チェコ・アニメーションの巨匠カレル・ゼマンがジュール・ヴェルヌの原作を映画化したSF冒険映画。1958年製作。
白黒の精密な銅版画で描かれた書き割りやストップモーション・アニメの中に、実写の人間が入り込む。しかもどこまでがアニメで、どこからが実写なのか曖昧で分かりづらい。それが摩訶不思議な笑いを引き出し、ノスタルジックで独創的な世界を構築し、そして儚くてとうてい掴めないような夢が、私のようなおじさんの乾いた心の中にもしみ込んでくる。
海の中の描き方は特に幻想的で、その中でも潜水艦が海の底で溺れた助手(なんとなくパパイヤ鈴木に似ているのがかわいくておかしい)を助けるシーンは、ゼマンの優しい人柄が伝わってきて救われます。
『悪魔の発明』というと何かおどろおどろしいものを想像してしまいそうですが、正直者の科学者が作り出してしまった、ただの爆弾です。結局、悪者の目的のためには使われませんので、安心してご覧になってください。