70年代、中核派は、「沖縄奪還、安保粉砕、日帝打倒」「闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略を内乱に転化せよ」をスローガンに掲げ、学生と労働者が一体となって戦闘的な実力闘争を展開した。ベトナム戦争において、沖縄米軍基地と日本が後方支援を担うことへの反発を推進力として、革命を目指したのだ。本書でも〈革命の現実性をたぐり寄せた〉闘いとして、その意義が語られる。ベトナム戦争終了後もこのスローガンの下90年まで実力闘争を継続したが、結果は戦後復興の二本柱である高度経済成長と“平和と民主主義”という戦後民主主義の壁を超えることが出来ずに退潮した、というのが大方の評価だろう。日本人の戦争を忌避する姿勢は自国の平和護持という枠に収まり、戦争特需によって完成した先進福祉国家日本を謳歌する。階級融和に幻惑され背教し小市民議会左翼に転向したり、党と自らの関係を直視できず党に敵対することで精神的抑圧を合理化する者も出てくる。とはいえ2011年3・11福島原発事故以後に脱落するのは、日本型資本主義にまだ政治的あるいは文化的な余裕があるかの如く誤認しているとしか思えない。そんな冷笑系共産趣味者程度の意識で、今後も左翼ヅラをするのは恥ずかしくないのか。片田舎で身を寄せ合い古巣の悪口で憂さ晴らしするだけの、惨めな極小セクトをこれ以上増やしてどうする。90年代に流行ったような、サブカル選民気取りの個人活動家を今さらやっても仕方あるまい。暴露本回顧本ブログの類を書けば書くほど、精神の腐敗が進み大量飲酒で身体を蝕むだけだ。自分達がやりたいのは革命運動なのか、ブルジョア的な政党活動なのか、ここはよくよく考え直した方がいい。こうして、「沖縄奪還、安保粉砕、日帝打倒」「闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略を内乱に転化せよ」は、現実から遊離したお題目となり党と共に朽ち果てる、かに思われた。
2021年現在、コロナ恐慌に見舞われる新自由主義は藪蛇状態となって破綻し、アメリカは「民主主義」の名のもと金に物を言わせた大量の最新テクノロジー兵器で誤爆を繰り返した挙句、アフガニスタン戦争に敗北した。世界は米中協調からなる均衡と包括性を喪失し、覇権国同士の利害と死なばもろともの構造がぶつかり合う大戦前夜的状況へ激変した。アメリカと中国が戦争になれば、全世界を巻き込む人類初の全面核戦争になるだろう。3・11フクシマ原発事故以来、核エネルギーを拠り所とする政治体制と人類の併存が疑問視されるようになった。この中で核兵器に頼った覇権を維持するには、核兵器の使用しかない。アメリカのキリスト教原理主義と中国の毛沢東主義は、核戦争への躊躇いを人類解放の福音へと変換する。日本政府はこの危機に対し、3・11以来加速する先進国からの没落を覆い隠す好機と捉え、嬉々として敵基地先制攻撃論議や改憲策動を強めている。野党も日本政府の危険な選択に、どの党が国益に叶うかという煽り競争で応じ協賛している始末。南西諸島では、自衛隊が増強され交戦準備を進めており、沖縄現地情勢は野党共闘の調整役で事足りるほどのんびりしていない。日米安保条約体制は極点に向って突き進み、それは日本社会で生活する我々一人一人に、70年代のような高度経済成長と戦後民主主義へ回避できない究極の覚悟を迫っている。侵略戦争、核戦争になれば、自分も家族も全て犬死だ。戦後生き残るのは、シェルターを準備できるごく一部の金持ちや特権階級だけ。戦争を阻止し世界を変える以外に、子供たちの未来が開くことは無い。その方法と根拠はあるのか?こうして「沖縄奪還、安保粉砕、日帝打倒」「闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略を内乱に転化せよ」というスローガンは文字は同じでも、70年代とは次元が異なるほど緊迫感を増し、勝利か死かという決断を要求するものとして蘇生する。
結党以来、常に資本主義に伏在する戦争と革命が醸し出す硝煙の臭いを嗅ぎ取り行動し続けたことで、路線としての「沖縄奪還、安保粉砕、日帝打倒」「闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略を内乱に転化せよ」からは内外の抑制物が除去され、その真価が具体的形となって現れようとしている。60年安保闘争から日米安保体制の矛盾が戦争と革命の導火線になることを見極め、70年安保・沖縄決戦の街頭実力闘争によって情勢を主体的に作りだす。これが中核派闘争スタイルの原形となった。やがて国家権力との実力闘争で炙り出される、日和見主義者、待機主義者の反動と対決が始まった。そのため先制的内戦戦略フェーズⅠを発動し、日和見主義者と待機主義者を武力で無力化する。平時は合法活動に終始し、革命情勢が来たと判断した後で実力を発揮するなどという政治的ご都合主義は、実力を発揮することもなく投降し寝返る。この教訓を労働者民衆は、曖昧さを許さない闘いの中で学んだ。80年以降、世界中で新自由主義攻撃が始まり、新自由主義的国家権力に対するゲリラ戦闘を優先する先制的内戦戦略フェーズⅡへ移行する。その渦中で、国家体制の神経系と中枢部を制圧する技術を身に付けた。また選挙やストなどの合法活動のみではブルジョア意識の流入を避けられず、階級意識の形成には非合法活動の存在が決定的であることを確認した。改良主義や条件交渉すら許さない新自由主義の徹底性を唯一見抜き、動労千葉のストライキを闘い抜く。動労千葉ストライキの響きは国境を超え韓国民主労総と結びついた。中核派は、労働者に内在する世界革命の階級的主力という本質を把握し続けた。このことが労働者を労働力を販売する個人に切り縮め、労働を狭い市場に囲い込んで利権化する労資癒着と修正主義の堕落を退けた。また、世界中の労働者との国際連帯を、道徳的要請ではない実のあるものとした。2011年3・11福島原発事故に対峙し、福島市での病院建設と労働組合による反被曝闘争をやり抜き、3・11の全過程に責任を取り切る立場を明確にした。これは、あらゆる政治勢力が3・11に見て見ないふりする中で、中核派だけが高度経済成長と戦後民主主義という日本社会の理念を凌駕した事を意味する。これら闘争を通じた歴史的試練と検証の数々が米中核戦争切迫下の中で止揚され、最終決戦への大道は掃き清められた。「沖縄奪還、安保粉砕、日帝打倒」「闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略を内乱に転化せよ」の歩みが、〈革命に直結する〉階級的労働運動という真価へ至るのは歴史的必然といえよう。
2014年に出版された本書の巻末年表項目は、「3・11情勢」で終わっている。果たして中核派は、「米中戦争阻止闘争」と書き足すことができるだろうか。そして、その先に「世界革命」を刻めるだろうか。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
現代革命への挑戦 下巻: 革命的共産主義運動の50年 単行本 – 2014/10/1
革命的共産主義者同盟50年史刊行委員会
(編集)
- 本の長さ383ページ
- 言語日本語
- 出版社革命的共産主義者同盟50年史刊行委員会
- 発売日2014/10/1
- ISBN-104860472209
- ISBN-13978-4860472207
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 革命的共産主義者同盟50年史刊行委員会 (2014/10/1)
- 発売日 : 2014/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 383ページ
- ISBN-10 : 4860472209
- ISBN-13 : 978-4860472207
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,225,069位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中3.9つ
5つのうち3.9つ
2グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。