながら、偶然ではなく自然によって問題の増幅する世界を、大変面白く味わいました。
小説は仮のケースにおける心理実験のように思いますが、この作品は学生時代苦い経験をした人にとって、(あくまで私の感想ですが)希望の持てる軌道へと次元的に乗せてくれるような物語であると思います。
また箴言も多く、人間が何を考えているのかという洞察も与えてくれます。
このお話の進む先が本当に正しいのか、そもそも正しいとはなんなのかと考えれば、きっと人によるだろうし、正解はないのかもしれない、と思います。
ですがこの世の中、それと相似の結佳の体験する抑圧的で陰惨な世界で、それでも私たちが生きなければならないとなったとき、どんな思いを抱えるのか、何を見つけ出すことができるのか…、これから読まれる方のためにそこは曖昧にさせていただきますが、私は読んでよかったなとつよく思える作品でした。
人生のうちでも特に好きなお話の一つになりました。
あの日々から得たものであるから、それは強靭な、世界へさえも振り向けることのできる光になったのだと、もう少し先の未来でも感じているに違いありません。

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しろいろの街の、その骨の体温の 単行本 – 2012/9/20
村田 沙耶香
(著)
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クラスでは目立たない存在である小4の結佳。女の子同士の複雑な友達関係をやり過ごしながら、習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、次第に伊吹を「おもちゃ」にしたいという気持ちが強まり、ある日、結佳は伊吹にキスをする。恋愛とも支配ともつかない関係を続けながら彼らは中学生へと進級するが――野間文芸新人賞受賞、少女の「性」や「欲望」を描くことで評価の高い作家が描く、女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、静かな衝撃作。
- 本の長さ272ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2012/9/20
- ISBN-104022510110
- ISBN-13978-4022510112
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- 出版社 : 朝日新聞出版 (2012/9/20)
- 発売日 : 2012/9/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 272ページ
- ISBN-10 : 4022510110
- ISBN-13 : 978-4022510112
- Amazon 売れ筋ランキング: - 474,952位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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村田 沙耶香
(むらた・さやか)
1979年、千葉県生まれ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003年、『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。2009年、『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年、『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年、『コンビニ人間』で芥川賞受賞。同作は累計発行部数100万部を突破した。その他の著書に『マウス』『星が吸う水』『タダイマトビラ』『地球星人』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』などがある。
イメージ付きのレビュー

4 星
まるで亡霊怪獣シーボーズ、異常なタイトルが内容と現代を象徴化
まず、こういうタイトルを付けようとする、神経の普通じゃないところに着目して欲しい。 仲間内たちから、“クレイジー沙耶香”と呼ばれているのは、流石、伊達じゃない。 大江健三郎は自らの文学的課題を、“日本語の可能性を突き詰める実験”と称したが、それに近いものがありそうと書けば、褒め過ぎだろうけど。 大手デヴェロッパーが開発を手懸けて癌細胞のように増殖、ある通過点から嘘みたいに停滞する新興住宅地を舞台とし、社会的動物である人間の子供たちがお互いに探り合うような過酷なマウンティングを行う。 無機的な街と有機的なヒト族の成長と頭打ち、街の基調色彩“シロ”が巨大な外骨格動物の“ホネ”のようであり、その中に寄生して暮らし、常に外から侵入して来る微生物のような移住者たちを警戒しながら共存する住民、その複雑で捻じくれた関係が、少女の性と変調を通して不気味に描かれるという、まさに表題を反映した内容。 餓鬼大将及び幹部数名と家来たちが男子小中学生のシンプルなヒエラルキーなら、それと似て実は微妙に異なる少女同士の陰険、かつ凄まじくどろどろした確執と権謀術数、天真爛漫で無害な“幸せさん”男の子を自分の玩具にする設定なんか辟易させらるが、居心地の悪さを突き付けて退屈な日常に罅を入れる、何かを深く考えさせる純文学の役割を果たそうとする意気込みとも受け取れる。 村田さんの中では良質な部類であると思えるものの、問題作『変半身』は未だに首を捻らざるを得ず、こちら側の読み込みが足りないんだろうなあ。
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2023年8月9日に日本でレビュー済み
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2023年6月6日に日本でレビュー済み
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とても丁寧に丁寧に文章が書かれている。
読んだ後の余韻が楽しめたのも良かった。
是非、何度も読み返したくなる。
読んだ後の余韻が楽しめたのも良かった。
是非、何度も読み返したくなる。
2022年3月5日に日本でレビュー済み
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Eテレでの紹介ドラマが熱演で購入しました。
スクールカーストは、生徒に価格がつけられた閉鎖社会です。親がPTA会長、車はレクサス、運動ができる、イケメンである、そんなタグ(値札)がつけられた法治外の社会です。
小説で、女子中学生は香水をつけたり、リップを塗ったりして自らの価格を高めようとします。上位カーストの怒りを買って、カーストを降格させられることもあります。まるで動物のドキュメンタリー番組ですね。
この白くて乾いた人口の街の中で、主人公由佳は辛酸を味わいます。そして、どのカーストとも溶け込めるまれな存在伊吹とのセックスを通して、ついに自らの視座を獲得します。Le ClezioのLullabyを思わせるBildungsromanです。伊吹は由佳から繰り返し性的な執着を受けます。男子中学生ですから、深沢七郎の喜びの表現のように、ザーメンがザァーザァー流れたことでしょう。
ところでフランスを旅すると皆、地味な服を着ているのに驚きます。個人が自分に自信を持ってるからだそうです。服などに頼る必要はない、逆に頼ると子ども扱いされるそうです。日本とは真逆です。由佳が伊吹を通して獲得した視座はこのような考えであるのかもしれません。
私はITの仕事をします。機械学習など学ぶと資料はxml/jsonにしちゃえ、パワポ禁止と、Jeff Bezosのようなことを考えます。タグ付けされた社会はアニメ、東のエデンのように便利かもしれません。しかし、価値(value)を1個の平均値に落とし込むのではなく、分散や特異な評価も見れるテクノロジーでないと困りますね。
スクールカーストは、生徒に価格がつけられた閉鎖社会です。親がPTA会長、車はレクサス、運動ができる、イケメンである、そんなタグ(値札)がつけられた法治外の社会です。
小説で、女子中学生は香水をつけたり、リップを塗ったりして自らの価格を高めようとします。上位カーストの怒りを買って、カーストを降格させられることもあります。まるで動物のドキュメンタリー番組ですね。
この白くて乾いた人口の街の中で、主人公由佳は辛酸を味わいます。そして、どのカーストとも溶け込めるまれな存在伊吹とのセックスを通して、ついに自らの視座を獲得します。Le ClezioのLullabyを思わせるBildungsromanです。伊吹は由佳から繰り返し性的な執着を受けます。男子中学生ですから、深沢七郎の喜びの表現のように、ザーメンがザァーザァー流れたことでしょう。
ところでフランスを旅すると皆、地味な服を着ているのに驚きます。個人が自分に自信を持ってるからだそうです。服などに頼る必要はない、逆に頼ると子ども扱いされるそうです。日本とは真逆です。由佳が伊吹を通して獲得した視座はこのような考えであるのかもしれません。
私はITの仕事をします。機械学習など学ぶと資料はxml/jsonにしちゃえ、パワポ禁止と、Jeff Bezosのようなことを考えます。タグ付けされた社会はアニメ、東のエデンのように便利かもしれません。しかし、価値(value)を1個の平均値に落とし込むのではなく、分散や特異な評価も見れるテクノロジーでないと困りますね。
2022年10月22日に日本でレビュー済み
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死んだニュータウンで繰り返される、誰もが通る中学校の世界。誰かが上で、誰かは下で、目に見えない人間関係にしばられていく。
群れから離れないようという女の子のdnaに従いながらも、違和感はずっとある。上の者からの命令は絶対で、守らなければ今度は自分が標的となる。
同じ毎日、ずっと同じ風景。季節だけが流れていく。どこにも出口はないように見える。
でも、結佳は自分の中に希望を見いだす。落とされたことにより、価値観の転換、視線の放棄、あらゆる呪縛の解放が起きて、ただ自分の愛する人に想いを伝えることだけから逃げなくなる。
本当に大事なことをしない人たちは、まだあの教室で生徒ごっこを延々と続けている。私はそこにはもういない。
そして、希望はある。私の隣にいる人の手をもう離さない。
群れから離れないようという女の子のdnaに従いながらも、違和感はずっとある。上の者からの命令は絶対で、守らなければ今度は自分が標的となる。
同じ毎日、ずっと同じ風景。季節だけが流れていく。どこにも出口はないように見える。
でも、結佳は自分の中に希望を見いだす。落とされたことにより、価値観の転換、視線の放棄、あらゆる呪縛の解放が起きて、ただ自分の愛する人に想いを伝えることだけから逃げなくなる。
本当に大事なことをしない人たちは、まだあの教室で生徒ごっこを延々と続けている。私はそこにはもういない。
そして、希望はある。私の隣にいる人の手をもう離さない。
2021年6月2日に日本でレビュー済み
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素晴らしい小説だった。小学生から中学生の間での女子の身体・精神的な成長を、思春期を通してきわめて内省的に描いている成長物語。彼女は、彼女が住む街の発展に並行して成長し、その内容は彼女の個性的な視点のみで描いていて、体内と外の環境の変化に対する敏感さを豊かな比喩で表現している。こうして、読み手は彼女のことを少しずつ知りつつ物語がゆっくり進んでいく。
主人公の女の子の思春期に伴う違和感や悩みには、習字教室が一緒の伊吹くんと仲良くなってからは、歪んだ「愛」の気持ちが加わる。村田さんの圧倒的な筆力に驚いて、2人の色んなシーンはほとんどシュールに感じた。
スクールカーストの描写もあり、登場人物たちの心情を生々しく描いていて、それを読むのが時々辛かったものの、パワフルに描いたに違いない。現代でも同じようなことに苦しみを抱いている子たちがたくさんいることを思い出させた作品。
私たち人間が作った「社会的価値観」と、それらに従っている私たちのこと(知らないうちに従っているときもある)についても、本書では触れる。この小説の場合は、それを「教室内のヒエラルキー」という舞台で描写している。同じ作家による「コンビニ人間」でも似たような話題には触れたが、「しろいろの街」の方が登場人物たちが持つそれぞれの価値観や心情を上手に描写していると思う。なぜなら「しろいろの街」は、ビビッドに描いた登場人物たちの過去や友情関係をベースに描いているし、主人公の女の子の心理も丹念に描いているからだと思う。
逆に本の好きじゃなかったところと言えば、主人公はもう少しだけ前向きになったらいいな、と思った。
主人公の女の子の思春期に伴う違和感や悩みには、習字教室が一緒の伊吹くんと仲良くなってからは、歪んだ「愛」の気持ちが加わる。村田さんの圧倒的な筆力に驚いて、2人の色んなシーンはほとんどシュールに感じた。
スクールカーストの描写もあり、登場人物たちの心情を生々しく描いていて、それを読むのが時々辛かったものの、パワフルに描いたに違いない。現代でも同じようなことに苦しみを抱いている子たちがたくさんいることを思い出させた作品。
私たち人間が作った「社会的価値観」と、それらに従っている私たちのこと(知らないうちに従っているときもある)についても、本書では触れる。この小説の場合は、それを「教室内のヒエラルキー」という舞台で描写している。同じ作家による「コンビニ人間」でも似たような話題には触れたが、「しろいろの街」の方が登場人物たちが持つそれぞれの価値観や心情を上手に描写していると思う。なぜなら「しろいろの街」は、ビビッドに描いた登場人物たちの過去や友情関係をベースに描いているし、主人公の女の子の心理も丹念に描いているからだと思う。
逆に本の好きじゃなかったところと言えば、主人公はもう少しだけ前向きになったらいいな、と思った。
2022年10月12日に日本でレビュー済み
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かつて大嫌いな場所で、ありのままの自分でいられない10代の日々を過ごしたことがある人なら、主人公の姿に自分を重ねて、その頃の自分を記憶の墓場から掘り出して、熱く抱き寄せたり平手打ちしたりしたあと、もう一度受け止めることができるようになれる、そんなきっかけをくれる本だと思います。すっきり浄化される読後感でした。
2022年2月26日に日本でレビュー済み
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大人社会は、きらいきらいは嫌いでしかなく、素直さは知性の足りなさ、正しさは悪ともなりかねません。その昔の発情が懐かしく恋しくもあります。