障害を持つことや、パラスポーツについては、なぜかこれまで深く知ろうとすることができなかった。
たぶん、お涙ちょうだいみたいな美談を聴かせられることに抵抗があったのかもしれないし、それだけ困難を乗り越えて命を輝かせている人たちを羨ましくも思っていた自分の気持ちがあったからだと思う。
この本では、選手の体験談を通して、障害を負った時の記憶や、心の葛藤、人間関係の変化などが本人の言葉で綴られている。私は障害を負うほどの身体の傷はないけれど、ちょうど心の傷を何とかしようとしている最中だったから、言葉がスーッと心に入ってきた。
一番好感が持てたのは、著者が「ほら、困難を克服するってすばらしいよ」という視点ではなく、心の浮き沈みや葛藤の含めてまるごとを受け止めてくれている視点だった。
そうだよね、葛藤しながらでもいいよね。と、そんな風に、人生を歩んでいる過程をまるごと包んでくれるような、そんな気持ちになれた。
読了後、もうそこには健常者が、障害者が‥といった概念自体がどうでもいいと感じてしまえる「個人の生き方」があったように思う。
私も「私」という存在を活かせる人間になりたい。そう思える本でした。
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