本書は20世紀初頭のソシュールによる近代言語学、つまり言語本質論の始まりから、時枝誠記、三浦つとむによる言語過程説への展開を明らかにした唯一の研究書である。
ソシュールによる、言語活動とその部分であるラングとパロールという定式化に始まり、時枝によるその自然科学的言語観の否定と言語活動、言語表現の過程そのものを言語本質とみなす展開、三浦つとむによる言語過程と結果の統一という表現の媒介構造の解明による言語本質の解明に至る否定の否定という対象の科学的認識の発展過程が克明に明かされている。
さらに時枝誠記の言語政策論に対する左翼からのいわれなき論難の誤りを正すとともに柄谷行人らのカルチュラル・スタディーズによる浅薄な言語本質理解を明らかにしている。
そして三浦言語論による意味の在り処の検討から意味の本質究明を明らかにするとともに、言語本質論を欠いた現在の学校文法の形式主義的欠陥にも触れ形容動詞説の誤りに言及している。
著者は最初に「日本のアカデミズムに歴然として残っている次の二つの暗黙の規律」について述べている。
一つは、「学問の研究の方法は、なるべく外国(主に欧米)の学説に拠らなければならないという規律」であり、二つめは「アカデミズムに属さない学者の研究はこれを一切無視すべきである、という規律である。」
これは和魂洋才の掛声のもとに推進された明治からの政策と、敗戦による米国支配により更に強化された戦後レジュームの本質である。明治の森鴎外らによる脚気治療、原因究明に対する在野成果の無視による医療過誤から、現在の古田武彦による古代史学の成果に対する史学、万葉学、考古学アカデミズムによる無視まで連綿と続いており、国民に対するその損失は図りしれないものがある。
本書は、時枝誠記という東京帝国大学教授が欧米の学説に拠らず国語学の史的究明と対象の本質の追求という真に科学的な探求の成果と、それを受け継ぎ発展させた在野の学究である三浦つとむの世界に誇るべき成果を分かりやすく紹介した唯一の書物である。権威的なアカデミズムがこれを理解発展させる見込みは明るくないが、真理の究明を妨げることは誰にもできず、いずれその意義が明らかになるであろう。■

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言語過程説の研究 ペーパーバック – 2003/10/1
- 本の長さ378ページ
- 言語日本語
- 出版社リーベル出版
- 発売日2003/10/1
- ISBN-104897985897
- ISBN-13978-4897985893
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
時枝誠記の言語学説を唯物論的に修正し、発展させた言語学者・三浦つとむの言語過程説について検証し、時枝理論を批判的に継承したとも言える三浦の言語理論を整理し直す。
登録情報
- 出版社 : リーベル出版 (2003/10/1)
- 発売日 : 2003/10/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 378ページ
- ISBN-10 : 4897985897
- ISBN-13 : 978-4897985893
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,758,046位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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