本書のテーマ、ルールメイキングの視点を持ったビジネス構築に強く賛成。そして政・官・民連携したPDCAサイクルの運用の可能性に気づきを得られた。政と官では社会問題解決の法制度は創れても、実際に解決するのは民間の力。ビジネスとしてお金が回る仕組みを創らないと実現したとは言えない。
本書の指摘どおり企業側は政や官が解決してくれると考えがちだが、それでは浅い。甘い。民間企業は社会問題解決のための事業を構想し、この実現のために何をやって欲しいかを正確に、そしてタイムリーに政と官に伝える、政と官はこれを随時前広に受入れ審議し、法改正や補助金制度等インセンティブに落とし込む、更にその効果を企業とともに掴み、次年度の改善へとつなげる・・・そうした政・官・民連携したPDCAサイクルを回してゆく必要がありますね。本書は「政・官」と「民」が噛み合わず空回りしている現状への警鐘。本書で気づきを得て、事業を企画する者として次の一手が見えてきました。本書の試みに深く感謝。
一方で、本書でも指摘のとおり、日本では企業が政治家に近づいて・・・というのは現実的には組織防衛の観点から二の足を踏むのも避けれない現実。スキャンダルに対して企業の立場は弱い。政争に巻き込まれた場合のスケープゴートとされる恐怖を払拭できない。社員の家族の人生までかかっている。企業が存続するために避けられるリスクは全て避けたい。それが市場を動かす心理。無視できない。こうした政治と企業の連携の「ウエットなのりしろ」をどのように実現してゆくか。実務に踏み込んだ事例もあり参考になる。
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世界市場で勝つルールメイキング戦略 技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか Kindle版
いまグローバル市場で成功している企業は「ルール」を武器にしている。欧米企業が「技術開発」「マーケティング」とならんで重視する「ルールメイキング戦略」とは何か? 最新の事例とノウハウを紹介する。
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2016/11/18
- ファイルサイズ12678 KB
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登録情報
- ASIN : B01MSM7C15
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2016/11/18)
- 発売日 : 2016/11/18
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 12678 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 230ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 234,744位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 16,804位社会・政治 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
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昭和39年生まれ。サレジオ幼稚園、東京学芸大学附属世田谷小・中学校、神奈川県立白山高校、立教大学社会学部卒業。昭和63年衆議院議員秘書。政策と陳情を担当し「湘南ナンバー」創設担当者として尽力をつくす。平成11年横浜市会議員(2期)。平成17年衆議院議員。衆議院文部科学委員。自民党無駄撲滅プロジェクトチーム担当主査。クレジット決済型献金、所謂「ネット献金」を日本で初めて導入する。平成21年衆議院選挙落選。自民党神奈川県第8選挙区(横浜市青葉区・緑区)支部長。平成24年2期目の衆議院議員。妻、娘と暮らす血液型B型。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年6月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
論理が明確であり、かつ日本企業に足りないことが明確に述べられている
1)論理の明確さ
事例が多く、論理が明確である。日本企業に足りないこと、ルールメイキングが何であるかを具体的に記述している
日本メーカーは品質はいいが、事業で成功することに限界が生じているその理由を明確な論点をもって語っている
2)具体性
例えばウォルマートなどの具体的な事例が記述されている。デュポンなどの化学メーカー、の事例含め、組織機能、どのようなことをルールメーキングでやってきたか、具体的な地域、具体的に策定したルールについて記述があり、分りやすかった
この本を読んだ、日本企業があまりにも正直すぎることを知った。欧州メーカーは当たり前にルールメーキングしている。いまやルールメーキングなしには新しい市場を作ることはできない。例えば燃料電池車、EV、自動運転などはいまだ世の中にないため、それを支える仕組み、法律、制度などから作らなければならない。そのため、日本人がこうした発想にたつことは本当に喫緊の課題である。
日本は品質の良さでガラパゴスに追いやられることがある。そうではなくて市場を形成するためには自分からルールメークしなければだめだ
1)論理の明確さ
事例が多く、論理が明確である。日本企業に足りないこと、ルールメイキングが何であるかを具体的に記述している
日本メーカーは品質はいいが、事業で成功することに限界が生じているその理由を明確な論点をもって語っている
2)具体性
例えばウォルマートなどの具体的な事例が記述されている。デュポンなどの化学メーカー、の事例含め、組織機能、どのようなことをルールメーキングでやってきたか、具体的な地域、具体的に策定したルールについて記述があり、分りやすかった
この本を読んだ、日本企業があまりにも正直すぎることを知った。欧州メーカーは当たり前にルールメーキングしている。いまやルールメーキングなしには新しい市場を作ることはできない。例えば燃料電池車、EV、自動運転などはいまだ世の中にないため、それを支える仕組み、法律、制度などから作らなければならない。そのため、日本人がこうした発想にたつことは本当に喫緊の課題である。
日本は品質の良さでガラパゴスに追いやられることがある。そうではなくて市場を形成するためには自分からルールメークしなければだめだ
2017年3月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なぜ日本が負け続けるのかよく分かる一冊
ケンカに弱い日本は本質的にチーム替えしない勝てないことがよくわかった
事例がもう少しあったらもっと面白い
ケンカに弱い日本は本質的にチーム替えしない勝てないことがよくわかった
事例がもう少しあったらもっと面白い
2017年8月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
サプライヤーとして優秀な日本企業はいっぱいあるが,ルール策定を含めたトータルアーキテクチャーの資質は残念ながらどこも持ち合わせていない。グローバルで戦える企業になるためには,この本に書かれているような観点は重要。
2016年12月2日に日本でレビュー済み
まず、本書に述べられている、「ルール」とは、ISO、IEC等の「国際標準」、各国の制度、規制等を意味しております。
もうだいぶ前から、日本の企業は、グローバル市場において「技術で勝って、ビジネスで負ける」と言われてきました。
なぜ、日本の企業が、グローバル市場において「技術で勝って、ビジネスで負ける」のか?を解き明かし、それを克服する方法を提示したのが、本書です。
日本の企業に欠けているのは、「ロビイング力」、「ルールメイキング戦略」である、というのです。
多くの日本企業には、その「ロビイング力」や「ルールメイキング力」を発揮するための人材、組織などもことごとく不足していると言います。
要するに、本書は、「社会課題を市場化するルールメイキング戦略」の指南書なのです。
なお、「ロビイング」については、こちらをご覧下さい。『ロビイングのバイブル』(プレジデント社)
[...]
ある新しい市場を創ろうとするならば、「技術開発力」、「マーケティング力」が大事ですが、「ルールメイキング力」も必要である、と言います。
本書の執筆者は、多くがコンサルティング・ファームの方であり、他には、政治家、大学教授、官僚である。一人だけが、日本企業の方である。
執筆者の指摘する主張は、ひとつひとつごもっともである。頷く点もあるものばかりである。
しかし、通読して考えたのは、これら指摘される点について、現在の日本企業の個社で全部について対応が可能であろうか?という疑問が湧く。
欧米系のグローバル企業は、国際NGOなどとより良い関係を築き、これらの戦略を実行している。しかし、日本の企業の個社は、これらのような他の団体と関係を築くことは、得意だろうか。日本の企業は、これらの戦略について、例えば、業界団体などとの分業(切り分け)が必要ではないか、と痛切に感じた。
とにかく、日本企業の経営層や海外渉外担当者にとっては、現在、必読な文献であることは間違いがないであろう。
■『世界市場で勝つルールメイキング戦略- 技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか』(朝日新聞出版)
概要:
編著者: 國分俊史、福田峰之、角南篤
構成:
【第1章】なぜ今、ルールメイキング戦略なのか?(國分 俊史)
【第2章】ルールで市場を囲い込む欧米、取り残される日本(藤井 敏彦)
【第3章】企業経営における標準化とルールメイキング戦略(市川 芳明)
【第4章】経営戦略としてのルールメイキング戦略の方法論(羽生田 慶介)
【第5章】社会課題を成長機会に転じるルールメイキング戦略(國分 俊史)
【第6章】安全保障経済政策とグローバルルールメイキング(福田 峰之、國分 俊
史、河本 孝志)
【第7章】科学技術外交と国際ルールメイキング(角南 篤)
【第8章】日本の政治家が世界でルールメイキング力を高めるために必要な施策(福
田 峰之)
【第9章】ルールメイキング能力を担う「イノベーターシップ」(徳岡 晃一郎)
【第10章】ルールメイキング戦略を組織的に推進する「コーポレート・アフェアー
ズ」機能(金山 亮)
もうだいぶ前から、日本の企業は、グローバル市場において「技術で勝って、ビジネスで負ける」と言われてきました。
なぜ、日本の企業が、グローバル市場において「技術で勝って、ビジネスで負ける」のか?を解き明かし、それを克服する方法を提示したのが、本書です。
日本の企業に欠けているのは、「ロビイング力」、「ルールメイキング戦略」である、というのです。
多くの日本企業には、その「ロビイング力」や「ルールメイキング力」を発揮するための人材、組織などもことごとく不足していると言います。
要するに、本書は、「社会課題を市場化するルールメイキング戦略」の指南書なのです。
なお、「ロビイング」については、こちらをご覧下さい。『ロビイングのバイブル』(プレジデント社)
[...]
ある新しい市場を創ろうとするならば、「技術開発力」、「マーケティング力」が大事ですが、「ルールメイキング力」も必要である、と言います。
本書の執筆者は、多くがコンサルティング・ファームの方であり、他には、政治家、大学教授、官僚である。一人だけが、日本企業の方である。
執筆者の指摘する主張は、ひとつひとつごもっともである。頷く点もあるものばかりである。
しかし、通読して考えたのは、これら指摘される点について、現在の日本企業の個社で全部について対応が可能であろうか?という疑問が湧く。
欧米系のグローバル企業は、国際NGOなどとより良い関係を築き、これらの戦略を実行している。しかし、日本の企業の個社は、これらのような他の団体と関係を築くことは、得意だろうか。日本の企業は、これらの戦略について、例えば、業界団体などとの分業(切り分け)が必要ではないか、と痛切に感じた。
とにかく、日本企業の経営層や海外渉外担当者にとっては、現在、必読な文献であることは間違いがないであろう。
■『世界市場で勝つルールメイキング戦略- 技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか』(朝日新聞出版)
概要:
編著者: 國分俊史、福田峰之、角南篤
構成:
【第1章】なぜ今、ルールメイキング戦略なのか?(國分 俊史)
【第2章】ルールで市場を囲い込む欧米、取り残される日本(藤井 敏彦)
【第3章】企業経営における標準化とルールメイキング戦略(市川 芳明)
【第4章】経営戦略としてのルールメイキング戦略の方法論(羽生田 慶介)
【第5章】社会課題を成長機会に転じるルールメイキング戦略(國分 俊史)
【第6章】安全保障経済政策とグローバルルールメイキング(福田 峰之、國分 俊
史、河本 孝志)
【第7章】科学技術外交と国際ルールメイキング(角南 篤)
【第8章】日本の政治家が世界でルールメイキング力を高めるために必要な施策(福
田 峰之)
【第9章】ルールメイキング能力を担う「イノベーターシップ」(徳岡 晃一郎)
【第10章】ルールメイキング戦略を組織的に推進する「コーポレート・アフェアー
ズ」機能(金山 亮)
2017年2月4日に日本でレビュー済み
「ルール」に従うだけでなく、「ルール」を構想し、作成し、売り込み、普及させるという態度、戦略、方向が必要だというのは、国際標準に関係した人には、基本的に了解されている、常識と言ってもよいだろう。
本書は、基本的には、企業経営というテーマに関して、「ルールメイキング戦略」を取り上げ、それを9人の著者が、それぞれの専門分野や立場から解説したものになっている。
見出しも含めたので長くなるが、目次で大体の内容が分かる。
まえがき
●第1章 なぜ今、ルールメイキング戦略なのか――國分俊史
ルールで追い込まれる日本のハイブリッド車
技術革新を収益にするルール
外交・軍事・通商政策とルール
ルールメイキングを考える枠組み
日本にルールメイキング戦略が欠落していた背景
●第2章 ルールで市場を囲い込む欧米、取り残される日本――藤井敏彦
ルールメイキングのイニシアチブを握る
新興国を覆うグローバルルール
新興国にルール輸出を仕掛ける欧米
厳しい水準の規制を受け入れるアジア
法律に対する認識の違いが生む発想力の差
欧米企業では当たり前の政府の使い倒し
深めるべき政府との組み方
社会を構想する
●第3章 企業経営における標準化とルールメイキング戦略――市川芳明
日本型ビジネスの課題
標準化の新しい活用方法
企業のビジネスに役立つ標準化規格
ビジネスに活かす直交戦略
市場を創出するためのルールメイキング戦略
日本企業が今後取り組むべき戦略
●第4章 経営戦略としてのルールメイキング戦略の方法論――羽生田慶介
「経済合理性」「利益インパクト」の問いに応えなくてはならない
基準や規制の調和だけでも利益が倍になる
ルールメイキングの基本「スタンダード×レギュラーション」
日本の弱点「認証」
新興国のルール「履行」支援がルールメイキングの糸口になる
日本企業は「海外の業界団体」での意思形成に参画すべし
まずは「ルールの活用」で当期利益を上げよ
ルールをつくりながら市場を広げる
●第5章 社会課題を成長機会に転じるルールメイキング戦略――國分俊史
社会課題を市場にする経営姿勢
社会秩序の形成を自ら推し進める企業
社会課題起点からのルールメイキングの難しさ
社会課題のルール化の兆候を戦略的に取り込むべき
脱日本基準の必要性
グローバル企業で常識化した“加害量ゼロ"思想
NGOからの指摘を巨大なイノベーションの機会に転換する
日本人気質からの脱却なしには市場化できない社会課題
●第6章 安全保障経済政策とグローバルルールメイキング――福田峰之/國分俊史/河本孝志
安全保障経済政策の必要性
自国に直結する危機にとどまる投資範囲
安全保障の視点から経済政策をデザインする米国
本質的には全く低下させていない米国防予算
米国リバランス政策の本質と日本の新たな役割
安全保障経済政策で入り込むべきインフラ開発
日本が能動的に担うべきアジアの自立能力構築支援
災害予測に役立つ地質調査結果や設計コンセプトを強みに
データ共有先を米軍にまで広げることの有効性
インフラ輸出成功の鍵になるサイバーセキュリティ品質
危機になり始めたサイバーセキュリティの国際ルールメイキング
SDGsを起点とした減災貢献型インフラルールの可能性
●第7章 科学技術外交と国際ルールメイキング――角南篤
科学技術と外交
科学技術外交の類型化
国際的ルールメイキングと科学技術外交
司法外交と国家間合意としての「ソフトロー」
「ソフト・パワー」としての科学技術イノベーション
科学技術外交の実現に向けた今後の取り組み
●第8章 日本の政治家が世界でルールメイキング力を高めるために必要な施策――福田峰之
ルールメイキングに不可欠な政治家の有効活用
日本の政治家に生じている構造変化
政治家と企業の新たな関係の始まり
世界レベルで政治家との対話を展開する欧米企業
欧米のルールメイキング戦略推進体制
日本企業および日本政府のルールメイキング戦略への取り組み
政治家を活用すべき日本企業
政治家の選定の視点
日本企業の海外拠点が持つ影響力
日本企業の影響力を発揮するために必要な情報
●第9章 ルールメイキング能力を担う「イノベーターシップ」――徳岡晃一郎
課題先進国とは課題簸小化先進国でいいのか
イノベーションとは未来と向き合うこと
「モノづくり」→「コトづくり」→「ワクづくり」
三つの力を身につける
イノベーターシップに必要な五つの力
●第10章 ルールメイキング戦略を組織的に推進する「コーポレート・アフェアーズ」機能――金山亮
日本企業に不可欠となるルールメイキング戦略機能
ルールメイキング戦略機能を包含し強化する「コーポレート・アフェアーズ」
ウォルマートにおけるルールメイキング戦略機能の展開
多様なNGOや政治家・政府機関などとのネットワーキング
統合的な戦略コミュニケーション
日本企業への示唆:「ESG投資」の拡大が示す構造変化の中で
組織的な推進体制の必要性
あとがき
著者らの主たる背景が、デロイトトーマツコンサルティングなので、コンサル流の分かりやすいまとめになっている。
但し、例えば、副題の「技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか」など、俗受けしそうだけれど、本質的には何なのか、といった部分の深堀とか新たな発見を期待すると、がっかりする。
「ルールメイキング」は市民社会にとっても重要な論点で、本書のあとがきには、「ルールメイキング人材の育成プログラム開発」が著者らの3つの目的の一つに上げられているが、これが難しい背景に、日本社会における「ルールメイキング」に対する感度や習熟度といった問題があるのだが、これも本書では触れられていない。
私には、第9章での「イノベーション/イノベータ」論が面白かった。見出しの「課題先進国とは課題簸小化先進国でいいのか」という問題提起など、掛け声だけの日本の現状をよくとらえている。ここでのイノベーションは、ソーシャルイノベーションに分類されるものだ。日本の伝統として近江商人以来、自己利益追求ばかりではないということが言われるが、一方で、明示的に、企業が社会改革に取り組んできたかというと、難しいところだ。
欧米企業に政府、官僚、NGOを含めたネットワークが、半ばは、個人に属するものとしてあるのが事実で、その点での、日本の企業の活動の低調さは、実は、個人のネットワークの低調さにも結び付いているのではないかと懸念しているのだが、ここで取り上げられているのは、企業人、企業活動のレベル。
未来志向がイノベータの特性として挙げられているが、優れた未来ビジョンは、鋭い現状分析と実は対になっているはずで、ルールメイキングもやみくもに、ルールをつくればいいというものではなく、あえて「ルールをつくらない」という戦略もあるはず。
こういった問題点も含めて、考えるための良いきっかけになる本だ。
本書は、基本的には、企業経営というテーマに関して、「ルールメイキング戦略」を取り上げ、それを9人の著者が、それぞれの専門分野や立場から解説したものになっている。
見出しも含めたので長くなるが、目次で大体の内容が分かる。
まえがき
●第1章 なぜ今、ルールメイキング戦略なのか――國分俊史
ルールで追い込まれる日本のハイブリッド車
技術革新を収益にするルール
外交・軍事・通商政策とルール
ルールメイキングを考える枠組み
日本にルールメイキング戦略が欠落していた背景
●第2章 ルールで市場を囲い込む欧米、取り残される日本――藤井敏彦
ルールメイキングのイニシアチブを握る
新興国を覆うグローバルルール
新興国にルール輸出を仕掛ける欧米
厳しい水準の規制を受け入れるアジア
法律に対する認識の違いが生む発想力の差
欧米企業では当たり前の政府の使い倒し
深めるべき政府との組み方
社会を構想する
●第3章 企業経営における標準化とルールメイキング戦略――市川芳明
日本型ビジネスの課題
標準化の新しい活用方法
企業のビジネスに役立つ標準化規格
ビジネスに活かす直交戦略
市場を創出するためのルールメイキング戦略
日本企業が今後取り組むべき戦略
●第4章 経営戦略としてのルールメイキング戦略の方法論――羽生田慶介
「経済合理性」「利益インパクト」の問いに応えなくてはならない
基準や規制の調和だけでも利益が倍になる
ルールメイキングの基本「スタンダード×レギュラーション」
日本の弱点「認証」
新興国のルール「履行」支援がルールメイキングの糸口になる
日本企業は「海外の業界団体」での意思形成に参画すべし
まずは「ルールの活用」で当期利益を上げよ
ルールをつくりながら市場を広げる
●第5章 社会課題を成長機会に転じるルールメイキング戦略――國分俊史
社会課題を市場にする経営姿勢
社会秩序の形成を自ら推し進める企業
社会課題起点からのルールメイキングの難しさ
社会課題のルール化の兆候を戦略的に取り込むべき
脱日本基準の必要性
グローバル企業で常識化した“加害量ゼロ"思想
NGOからの指摘を巨大なイノベーションの機会に転換する
日本人気質からの脱却なしには市場化できない社会課題
●第6章 安全保障経済政策とグローバルルールメイキング――福田峰之/國分俊史/河本孝志
安全保障経済政策の必要性
自国に直結する危機にとどまる投資範囲
安全保障の視点から経済政策をデザインする米国
本質的には全く低下させていない米国防予算
米国リバランス政策の本質と日本の新たな役割
安全保障経済政策で入り込むべきインフラ開発
日本が能動的に担うべきアジアの自立能力構築支援
災害予測に役立つ地質調査結果や設計コンセプトを強みに
データ共有先を米軍にまで広げることの有効性
インフラ輸出成功の鍵になるサイバーセキュリティ品質
危機になり始めたサイバーセキュリティの国際ルールメイキング
SDGsを起点とした減災貢献型インフラルールの可能性
●第7章 科学技術外交と国際ルールメイキング――角南篤
科学技術と外交
科学技術外交の類型化
国際的ルールメイキングと科学技術外交
司法外交と国家間合意としての「ソフトロー」
「ソフト・パワー」としての科学技術イノベーション
科学技術外交の実現に向けた今後の取り組み
●第8章 日本の政治家が世界でルールメイキング力を高めるために必要な施策――福田峰之
ルールメイキングに不可欠な政治家の有効活用
日本の政治家に生じている構造変化
政治家と企業の新たな関係の始まり
世界レベルで政治家との対話を展開する欧米企業
欧米のルールメイキング戦略推進体制
日本企業および日本政府のルールメイキング戦略への取り組み
政治家を活用すべき日本企業
政治家の選定の視点
日本企業の海外拠点が持つ影響力
日本企業の影響力を発揮するために必要な情報
●第9章 ルールメイキング能力を担う「イノベーターシップ」――徳岡晃一郎
課題先進国とは課題簸小化先進国でいいのか
イノベーションとは未来と向き合うこと
「モノづくり」→「コトづくり」→「ワクづくり」
三つの力を身につける
イノベーターシップに必要な五つの力
●第10章 ルールメイキング戦略を組織的に推進する「コーポレート・アフェアーズ」機能――金山亮
日本企業に不可欠となるルールメイキング戦略機能
ルールメイキング戦略機能を包含し強化する「コーポレート・アフェアーズ」
ウォルマートにおけるルールメイキング戦略機能の展開
多様なNGOや政治家・政府機関などとのネットワーキング
統合的な戦略コミュニケーション
日本企業への示唆:「ESG投資」の拡大が示す構造変化の中で
組織的な推進体制の必要性
あとがき
著者らの主たる背景が、デロイトトーマツコンサルティングなので、コンサル流の分かりやすいまとめになっている。
但し、例えば、副題の「技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか」など、俗受けしそうだけれど、本質的には何なのか、といった部分の深堀とか新たな発見を期待すると、がっかりする。
「ルールメイキング」は市民社会にとっても重要な論点で、本書のあとがきには、「ルールメイキング人材の育成プログラム開発」が著者らの3つの目的の一つに上げられているが、これが難しい背景に、日本社会における「ルールメイキング」に対する感度や習熟度といった問題があるのだが、これも本書では触れられていない。
私には、第9章での「イノベーション/イノベータ」論が面白かった。見出しの「課題先進国とは課題簸小化先進国でいいのか」という問題提起など、掛け声だけの日本の現状をよくとらえている。ここでのイノベーションは、ソーシャルイノベーションに分類されるものだ。日本の伝統として近江商人以来、自己利益追求ばかりではないということが言われるが、一方で、明示的に、企業が社会改革に取り組んできたかというと、難しいところだ。
欧米企業に政府、官僚、NGOを含めたネットワークが、半ばは、個人に属するものとしてあるのが事実で、その点での、日本の企業の活動の低調さは、実は、個人のネットワークの低調さにも結び付いているのではないかと懸念しているのだが、ここで取り上げられているのは、企業人、企業活動のレベル。
未来志向がイノベータの特性として挙げられているが、優れた未来ビジョンは、鋭い現状分析と実は対になっているはずで、ルールメイキングもやみくもに、ルールをつくればいいというものではなく、あえて「ルールをつくらない」という戦略もあるはず。
こういった問題点も含めて、考えるための良いきっかけになる本だ。