眠り続ける姉の想いを知りたい少年と、想いの欠片を撮る少女の青春小説。
面白かった。そして、ちょっと一眼レフがほしくなった。
何かに感動する事が出来なくなり、世界が灰色に見えてしまう詩希。
人の「想いの欠片（ゴースト）」を撮影していくなか、主人公とぎこちない交流を続けるうちに少しずつ変わってゆく詩希がとても可愛いい。常に無表情で、味も感じる事も出来なかった詩希が卓馬と過ごす内に笑顔や照れた表情を見せたり、味覚が戻っていく姿が良かった。モノクロの世界を生きて感情表現が薄いだけに、時折見せる心の動きや変化に惹かれるものがある。しかもそれが卓馬との関係のなかで生まれるんだから、その甘酸っぱさにときめくしかない。
「観覧車の花子さん」というオカルトから姉に何が起こったのかを探るミステリへと移る展開も良い。
悪意に巻き込まれて、お互いを大切に想う気持ちが空回りしたけど、真相に近づいてゆく中で大切な人にきちんと想いが伝わった結末は本当に良かったです。姉が残した想いの欠片は予想外に素敵なもので、読後感は切なくも爽やか。
良い物語だったのでシリーズ化を望む。次巻からは1冊ずつキャラクターエピソードをこさえる感じで（2巻はたぶんこもりんの話かな）、詩希と卓馬が「想いの欠片（ゴースト）」の問題を解決していき、その過程でメンバーが増え、やがて正式に写真部を発足する。そして、様々なイベントを乗り越え、ついには詩希が色を取り戻すに至り、卓馬とともに未来へと進んでいく――……そんな物語が読みたい。
アニメ『色づく世界の明日から』を見たあとだから言えることかもしれないが、この作品には“可能性”を感じた。
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