日本では秀吉が大家族の禁を発していて、中国ですら「四世同堂」は有産階級の象徴で一部にしか実現しておらず、戦後の日本で問題となるのは、オジオバとオイメイ、イトコ同士の交際と相互扶助の減少であり、これが一般に大家族の崩壊と受けとられていた、という指摘は新鮮でした(p.39)。個人的なことを言えば、ぼくは核となる家族にはあまり恵まれませんでしたが、祖母やオバ、イトコたちには恵まれていて、それでプラス・マイナスゼロだったのかもしれません。秀吉の大家族の禁は、旧家での本家と分家の分離はだいたい七~八代から十数代前に起こっていることからもわかる、というのもなるほどな、と(p.68)。戦前は戸籍上は大家族だったから、核家族は戦後のことだと思われている、と(p.105)。
ニューギニアなどの大家族では子供ができると母親が「これが父親」と指名した人がその子の父親になる、という話は、吉本隆明さんも日本の夜這い文化というかか若衆組みたいな中で語っていたと思いますが、それより、ニューギニアでも神聖な場所に使える巫女は処女でなければならないけど、中には子持ちの巫女もいて、それは社会が公認したら処女ということなんだ、という話も面白かった(p.79)。これなんかは、マリア伝説の古い構造を表しているかもしれないとか考えました。
神経性食思不振症の人は、思春期に入った後も、友人宅で晩ご飯をよばれたことがない人が多い、というのもすごい話だな、と。こう考えると、いろいろ食べさせてくれた中学生時代の友人のお母さんに感謝するとともに、ぼくはかなり恵まれていたのかな、なんて考えてしまいます。家に客が来なくなったことは、もっと注目すべきで、その分、子どもの人間体験は限られているというあたりは考えさせられましたね(p.110)。
人間は三十歳を過ぎると解体を起こしにくくなる代りに、根本的変化も起こりにくい、というのもなるほどな、と。笠原嘉先生は、絶望している患者にとにかく、三十まで生きてみなさい、あなたの中で何かが変わり何かしら生きやすくなるから、と助言するそうです(p.138-)。
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「つながり」の精神病理 中井久夫コレクション (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2011/6/10
中井 久夫
(著)
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人生前半の課題は挑戦であり、
後半の課題は別離である。
敗戦から高度成長を経てバブル崩壊へと続いた社会変動は、日本人のライフサイクルを激変させた。それは、「常識が考えるよりもはるかに複雑で奥行きと広がりがあり、また生ぐさいものである」人間のつながりに、どのような歪みを生じさせたのだろうか。生きていく上で避けられない関係としての家族(「家族の表象」「家族の臨床」)や、無視し得ない社会問題となりつつあった老いについて検討する(「老人の治療についてのノート」「世に棲む老い人」)と同時に精神科医としての構えを自らの体験に即して綴った作品(「精神科医の弁明」「治療文化と精神科医」)を収める。
解説=春日武彦
【目次】
I
家族の表象―家族とかかわる者より
家族の臨床
日本の家族と精神医療
II
フクちゃんとサザエさん
漫画「ドラえもん」について
「つながり」の精神病理―対人相互作用のさまざま
大学生の精神保健をめぐって
現代中年論
老人の治療についてのノート
老年期認知症の精神病理をめぐって
老人を襲うストレッサー防衛への援助法
世に棲む老い人
精神健康の基準について
III
治療文化と精神科医
精神科医の「弁明」―社会変動と精神科の病を論じて国際化の心理的帰結に至ろうとする
反螺線論
精神科への持参金
一人の精神科医の“自然的"限界
医学の修練について―雑記帳より
あとがき
解説 棋譜と言葉 春日武彦
後半の課題は別離である。
敗戦から高度成長を経てバブル崩壊へと続いた社会変動は、日本人のライフサイクルを激変させた。それは、「常識が考えるよりもはるかに複雑で奥行きと広がりがあり、また生ぐさいものである」人間のつながりに、どのような歪みを生じさせたのだろうか。生きていく上で避けられない関係としての家族(「家族の表象」「家族の臨床」)や、無視し得ない社会問題となりつつあった老いについて検討する(「老人の治療についてのノート」「世に棲む老い人」)と同時に精神科医としての構えを自らの体験に即して綴った作品(「精神科医の弁明」「治療文化と精神科医」)を収める。
解説=春日武彦
【目次】
I
家族の表象―家族とかかわる者より
家族の臨床
日本の家族と精神医療
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フクちゃんとサザエさん
漫画「ドラえもん」について
「つながり」の精神病理―対人相互作用のさまざま
大学生の精神保健をめぐって
現代中年論
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老年期認知症の精神病理をめぐって
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反螺線論
精神科への持参金
一人の精神科医の“自然的"限界
医学の修練について―雑記帳より
あとがき
解説 棋譜と言葉 春日武彦
- 本の長さ339ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2011/6/10
- 寸法10.8 x 1.4 x 14.8 cm
- ISBN-104480093621
- ISBN-13978-4480093622
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価格 | ¥1,430¥1,430 | ¥1,540¥1,540 | ¥1,540¥1,540 | ¥1,540¥1,540 |
内容紹介 | アルコール症、妄想症、境界例など「身近な」病を腑分けし、社会の中の病者と治療者との微妙な関わりを豊かな比喩を交えて描き出す。【解説:岩井圭司】 | 表題作の他「教育と精神衛生」などに加えて、豊かな視野と優れた洞察を物語る「サラリーマン労働」「病跡学と時代精神」などを収める。【解説:滝川一廣】 | 精神が解体の危機に瀕した時、それを食い止めるのが妄想である。解体か、分裂か。その時、精神はよりましな方として分裂を選ぶ。【解説:江口重幸】 | 精神医学関連書籍の解説、『みすず』等に掲載の年間読書アンケート等とともに、大きな影響を受けたヴァレリーに関する論考を収める。【解説:松田浩則】 |
商品の説明
著者について
中井久夫
1934年、奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授
1934年、奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2011/6/10)
- 発売日 : 2011/6/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 339ページ
- ISBN-10 : 4480093621
- ISBN-13 : 978-4480093622
- 寸法 : 10.8 x 1.4 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 80,303位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 242位ちくま学芸文庫
- - 3,537位医学・薬学・看護学・歯科学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1934年生まれ。1959年、京都大学医学部卒業。はじめウイルス研究者。東大分院において精神科医となる。神戸大学名誉教授。1985年、芸術療法学会賞、1989年、読売文学賞(翻訳研究賞)、1991年、ギリシャ国文学翻訳賞、1996年、毎日出版文化賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 ヴァレリー詩集 コロナ/コロニラ (ISBN-13: 978-4622075455 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年11月9日に日本でレビュー済み
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2014年5月5日に日本でレビュー済み
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医師が文章を綴るのは、鴎外をはじめとして数多いが意外と文章が拙く、意余りて力足らずという作家が多い。某作家のようにフォニー論争なるものに巻き込まれた方もいる。もちろん後年氏の一冊を拝読したが御気の毒な気持ちになったのは記憶に新しい。しかしそのような事があってもあまり違和感はなかった。しかし中井氏はさすがではある。やはり翻訳家、一流の医師というものは努力だけでなれるものではない。幼少時よりの教育や環境、そしてとりわけ天分がもっとも重要な因子であろう。簡単に言えば天才のみが示しうる力なのだろう。例えば福田和也先生の批評のように天才のみを高評価するというのは極めて理にかなった仕事なのだとあらためて思った。
2018年6月3日に日本でレビュー済み
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中井先生のお話は、
緩やかに心に届きます。
何度も何度も考えるチャンスを
頂けるようです。
私はまだまだです(笑)
緩やかに心に届きます。
何度も何度も考えるチャンスを
頂けるようです。
私はまだまだです(笑)
2012年11月23日に日本でレビュー済み
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蛍光ペンを片手に持って本を読む私ですが、中井久夫さんの著作は読み終えるとほとんどのページが傍線だらけになります。
当然精神病に関することが多く書かれているわけですが、そちらの方面に興味がなかったとしても著者の流麗な文章に埋もれるだけでも充分に満足できると思います。
精神に関することを書かれながらも他のことにも応用可能な汎用性の高い洞察も多く書かれているので「読んで為になる」本でもあります。
一般向けに書かれたエッセイも含まれているので難しい専門用語もさほど多くありません。
本書では、サザエさんやドラえもんを題材に児童期について書かれたエッセイから「普通の職業」だったサラリーマンについて、老年期の認知症やストレス問題などに関する文章が収録されています。
書かれたのがニ十年前、三十年前のものも多いので場合によってはピンと来ないものもあるかと思いますが、それ以上に今でも充分に通用する射程の長い考察が多いので読んでおいて損はないでしょう。
時折描かれる中井久夫さん本人の人生や自伝的要素もファンには面白いかと思います。
当然精神病に関することが多く書かれているわけですが、そちらの方面に興味がなかったとしても著者の流麗な文章に埋もれるだけでも充分に満足できると思います。
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書かれたのがニ十年前、三十年前のものも多いので場合によってはピンと来ないものもあるかと思いますが、それ以上に今でも充分に通用する射程の長い考察が多いので読んでおいて損はないでしょう。
時折描かれる中井久夫さん本人の人生や自伝的要素もファンには面白いかと思います。