食以外の娯楽が尽く廃れた、そう遠くない未来。
料理人こそが権威とされるロサンゼルスでは
権力者や金持ちが皆グルメに群がっていた。
その中心街から離れた下町にスシバーを構える
謎の日本人・ジローは並外れた技量と同時に、
マナーを知らない客の首を容赦なく刎ねる
独自の美学と冷徹さをも持ち合わせていた。
やがてその噂はロスを二分するシェフ、ボブと
ローズの耳にも入り、抗争に終止符を打つ
切り札として彼を利用する算段を立て始める…
「アンソニー世界を喰らう」で知られる
シェフで作家でジャーナリストのアンソニー・
ボーデインがライターを務めた本作品は、
風来坊が二大勢力の抗争に巻き込まれるという
「用心棒」的舞台設定に、サイバーパンク的
カウンター思想や近未来のポストモダン的
世界観をけれん味たっぷりにまぶし、一風
変わったコミックへと仕立て上げています。
何も知らんIT野郎がドヤ顔でカリフォルニア・
ロールをオーダーした途端憤怒の形相となり
包丁で介錯を行う主人公・ジローという序盤の
掴みはともすれば日本人の目からナンセンスの
極地にも映りかねないのですが、その一方で
一流レストランの高級食材にもスラムの屋台の
ジャンクフードにも変わらぬ満面の笑顔で舌鼓を
打つジローの姿からは、日本食を代表とした
全ての「食」に対するトリビュートこそ一連の
作品を通じて一番描きたかったことなのだろう
という、作者の真摯な想いが伝わってきます。
それは「バランス」の話にも転じ、資本主義の
マフィアもどきなボブ一味はサプリ信奉者で、
共産主義のヒッピーくずれなローズ一家は
ビーガンだったり、富裕層が薬や菜食で
スマートな体型を維持できるのに対し、
貧困層はチェーン店のハンバーガーで常に
肥え太っているなどといった、時には極端
かつ露悪的な描写によって、行き過ぎた
行為の悪徳と選択の重要性を説いています。
加えて言うなれば、そもそもが我々の生きる
現実にあっても飽食の時代に対する危惧や
過剰なまでの健康志向は年々高まりつつあり、
然して本能に基づく「食の楽しみ」そのものを
否定することは決してできないジレンマに対し、
料理人は人々に一体何がしてあげられるのだろう
という、作者のストイックな姿勢とそう生きる
ことの難しさすら滲み出ているようでもあります。
あれこれ書き連ねてはみたものの、あくまで
そうした深読みもできる趣があるからこそ作品に
一定の重さや安定感が生まれているという話で
あって、謎の日本人が刺身包丁片手にチンピラどもを
血祭りに上げていく非常にお馬鹿な内容をガハハと
笑い飛ばしても、結局何も問題はなかったりします。
後半に収録されている「ブラッド&スシ」編も
ヤクザ組織を背景にジローの秘められた過去を
描くということで、どちらかと言うと設定補完も
兼ねたパルプでマンガマンガしたエピソードと
なっているのですが、これによってもう一度
最初から読み直したくなる気分になるのも確か。
値段に見合ったブ厚さで読み応えがある反面、
購入に踏み切るハードルの高さはあると思いますが、
何もタイツヒーローがバトルするだけがアメコミで
なければ面倒な予備知識も一切必要なし!なので、
表紙やあらすじのバカっぽさに惹かれた方は是非
勇気ある一歩を踏み出していただきたいところ!

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GET JIRO! (G-NOVELS) 単行本 – 2017/2/17
【極太巻きの朗報】
日本よ、これがゲットジローだ!
手に寿司握るマグロ解体級のイカれグラフィックノベル『GET JIRO!』が満を持しての邦訳化!!
カリフォルニアロールなんぞ注文するヤツぁぁぁ!――自慢の刺身包丁で客・即・斬のバトル寿司職人、
我らがジロー大将が遂に日本上陸!!!
血湧き寿司踊る異色のバイオレンスグルメコミックを生み出したのは、
ベストセラー作家で人気料理&旅番組『アンソニー世界を喰らう』でも有名なアンソニー・ボーデイン。
ラングドン・フォス、アレ・ガルザによるダイナミックなアートも加わって、
食文化と社会を風刺したクレイジーな新食感スタイリッシュ・コメディが誕生した。
血と寿司にまみれたジローの悲しくも美しい前日譚【Blood and Sushi/邦題『血と寿司』】も同時収録の豪華二本立て。
【GET JIRO! 本編】 JIROを制す(GET)ものが、食(世界)を制す(GET)!
それほど遠くない未来のロサンゼルス――この街ではシェフたちが
犯罪組織のボスのように君臨し、人気レストランの席をめぐって人々は殺し合い、
今まさに血まみれの料理戦争が勃発しようとしていた。
街を二分する組織の一方は、世界中の食を融合させてエキゾチックなテイストを作るボブ率いるインターナショナル派。
もう一方は、ローズ率いる有機野菜を使った健康食のみを提供する菜食主義派。
そしてこの大混乱の最中に登場したのが、我らがジロー大将その人だ。
カリフォルニアロールを注文し醤油にワサビを入れてかき混ぜる無謀な客の首を刎ねることで知られた一匹狼の非情な寿司職人だ。
両陣営はジローを仲間に加えようとするが、彼には別の考えがあった。
この仁義なきグルメバトルで生き残るシェフは誰だ!?
【Blood and Sushi/邦題『血と寿司』】 血と寿司にまみれたジロー大将の過去を描く悲しくも美しい復讐劇
それほど遠くない未来より少し過去の東京――大きな勢力を持つ暴力団組織の組長の息子として生まれたジローの心は、
組を継がせたいという父親の想いと寿司職人を極めたいという自らの望みの間で揺れ動いていた。
ジローが組織のために働くことを躊躇うなか、組織は東京の地下で動きを活発化させ、
兄のイチゴは喜んで汚れ仕事に手を染めているのだった…
日本よ、これがゲットジローだ!
手に寿司握るマグロ解体級のイカれグラフィックノベル『GET JIRO!』が満を持しての邦訳化!!
カリフォルニアロールなんぞ注文するヤツぁぁぁ!――自慢の刺身包丁で客・即・斬のバトル寿司職人、
我らがジロー大将が遂に日本上陸!!!
血湧き寿司踊る異色のバイオレンスグルメコミックを生み出したのは、
ベストセラー作家で人気料理&旅番組『アンソニー世界を喰らう』でも有名なアンソニー・ボーデイン。
ラングドン・フォス、アレ・ガルザによるダイナミックなアートも加わって、
食文化と社会を風刺したクレイジーな新食感スタイリッシュ・コメディが誕生した。
血と寿司にまみれたジローの悲しくも美しい前日譚【Blood and Sushi/邦題『血と寿司』】も同時収録の豪華二本立て。
【GET JIRO! 本編】 JIROを制す(GET)ものが、食(世界)を制す(GET)!
それほど遠くない未来のロサンゼルス――この街ではシェフたちが
犯罪組織のボスのように君臨し、人気レストランの席をめぐって人々は殺し合い、
今まさに血まみれの料理戦争が勃発しようとしていた。
街を二分する組織の一方は、世界中の食を融合させてエキゾチックなテイストを作るボブ率いるインターナショナル派。
もう一方は、ローズ率いる有機野菜を使った健康食のみを提供する菜食主義派。
そしてこの大混乱の最中に登場したのが、我らがジロー大将その人だ。
カリフォルニアロールを注文し醤油にワサビを入れてかき混ぜる無謀な客の首を刎ねることで知られた一匹狼の非情な寿司職人だ。
両陣営はジローを仲間に加えようとするが、彼には別の考えがあった。
この仁義なきグルメバトルで生き残るシェフは誰だ!?
【Blood and Sushi/邦題『血と寿司』】 血と寿司にまみれたジロー大将の過去を描く悲しくも美しい復讐劇
それほど遠くない未来より少し過去の東京――大きな勢力を持つ暴力団組織の組長の息子として生まれたジローの心は、
組を継がせたいという父親の想いと寿司職人を極めたいという自らの望みの間で揺れ動いていた。
ジローが組織のために働くことを躊躇うなか、組織は東京の地下で動きを活発化させ、
兄のイチゴは喜んで汚れ仕事に手を染めているのだった…
- 本の長さ312ページ
- 言語日本語
- 出版社誠文堂新光社
- 発売日2017/2/17
- ISBN-104416517009
- ISBN-13978-4416517000
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商品の説明
著者について
(作)アンソニー・ボーデイン: 米国ニュージャージー州生まれのシェフ、作家、ジャーナリスト、番組司会者。 一流レストランの料理長を何年もつとめ、料理業界の裏側を描いたノンフィクション 『キッチン・コンフィデンシャル』が大ヒットしたほか、 料理業界を舞台としたミステリー小説も執筆している。 世界各地に赴き現地の料理を紹介するTV番組 『アンソニー世界を喰らう』も人気を博し、エミー賞を受賞。
(作)ジョエル・ローズ
(画)アレ・ガルザ
(カラー)ホセ・ヴィラールビア
(画)ラングドン・フォス
(作)ジョエル・ローズ
(画)アレ・ガルザ
(カラー)ホセ・ヴィラールビア
(画)ラングドン・フォス
登録情報
- 出版社 : 誠文堂新光社 (2017/2/17)
- 発売日 : 2017/2/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 312ページ
- ISBN-10 : 4416517009
- ISBN-13 : 978-4416517000
- Amazon 売れ筋ランキング: - 864,358位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 350,984位コミック
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.6つ
5つのうち4.6つ
10グローバルレーティング
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全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年3月12日に日本でレビュー済み
あまり期待せずに読んだら意外に面白かった、
米国のグラフィックノベル。
実力者の料理人が街を暴力で牛耳っている、近
未来を舞台とした荒唐無稽のストーリーが繰り
広げられます。原作は米国の料理人・作家でテ
レビ司会者。
主役は腕利きの日本人の寿司職人、ジロー。陰
のある主人公が血みどろの抗争に巻き込まれて
いきます。
本編と米国に渡るまでの前日譚から構成されて
います。首がはねられたリ、腕が飛んだりとと
にかくバイオレンスな内容でとんでもない話な
のですが、画のタッチもストーリーに良く合っ
ていてなかなかカッコいい。“料理”をテーマに
こんな滅茶苦茶な残虐エンターテインメントへ
と昇華させているのが見事です。なんとなく
『マッドマックス』の世界における資源が食に
変わったような内容です。実写映像化しても面
白そう。
大判の本で価格はちょっと高いですが、紙質は
よく発色もいい。個人的には面白く読めました。
米国のグラフィックノベル。
実力者の料理人が街を暴力で牛耳っている、近
未来を舞台とした荒唐無稽のストーリーが繰り
広げられます。原作は米国の料理人・作家でテ
レビ司会者。
主役は腕利きの日本人の寿司職人、ジロー。陰
のある主人公が血みどろの抗争に巻き込まれて
いきます。
本編と米国に渡るまでの前日譚から構成されて
います。首がはねられたリ、腕が飛んだりとと
にかくバイオレンスな内容でとんでもない話な
のですが、画のタッチもストーリーに良く合っ
ていてなかなかカッコいい。“料理”をテーマに
こんな滅茶苦茶な残虐エンターテインメントへ
と昇華させているのが見事です。なんとなく
『マッドマックス』の世界における資源が食に
変わったような内容です。実写映像化しても面
白そう。
大判の本で価格はちょっと高いですが、紙質は
よく発色もいい。個人的には面白く読めました。
2017年3月22日に日本でレビュー済み
クエンティン・タランティーノ監督作品「キル・ビル」みたいな感覚だった。
だって日本のイメージが少し誤解される場面がそのまんまでてくれるのだから
それからずいぶん分厚い理由もわかった。前半がだいぶ盛り上がったから
「続きが読みたーい」なんて言われない様にテマを省くために
初めから関連エピソードも収録してくれている。
主人公ジローの過去が明らかになるエピソードだ。
ちなみに後半は黒服連中が活躍するせいか「パルプ・フィクション」を連想させてくれた。
だって日本のイメージが少し誤解される場面がそのまんまでてくれるのだから
それからずいぶん分厚い理由もわかった。前半がだいぶ盛り上がったから
「続きが読みたーい」なんて言われない様にテマを省くために
初めから関連エピソードも収録してくれている。
主人公ジローの過去が明らかになるエピソードだ。
ちなみに後半は黒服連中が活躍するせいか「パルプ・フィクション」を連想させてくれた。
2017年3月16日に日本でレビュー済み
思っていたよりじっくり読めました。でもあんなにストイックなジローが神聖な包丁で客を斬殺するかなあ。