石黒さんは、アンドロイドを作っていく上で自己意識つまり、「自分で自分の声を聞く」という再帰性即ち思考(それは、言語の獲得が条件である)をどうしたら作れるかと考えた。
先ず、「記憶」とは、自己以外のものが「在る」という客観性(記憶と時間は切り離されている)。
「意識」とは、その客観性の中で「自分」をシュミレーションする機能。
「自己意識」とは、行為主体は客観的観測を積み重ねてそれが、「客観世界」というモデルを作り上げそれは同時に、その客観世界で「主観的観察を行う自分」をシュミレートすること。
「意識や記憶」は、厖大な情報を脳内モデルとして固定する機能。
「自己同一性」とは、時間概念を捨て、記憶という普遍性を獲得すること。
「心」とは、実体がなく観察して感じる側にあり即ち、社会的な相互作用に宿る主観的な現象である。外から見た「意識の入れ物」のようなものであり非常に猥雑なものである。と整理した。
研究の最終目標は、ビッグバンから発生した単純物理法則から技術による知的生命体の再構造化(機械化)であり人工生命化する社会である。
その手法は、無時間である言語であり言語が技術を進化させる。
言語は、三人以上いないと意味がない。一対一だと互いに適応してしまうので碌な言語は生まれない。三人目がいれば自分達の考えを共有しなければならなくなる。なので、言語とは凄く社会性を伴ったものである。
もともと人間は、外を見ていない。網膜から入って来る情報は7%で93%は、頭頂葉から流れている。われわれの見ているものは外部のものではなく、内部で生成されたものである。知覚とは、仮想空間のことである。
われわれが受け取っているはずの大量の生のデータは、無意識を作っている。
それらは、外に染み出しているかもしれない。隣の人を含め全部繋がっていると考えることも出来る。
そして、脳と身体は密に繋がってはいない。体は脳からの指令は受けるがそれから先は、自立的である。
荒川修作の「ランディング・サイト」も登場する。
目、耳、鼻を取ってその他どんどん取り去っても、何か生命性が残るとしたら、それが究極に生命が降り立つ処。つまり、機能を取り去っても「~らしさ」というものは残る。それは、環境に降り立つ。
リベットと下條は、逆行性遡及を発見した。
知覚される「今」は、物理的な時間で生起する「今」とは異なっている。心的「今」は、未来の自分によって編集されている。
それは、ある時間幅をもった窓(タイムウィンドウ)が設定され遡って「その時点の今」を決定している。この窓が物理的時間と心の時間の様々な辻褄合わせをしている(後測)。この窓は、日常に於いて伸縮を常に至る処で行っている可能性がある。
人間の次段階とは、分散した身体性・自我であろう。
それは、時間概念を超えた処でものを見ることが可能となる。経験が分散して積み上がりそれらが、時々シンクロしながら散らばっている。
時間が一方向にしか流れない三次元モデルでない四次元的意識である。
身体的にも時間概念を超えた無機物のアンドロイド的なものである。人間という概念が拡張されるのである。
実に、刺激的な内容であった。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか 単行本(ソフトカバー) – 2016/12/7
爆発的な技術進化の時代、「明日」はどうなっているのだろう? 人工生命×アンドロイド、白熱の議論と「機械人間オルタ」の全貌。
「生身の肉体」は「人間」の条件から外れつつある――石黒浩
シンギュラリティとは、人間が変わっていくことである――池上高志
数年後、われわれの世界認識は今とどのくらい変わっているだろうか。
人工生命やアンドロイドと暮らす未来は、すぐ近くまで来ている。
人間の制約を取り払い、なお「人間」であるとはどういうことか?
爆発的な技術進化の時代の、「明日」の考え方。
「生身の肉体」は「人間」の条件から外れつつある――石黒浩
シンギュラリティとは、人間が変わっていくことである――池上高志
数年後、われわれの世界認識は今とどのくらい変わっているだろうか。
人工生命やアンドロイドと暮らす未来は、すぐ近くまで来ている。
人間の制約を取り払い、なお「人間」であるとはどういうことか?
爆発的な技術進化の時代の、「明日」の考え方。
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2016/12/7
- 寸法13 x 1.7 x 18.8 cm
- ISBN-104062203855
- ISBN-13978-4062203852
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
池上 高志
池上高志(いけがみ たかし)
1961年、長野県生まれ。複雑系・人工生命研究。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士(物理学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。人工生命(ALIFE)に新たな境地を切り拓き、研究を世界的に牽引。アート作品でも注目される。著書に『動きが生命をつくる』『生命のサンドイッチ理論』など。
石黒 浩
石黒浩(いしぐろ ひろし)
1963年、滋賀県生まれ。ロボット研究。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。現在、大阪大学大学院基礎工学研究科教授(特別教授)。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究開発の第一人者として世界的に注目される。著書に『ロボットとは何か』『アンドロイドは人間になれるか』など。
池上高志(いけがみ たかし)
1961年、長野県生まれ。複雑系・人工生命研究。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士(物理学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。人工生命(ALIFE)に新たな境地を切り拓き、研究を世界的に牽引。アート作品でも注目される。著書に『動きが生命をつくる』『生命のサンドイッチ理論』など。
石黒 浩
石黒浩(いしぐろ ひろし)
1963年、滋賀県生まれ。ロボット研究。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。現在、大阪大学大学院基礎工学研究科教授(特別教授)。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究開発の第一人者として世界的に注目される。著書に『ロボットとは何か』『アンドロイドは人間になれるか』など。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2016/12/7)
- 発売日 : 2016/12/7
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 264ページ
- ISBN-10 : 4062203855
- ISBN-13 : 978-4062203852
- 寸法 : 13 x 1.7 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 58,511位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 28位メカトロ・ロボット工学
- - 490位コンピュータサイエンス (本)
- - 1,020位産業研究 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年2月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2018年10月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
どんどん機械化していくこの世代で、戸惑いつつあった。
「ロボットを作るっていう事は人間を知る事なんだ。
自分たちが知っている人間というものの証明なんだ。」
っていう考え方がとても好きです。
「ロボットを作るっていう事は人間を知る事なんだ。
自分たちが知っている人間というものの証明なんだ。」
っていう考え方がとても好きです。
2018年10月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ロボット工学研究家の石黒氏と、人工生命研究家の池上氏による共著である。石黒氏が「時間」「知能」「機械化」「対話」「社会」「意識」の順に論じた後に、対談をはさんで、池上氏が「意識」「対話」「社会」「機械化」「知能」「時間」の順に論じる、というユニークな構成になっている。
ロボットは心(自我)を持つことができるか。「できない」と個人的には思っていた。根拠は二つある。一つ。精神と肉体のはざまに心が生まれるとするならば、ソフトウェアとハードウェアが緊密に連動するロボットに心が生まれる余地はない。二つ。主観的な記憶の蓄積が心の必要条件だとするならば、客観的なデータしか持たないロボットが心を持つことはできない。
しかしそもそも心とは何だろうか。
よくよく考えてみれば、私は他人の心(自我)を確認したことが一度もない。自分には心があるような気がしているけれど、他人にも心があることを直接確かめることできない。いわゆる独我論と呼ばれている問題であり、多くの哲学者がこの難問に挑戦しては挫折してきた。主観客観図式を手放さない限り、他我の証明は原理的に不可能であるように思われる。他人に心があるかどうかすら証明できないのに、ロボットに心があるかどうかなどどうやって証明することができるだろうか。
しかし石黒は、この問題に対して異なるアプローチをする。
その昔、奴隷に人権はなかった。奴隷に人権を付与したのは、奴隷たち自身ではなくリンカーンであった。同じようにロボットに心を付与するのは、ロボット自身ではなくロボットに接しているわれわれ人間である。他者に心があると私が思えば、その他者は心を持っているということになるし、そうならざるをえない。同様にロボットとのコミュニケーションにおいて、われわれが心の存在を感じることができれば、そのロボットは心を持っているということになるし、そうならざるをえない。それ以外に心が存在できる場所はない。「完璧なロボットに意識は無用」と廣松渉も言っている。
ただしここで疑問が残る。ロボットが心を持つことができるとして、できたとして、そのロボットは自分がロボットであることを自覚できるのだろうか。そのロボットは自分を人間として把握することになりはしないか。
もう一つ異論がある。石黒は人間の肉体を機械化してゆくことによって、さらに脳までもコンピュータに置き換えることによって、無機物への進化と不老不死が実現しうると書いている。しかしそれはもはや人間ではあるまい。私の脳を機械化し、そこに私の記憶をコピーすることが仮にできたとしても、それはもはや私ではなく私のコピーに過ぎないだろう。
個人的にはロボットの人間化よりも、人間のロボット化の方が深刻であるように思われる。ネット社会における二人称の排除は、一人称の腐敗を招来するのではないか。スティーヴン・ホーキングはAIによる人類の支配を危惧していたが、その前に人類が(いつの間にか)AI化し自滅する可能性の方が高いのではないか。ともあれ哲学的な議論も含んでいる本書は、読んで損はない一冊である。
ロボットは心(自我)を持つことができるか。「できない」と個人的には思っていた。根拠は二つある。一つ。精神と肉体のはざまに心が生まれるとするならば、ソフトウェアとハードウェアが緊密に連動するロボットに心が生まれる余地はない。二つ。主観的な記憶の蓄積が心の必要条件だとするならば、客観的なデータしか持たないロボットが心を持つことはできない。
しかしそもそも心とは何だろうか。
よくよく考えてみれば、私は他人の心(自我)を確認したことが一度もない。自分には心があるような気がしているけれど、他人にも心があることを直接確かめることできない。いわゆる独我論と呼ばれている問題であり、多くの哲学者がこの難問に挑戦しては挫折してきた。主観客観図式を手放さない限り、他我の証明は原理的に不可能であるように思われる。他人に心があるかどうかすら証明できないのに、ロボットに心があるかどうかなどどうやって証明することができるだろうか。
しかし石黒は、この問題に対して異なるアプローチをする。
その昔、奴隷に人権はなかった。奴隷に人権を付与したのは、奴隷たち自身ではなくリンカーンであった。同じようにロボットに心を付与するのは、ロボット自身ではなくロボットに接しているわれわれ人間である。他者に心があると私が思えば、その他者は心を持っているということになるし、そうならざるをえない。同様にロボットとのコミュニケーションにおいて、われわれが心の存在を感じることができれば、そのロボットは心を持っているということになるし、そうならざるをえない。それ以外に心が存在できる場所はない。「完璧なロボットに意識は無用」と廣松渉も言っている。
ただしここで疑問が残る。ロボットが心を持つことができるとして、できたとして、そのロボットは自分がロボットであることを自覚できるのだろうか。そのロボットは自分を人間として把握することになりはしないか。
もう一つ異論がある。石黒は人間の肉体を機械化してゆくことによって、さらに脳までもコンピュータに置き換えることによって、無機物への進化と不老不死が実現しうると書いている。しかしそれはもはや人間ではあるまい。私の脳を機械化し、そこに私の記憶をコピーすることが仮にできたとしても、それはもはや私ではなく私のコピーに過ぎないだろう。
個人的にはロボットの人間化よりも、人間のロボット化の方が深刻であるように思われる。ネット社会における二人称の排除は、一人称の腐敗を招来するのではないか。スティーヴン・ホーキングはAIによる人類の支配を危惧していたが、その前に人類が(いつの間にか)AI化し自滅する可能性の方が高いのではないか。ともあれ哲学的な議論も含んでいる本書は、読んで損はない一冊である。
2019年8月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
相互作用によって生命らしさが生まれる(人間が生命らしさを見出す)ということは、何となくぼんやり考えていたことではあったけれど、ロボットを使うことでそれをちゃんと研究として、科研費をとってやっている(今年も予算をしっかりとっている:https://kaken.nii.ac.jp/ja/search/?kw=%E7%9F%B3%E9%BB%92%E6%B5%A9)。そのアプローチ法がうまいと思った。
二人の「対談」とは書いているけど、結構意見がぶつかっていて、読み応えがあった。
二人の「対談」とは書いているけど、結構意見がぶつかっていて、読み応えがあった。
2019年1月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「人間」について深く考えていくのに様々なヒントを与えてくれる一冊。池上さんと石黒さんの切り口が対称的なのが面白い。私個人的には池上さんの捉え方やアプローチが非常に興味深く、何度か読み返したくなる良書だと感じました。
2018年10月6日に日本でレビュー済み
とてもエキサイティングな人工生命&ロボット本です。
機械人間オルダの開発秘話が語られています。
生命らしさとは?人間らしさとは?その謎が解かれる日が来ると思いました。
機械人間オルダの開発秘話が語られています。
生命らしさとは?人間らしさとは?その謎が解かれる日が来ると思いました。
2020年2月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新品を頼みましたが帯が破れて、一部は完全に切り離れていました。仕方なく処分しましたが、残念です。
2018年1月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年に読んだ本の中で1番面白かったです。最近特に話題のAIについてです。2人が全く別の観点から議論されていて、アプローチが違うとこんなにも見かたが変わるのかと感心させられました。エンジニアや研究者の方以外にも、とてもおすすめです。