「東京一極集中」に対するアンチテーゼのビジネスはたくさんありますが、
近年でこれだけ鮮やかに成功を遂げたモデルはないんじゃないでしょうか。
新潟という一地方都市から始まったフリーペーパー「美少女図鑑」シリーズです。
本書はその生みの親、近藤大輔さんが振り返る美少女図鑑の誕生・成長のストーリーです。
いまや美少女図鑑シリーズはほぼ全国の地方都市で出版されています。
僕も初めて「美少女図鑑」図鑑を手にとった時、フリーペーパーらしからぬクオリティに驚きました。
何より女の子が本当に綺麗にかわいく掲載されていて。そこにはいくつものこだわりがあるようです。
たとえば表紙を開いた１ページ目(表２)には広告を載せない。これだけで既存の雑誌などとは雰囲気が変わります。
デザインやヘアメイクなど製作はそれぞれの地方のスタッフが担当。やっぱり土地土地の空気感がありますよね。
広告収入や注目が計算できる「東京美少女図鑑」は作らない。あくまで対東京の立ち位置で。
こうしたこれまでの常識にとらわれないやり方には、実際のところ広告代理店などから批判もあるようですが、
曲げずに進んできてしかもビジネスとして成り立っているのだからすごい。
近藤さんも言っていますが、美少女図鑑自体は特に儲かるビジネスモデルではなさそうです。
そこから生み出される価値観や人間関係がもしかしたら新しいビジネスを作り出すかもしれない。
美少女図鑑とは地方発のビジネスを離陸させるためのプラットフォーム、そう読み取りました。
常識にとらわれない手法には蹉跌もつきものです。
この本にもかなり大変そうな近藤社長の「混迷期」がちゃんと書かれています。
実際のところ、近藤さんはそれほどスマートな経営者ではないかもしれません。
ですが「地方を良くしたい」「美少女図鑑を成長させたい」という熱意が尋常じゃありません。
目先の利益に惑わされず長期目標を置いて、美少女図鑑を「クラシック化」させるという戦略や、
各地の発行元とライセンス契約で結ぶ、緩やかな輪のようなネットワークの作り方は、
これから「東京以外」が活躍する(しなきゃいけない！)ためのヒントが多分に含まれています。
地方だから東京にはかなわない、というのはまったくナンセンス。
「東京以外にはかわいい女の子はいない」なんてふざけたこと言ってるのと一緒です！
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