1937年の作です。今回、改めて観ましたが若い頃のローレンス・オリヴィエやヴィヴィアン・リーの姿や、まだ三十中途だったフローラ・ボブソンが二十年上の女王役を務めるなど、なかなか興味深かったです。ロンドン軍縮条約で戰艦の建造中止や既存艦の削減協定が結ばれたのが1930年、日英同盟の失効が1923年で、少し時間が經って居ます。第二次条約の締結が見込めなくなり日本が条約を脱退したのが1936年ですから、再軍拡の流れを背景として企画・作製された映畫と見て良いでしょう。本作の敵國はスペインですが、來る可き大戰を意識した国威発揚は當然意識して作製されたのでしょう。
本作の魅力は大戰前の宮殿の様子や衣装、立ち振る舞い等ですね。又、議會を尊重しながらも強いリーダーシップの象徴であると同時に人々への思いやりを忘れない君主としてエリザベス一世を描いており、國民に愛國心と団結を訴えたかったのでしょう。原題は「Fire Over England」(大英帝國炎上)ですから、「無敵艦隊」という邦題はミスリーディングですし、實際に本格的な海戰のアクションは冒頭に出てくるぐらいで、最後のArmada Invencible との决戰は本作の中心的なテーマでは有りません。敵に内通する間者を暴くスパイ・アクション物です。
古いフィルムですので、其れなりの畫貭ではありますが、音聲は十分聞き取れます。本作公開の数年後、大英帝國海軍は極東で手痛い目に遭いますが、近頃は風向きも變わって來ており、長い目で歴史の變わり目を考えると本作は意外と我々に身近な処に有るのかも知れません。