本書の内容は多岐にわたるのですが、私は、「知」「考える」「わかる」とはどういうことかへの考察として読みました。デカルトの「わかる」、親鸞の「わかる」。「わかる」ということの欺瞞、嘘。その欺瞞と、原発・原子力村の関係。
安冨さんの著書では「東大話法」が注目を集めていますが、原発事故を受けて、「どうしてこうなっちゃったの?」を考えたい人には、本書もまた大変示唆に富んでいると思います。また、人間はどうしてこんなことをしてしまうのだろうという深い問いかけにも、考えるヒントをくれます。この本を多くの方に読んでもらいたいと思いました。
まとめるのは難しいので私が面白いと思ったことを挙げてみます。
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・自然が考えている
「身体は紛れもなく自然の一部ですから、考えるということは、自然が身体を通じて自分に教えてくれているということにほかならない。」(引用)という指摘は、当たり前のようで、忘れがちな面白い事実です。「(知識が、)自然の力から与えられたものであるにもかかわらず、」(引用)自分の力で客観的に思考して得られたものであると思い込むことによって「知」に欺瞞やゆがみが生じる、ということが語られています。
・自力作善
自力作善という考え方について語られています。私は以下のように受け止めました。
善いことをしようとして、自分のため、他人のため、世の中のために一生懸命がんばっても、私が考える「善」が本当に「善」であるとは限らない。私が「善」だと思い込んでいるだけかもしれないし、みんなが「善」と思い込んでいるだけかもしれない。
何が「善」なのか、何をするのが正しいのか、わからないのは仕方ない。人間にはわからないということを認めないといけない。
それは諦めて何もしないということではなくて、わからないことを認めた上でそれでも考える、ということ。
わかったと思っても、すべてわかった気にならないこと。決めつけないこと。考え続けること。
・「愚」という概念
「愚」というのはバカということではないようです。
「わかった(完了!)」を否定すること。
「わかる」に終わりはない、という開かれた態度のこと。
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本当は「愚」と「業縁」が重要なテーマだと思うのですが、私の持っている言葉では上手く説明できません。ただ、こむずかしい抽象的なことが書いてあるわけではなく、人間の生という、誰にとっても具体的なテーマです。仏教用語がいろいろ登場しますが、いわゆる「宗教くさい」内容ではありません。

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今を生きる親鸞 単行本 – 2011/12/1
- 本の長さ200ページ
- 言語日本語
- 出版社樹心社
- 発売日2011/12/1
- ISBN-104434162438
- ISBN-13978-4434162435
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登録情報
- 出版社 : 樹心社 (2011/12/1)
- 発売日 : 2011/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 200ページ
- ISBN-10 : 4434162438
- ISBN-13 : 978-4434162435
- Amazon 売れ筋ランキング: - 701,893位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2012年9月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年1月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
親鸞についての著作が近年、たくさん出版されてますが、本書は、現代資本主義で生きる我々にとっての親鸞という意味で極めて示唆的です。
「なんか生きづらいなあ」っと閉塞感を感じることの多いこの昨今。
こんな我々の日常感覚と親鸞とを結びつけるという意味で、一連の親鸞本と比較すると、本書の意義はそこにあるかと思います。
加えて、スピノザと親鸞とにある共通性という視点も、極めて斬新です。
「なんか生きづらいなあ」っと閉塞感を感じることの多いこの昨今。
こんな我々の日常感覚と親鸞とを結びつけるという意味で、一連の親鸞本と比較すると、本書の意義はそこにあるかと思います。
加えて、スピノザと親鸞とにある共通性という視点も、極めて斬新です。
2020年1月6日に日本でレビュー済み
梱包が非常に丁寧で、商品も思ったより綺麗でした。
ありがとうございました。
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