著者の専門分野である中ソ国境問題の解決方法を中国・中央アジアの国境解決策まで含めて詳しすぎるほど過剰に説明(ほぼ半分以上の分量)しすぎて、肝心の北方領土問題の歴史的経緯や住民たちの意向や解決方法案の説明がおろそかになっている残念な本。
著者の目指す解決案(2島先行返還+時間をかけて国後返還を目指す、択捉は諦める)は十分な国民や地元民の賛成が得られると思うので、中ソはうまく要約して改訂版を出すべきだと思う。

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北方領土問題: 4でも0でも、2でもなく (中公新書 1825) 新書 – 絵本, 2005/12/1
岩下 明裕
(著)
「北方領土問題」は、日本とソ連の戦後処理をめぐる交渉のプロセスのなかで生まれ、一九五六年の日ソ交渉においても、これを解決することができず、平和条約の締結に至らなかった。以来五〇年、事態が進展しないなか、中国とロシアの間で、同じく第二次世界大戦に由来する国境問題に終止符が打たれた。本書は、この係争地を互いに「分け合う」という政治的妥協に至る道筋を検討し、日ロ間への具体的な応用を探るものである。
- ISBN-104121018257
- ISBN-13978-4121018250
- 出版社中央公論新社
- 発売日2005/12/1
- 言語日本語
- 本の長さ264ページ
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2005/12/1)
- 発売日 : 2005/12/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 264ページ
- ISBN-10 : 4121018257
- ISBN-13 : 978-4121018250
- Amazon 売れ筋ランキング: - 641,602位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 111位ロシア・ソビエトの政治
- - 2,393位中公新書
- - 2,460位国際政治情勢
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年12月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
北方領土問題を政治的観点から考察した書籍。岩下さんの著書は大変読みやすく、ゼミやサークルでのレポート作成や卒論での根拠づけに大変お世話になった。
2017年1月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著書の表題は「北方領土」だったですよね??
ところが内容の90%は中国とロシアの国境問題の歴史でした。
著者の専門がその地域なのでしかたないし、それを話したいのも分かるが、
あまりにもその話ばかりで疲れました。
また字も細かいので読後感想は、疲れた。
ところが内容の90%は中国とロシアの国境問題の歴史でした。
著者の専門がその地域なのでしかたないし、それを話したいのも分かるが、
あまりにもその話ばかりで疲れました。
また字も細かいので読後感想は、疲れた。
2008年1月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
未だ解決を見ない北方領土問題であるが、人々の関心も薄れ、50年未解決であった問題をさらに先送りしよう、との声も聴かれる。
そんな中、中ロ国境問題を長く見てきた研究者たる筆者は、かの問題が完全に解決されたことを見た。そこで、この解決方式が北方領土問題にも適用できると確信し、この係争地を分け合う方式を援用して、「2+α」の形で、どちらも歩み寄る事を強く提言している。
さて、この筆者渾身の提言は、交渉当事者たる政府外務省に届くだろうか。はなはだ心もとないが、それでも世論の後押しが欲しいところだ。この後押しのためにも、本書が広く読まれることを期待したい。
なお、記載の地図(特に中ロ国境)が非常に細かく、老眼にはちと厳しかったことを申し添えておく。
そんな中、中ロ国境問題を長く見てきた研究者たる筆者は、かの問題が完全に解決されたことを見た。そこで、この解決方式が北方領土問題にも適用できると確信し、この係争地を分け合う方式を援用して、「2+α」の形で、どちらも歩み寄る事を強く提言している。
さて、この筆者渾身の提言は、交渉当事者たる政府外務省に届くだろうか。はなはだ心もとないが、それでも世論の後押しが欲しいところだ。この後押しのためにも、本書が広く読まれることを期待したい。
なお、記載の地図(特に中ロ国境)が非常に細かく、老眼にはちと厳しかったことを申し添えておく。
2019年7月9日に日本でレビュー済み
著者によれば、“法的に”考えるかぎり、北方領土問題においてありうる選択肢は、①日本の主張を全面的に認め、4島を日本に引き渡す、②ロシアの主張に基づき、現状維持で国境線を画定する、③1956年の日ソ共同宣言に基づき、歯舞群島と色丹島の2島返還で最終決着とする、という3つしか存在しない、という。つまり、4か、0か、2である。
また、領土問題に関して、ソ連、そしてその後継国であるロシアの立場はこれまでほとんどぶれがなく、一貫しているという。著者によれば、ソ連及びロシアの一貫した主張は、1956年宣言に基づき「好意で歯舞・色丹を引き渡す。しかし、これは譲れる最後の一線であり、択捉、国後に関しては議論の余地はない。歯舞・色丹を引き渡すのは平和条約締結後であり、これで領土問題は最終決着になる」というものである。(逆に日本の立場は「4島返還論」と「2島返還論」の間で揺れ動き、時代によって大きなブレがあった。)
上記の選択肢のうち、①の「4島返還」についてはロシアが今後もその立場を変える可能性はまずないと考えられ、短期的に解決するという見通しは暗い。また②の「4島とも諦める」については、日本側の全面的敗北となるため日本側が受け入れがたい。結論として、現実的に実現の可能性をもつのは③の「2島返還」に基づく、日ロどちらかが敗者(ゼロ)にならないシナリオということになる。
実際、歴史的には、2島返還を優先するシナリオに基づいて、日ソ(日露)の立場が接近したケースはある。1954~56年の鳩山一郎政権、2000~2001年の森政権のアプローチがそうであった。そして、現在の安倍政権の立場もそうである(2018年11月のシンガポールでの日露首脳会談の際に安倍首相は「1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速させる」と表明した)。そういう意味で、2019年現在、日露の立場は接近しており、領土問題解決の機運はこれまでの過去に比べて高まっていると判断して間違いない。
本書の著者は、法的な立場によるアプローチに加え、双方の政治的妥協により「2島返還+α」の可能性がありえないわけではないと論じる。中露の間には双方の政治的妥協(フィフティ・フィフティ原則の採用)によって国境画定が実現したという実例があり、それをロシア側で決断したのは現大統領のプーチン氏だからである。したがって、日露の場合も政治的妥協の余地がゼロなわけではなく、「+α」が実現する可能性もありうるという。
「+α」がどんなものになるのかについては、米国の意向を含む国際情勢等々、様々な条件によって変わってくるだろう。著者は「+α」について国後と択捉のどこかに国境線を敷くことを想定しているようだが、個人的にはその見通しは、なかなか厳しいのではないかという感触をもっている。
国境線画定に限らず、「+α」にはいろんな可能性がありうるではないかと思う。例えば、現在、日露間では4島における「共同経済活動」の具体化に取り組んでいるが、こうした活動を通じて、国後・択捉における事業やビジネスの優先的権益等を日本が取得する、そういったシナリオもありうるのではないかと思う。
いずれにせよ、本書は北方領土問題の解決に向けて新たな一石を投じた一冊であり、個人的にもたいへん大きな刺激を受けた。
また、領土問題に関して、ソ連、そしてその後継国であるロシアの立場はこれまでほとんどぶれがなく、一貫しているという。著者によれば、ソ連及びロシアの一貫した主張は、1956年宣言に基づき「好意で歯舞・色丹を引き渡す。しかし、これは譲れる最後の一線であり、択捉、国後に関しては議論の余地はない。歯舞・色丹を引き渡すのは平和条約締結後であり、これで領土問題は最終決着になる」というものである。(逆に日本の立場は「4島返還論」と「2島返還論」の間で揺れ動き、時代によって大きなブレがあった。)
上記の選択肢のうち、①の「4島返還」についてはロシアが今後もその立場を変える可能性はまずないと考えられ、短期的に解決するという見通しは暗い。また②の「4島とも諦める」については、日本側の全面的敗北となるため日本側が受け入れがたい。結論として、現実的に実現の可能性をもつのは③の「2島返還」に基づく、日ロどちらかが敗者(ゼロ)にならないシナリオということになる。
実際、歴史的には、2島返還を優先するシナリオに基づいて、日ソ(日露)の立場が接近したケースはある。1954~56年の鳩山一郎政権、2000~2001年の森政権のアプローチがそうであった。そして、現在の安倍政権の立場もそうである(2018年11月のシンガポールでの日露首脳会談の際に安倍首相は「1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速させる」と表明した)。そういう意味で、2019年現在、日露の立場は接近しており、領土問題解決の機運はこれまでの過去に比べて高まっていると判断して間違いない。
本書の著者は、法的な立場によるアプローチに加え、双方の政治的妥協により「2島返還+α」の可能性がありえないわけではないと論じる。中露の間には双方の政治的妥協(フィフティ・フィフティ原則の採用)によって国境画定が実現したという実例があり、それをロシア側で決断したのは現大統領のプーチン氏だからである。したがって、日露の場合も政治的妥協の余地がゼロなわけではなく、「+α」が実現する可能性もありうるという。
「+α」がどんなものになるのかについては、米国の意向を含む国際情勢等々、様々な条件によって変わってくるだろう。著者は「+α」について国後と択捉のどこかに国境線を敷くことを想定しているようだが、個人的にはその見通しは、なかなか厳しいのではないかという感触をもっている。
国境線画定に限らず、「+α」にはいろんな可能性がありうるではないかと思う。例えば、現在、日露間では4島における「共同経済活動」の具体化に取り組んでいるが、こうした活動を通じて、国後・択捉における事業やビジネスの優先的権益等を日本が取得する、そういったシナリオもありうるのではないかと思う。
いずれにせよ、本書は北方領土問題の解決に向けて新たな一石を投じた一冊であり、個人的にもたいへん大きな刺激を受けた。
2007年1月13日に日本でレビュー済み
いまだ解決をみない北方領土問題を、中ロの国境問題の劇的解決といった
「事件」から考えるアクロバットな一作。(佐藤優の著作に、著者の名前
は登場する。インテリジェンスの方からも無視しえないだけの人?)
彼は、50−50の解決、すなわち四島のうち二島を日本が取ることを前提とし、
その後の「プラスα」の利益をめぐって交渉ゲームを進めろと提唱する。
日本ではきわめて「マージナル」な中ロ国境問題と、「マージナル」な存在で
ある根室市民の声に言及しながら、きわめて現実的に、着実に国益を確保しよう
とする「国士」――彼は、抑制的なナショナリズムの体現者だ。
言外に彼が責めるのは、四島返還を頑なに狂信し、その「善」を信じて疑わない
「中央」の世論であり、「国士」を自称するナショナリストや右翼である。
北方領土問題が、自己にとってなんら利害関係がない人たちだ。
だからこそ彼らは、「幻想」(四島返還)をいつまでも信じていられる。
日本の読者にはなじみの薄い中ロ国境問題を、ボディの部分で実直な筆致で詳説
しており、なるほど、たしかに読むのにくたびれる。
けれど全体を通して、誠実な知が、今日的な問題に処方箋を呈示しようという姿勢
には心を打たれる。いつだって「マージナル」な存在を忘れていない点もまた爽やか。
ところで、かの鈴木宗男と佐藤優は、「二島返還」の権化とされ、メディアで「国賊」
として扱われ、さながらサンドバックと化した。
本当の「国賊」は、はて、誰なのだろう。そんな点に思いを巡らすことのできる希書。
☆大佛次郎論壇賞受賞(→『朝日新聞』朝・夕刊、2006年12月13日に記事)
「事件」から考えるアクロバットな一作。(佐藤優の著作に、著者の名前
は登場する。インテリジェンスの方からも無視しえないだけの人?)
彼は、50−50の解決、すなわち四島のうち二島を日本が取ることを前提とし、
その後の「プラスα」の利益をめぐって交渉ゲームを進めろと提唱する。
日本ではきわめて「マージナル」な中ロ国境問題と、「マージナル」な存在で
ある根室市民の声に言及しながら、きわめて現実的に、着実に国益を確保しよう
とする「国士」――彼は、抑制的なナショナリズムの体現者だ。
言外に彼が責めるのは、四島返還を頑なに狂信し、その「善」を信じて疑わない
「中央」の世論であり、「国士」を自称するナショナリストや右翼である。
北方領土問題が、自己にとってなんら利害関係がない人たちだ。
だからこそ彼らは、「幻想」(四島返還)をいつまでも信じていられる。
日本の読者にはなじみの薄い中ロ国境問題を、ボディの部分で実直な筆致で詳説
しており、なるほど、たしかに読むのにくたびれる。
けれど全体を通して、誠実な知が、今日的な問題に処方箋を呈示しようという姿勢
には心を打たれる。いつだって「マージナル」な存在を忘れていない点もまた爽やか。
ところで、かの鈴木宗男と佐藤優は、「二島返還」の権化とされ、メディアで「国賊」
として扱われ、さながらサンドバックと化した。
本当の「国賊」は、はて、誰なのだろう。そんな点に思いを巡らすことのできる希書。
☆大佛次郎論壇賞受賞(→『朝日新聞』朝・夕刊、2006年12月13日に記事)
2018年11月23日に日本でレビュー済み
北方領土は戻りません。相手はロシアですよ。狡猾なロシアが、一度手にした領土をみすみす返すと思う方がおかしい。日本は旧ソ連と、交戦もしていないのに北方領土を盗んだのです。日本の政治家では、ロシアと太刀打ちできる人物はいません。どうしても返してもらいたいなら、また日本海海戦で勝利するしかありません。諦めましょう。
2012年5月6日に日本でレビュー済み
「あれ(共同宣言)から50年。再び溝は少しづつ埋まりつつある。ロシアは二島引き渡しの立場まで回帰した。日本でも二島返還プラス継続交渉を許容しうる声が強まりつつある。忘れていけない点は、この『プラスの交渉』の可能性を残したのが1950年の鳩山・河野の闘いであったということである。そして、この『プラス』が実現されるかどうかが、日本にとってこれを『勝利』とみなせるかどうかの分かれ目なのだ。
結局のところ、現在の攻防は50年前の様相が再現されている。日ロの真の攻防は『二島返還プラスα』のαにあるからだ」(p.221)。
サブタイトルにあるように、4島(国後、択捉、歯舞、色丹)一括返還に執着するのではなく、1956年の「日ソ共同宣言」の線で平和条約を結んで2島(歯舞、色丹)返還に満足するのではなく、日ロ双方の誠意をもって交渉のテーブルにつき、日本としては「ニ島返還+α」の戦略を考えていくべきという主張である。
著者はこの提案を、ロシアと中国の3000キロを越える国境の線引きが曖昧で未解決であった問題に、両国が「やれるところから先にやる」という原則にたって、双方が「フィフティ・フィフティ」で利益を得て納得の結果をえた事実と経験から問題解決の道を探る方法を学ぼうとしている。中ロはアバガイド島の国境問題を1991年の中ソ東部国境協定で、黒子島問題を2004年10月の北京サミットで解決したが、その方法は核戦争の憶測もあった1967年の珍宝島事件を教訓に、法律的問題を横におき、係争地を相互の利益を考慮して分割し、相互の勝利が確認できる妥協案で問題解決をはかっていくやり方であった。
著者はこの方法の日ロの「領土問題に」適用する。前提条件は、中ロと日ロとでは経緯、地政学上の問題、係争地の規模などかなり異なるが(pp.148-150)、国境画定の問題は本来避けてとおれない問題であり、また地元の住民にとっては生活と関わる喫緊の課題である。今すぐにでも解決できるなら、解決したほうがよい。
とはいえ、問題は錯綜しているのも事実。著者は、国際的なパワーポリテックスの動向にも目配りし、世論の変化にも着目しつつ、個々の難題を丁寧に解きほぐしながら、安易な妥協を排すものの、国益を考えての早期解決の真剣な姿勢が今、必要であると結論づける。
1993年10月の東京宣言[細川首相+エリツィン]、1997年の橋本龍太郎+エリツィンのクラスノヤルスクでの非公式会談、1998年の川奈会談での橋本首相の四島返還の方針提案、1998年11月の小渕首相に対するモスクワの「ノー」の回答、2001年3月の森首相とプーチンのイルクーツク声明。現実味を帯びてきた「二島返還」に「+α」をつけて双方勝利の妥協の道を探ろうとする著者の姿勢と方法は検討に値する。
結局のところ、現在の攻防は50年前の様相が再現されている。日ロの真の攻防は『二島返還プラスα』のαにあるからだ」(p.221)。
サブタイトルにあるように、4島(国後、択捉、歯舞、色丹)一括返還に執着するのではなく、1956年の「日ソ共同宣言」の線で平和条約を結んで2島(歯舞、色丹)返還に満足するのではなく、日ロ双方の誠意をもって交渉のテーブルにつき、日本としては「ニ島返還+α」の戦略を考えていくべきという主張である。
著者はこの提案を、ロシアと中国の3000キロを越える国境の線引きが曖昧で未解決であった問題に、両国が「やれるところから先にやる」という原則にたって、双方が「フィフティ・フィフティ」で利益を得て納得の結果をえた事実と経験から問題解決の道を探る方法を学ぼうとしている。中ロはアバガイド島の国境問題を1991年の中ソ東部国境協定で、黒子島問題を2004年10月の北京サミットで解決したが、その方法は核戦争の憶測もあった1967年の珍宝島事件を教訓に、法律的問題を横におき、係争地を相互の利益を考慮して分割し、相互の勝利が確認できる妥協案で問題解決をはかっていくやり方であった。
著者はこの方法の日ロの「領土問題に」適用する。前提条件は、中ロと日ロとでは経緯、地政学上の問題、係争地の規模などかなり異なるが(pp.148-150)、国境画定の問題は本来避けてとおれない問題であり、また地元の住民にとっては生活と関わる喫緊の課題である。今すぐにでも解決できるなら、解決したほうがよい。
とはいえ、問題は錯綜しているのも事実。著者は、国際的なパワーポリテックスの動向にも目配りし、世論の変化にも着目しつつ、個々の難題を丁寧に解きほぐしながら、安易な妥協を排すものの、国益を考えての早期解決の真剣な姿勢が今、必要であると結論づける。
1993年10月の東京宣言[細川首相+エリツィン]、1997年の橋本龍太郎+エリツィンのクラスノヤルスクでの非公式会談、1998年の川奈会談での橋本首相の四島返還の方針提案、1998年11月の小渕首相に対するモスクワの「ノー」の回答、2001年3月の森首相とプーチンのイルクーツク声明。現実味を帯びてきた「二島返還」に「+α」をつけて双方勝利の妥協の道を探ろうとする著者の姿勢と方法は検討に値する。