私はまだ未婚で、親との関係に悩んでいた子ども側の人間としてこの本を拝読しました。
私の母と父はずっと仲が悪く、また母は東京にひとり嫁いできて友達とも実家とも疎遠だったようで、ほぼひとりで私と弟を育て、よく感情的になって手を上げました。
父はそんな母を「情緒不安定で虐待だ。子供が可哀想だと思わないのか」とよく大声で怒っていました。
私は大人になってから自分はアダルトチルドレンではないか? と思うことがあり、色々調べているうちに大日向先生の御本に出会い、目からウロコが落ちました。
母に「完璧なお母さんでいてよ」と皆が求めすぎていたのではないか。
手を上げて怒鳴る母は子供の私には辛かったけれど、その原因は私でも母でもなかったのではないか。
父は、母を『叱る』ばかりだったけれど本当にそれでよかったのか。
母はひとりの人間として、友達も頼る人もいない土地で孤独ではなかったのか。
私の一番古い記憶は「どうやって子供を育てたらいいのか分からないんです!」と床に手をついて泣き叫ぶ母と「お前の母親がやったようにやれよ、母親なら分かるだろう!」と怒鳴りつけている父の姿です。
私はもうすぐ母が私を産んだ歳になります。今、私が子供を産んで一人で育てたとしたら、自分の母に求めたような、完璧な母親になれるとは思えません。
私の世代には、親ガチャ、毒親という言葉があり、情緒未成熟な親に育てられた苦しみを持つ子供の多い世代です。けれどそれもまた、逆説的な意味で「完璧なお母さんに育ててもらえなかった」という幻想に縛られているだけなのかもしれません。
少なくとも私は、母が母なりに一生懸命私を育ててくれたことを理解して涙が出ました。すべてゆるしました。
料理も上手ではなかったけど、私の好きなキャロットケーキは何度も焼いてくれた母。
大学で海外児童文学を専攻するほど本が好きで、赤毛のアンや若草物語を楽しそうに読ませてくれた母。
そんな母のいいところを、娘の私は覚えています。母はマリア様ではなかったけれど、それで良いと思っています。産んでくれて、悩みながら育ててくれてありがとうと思います。
近代の日本の「母性神話」は、ある意味ではもはや「おふくろ」に慰めを求める中高年男性向けのファンタジーなのかもしれません。
時々イライラしたりキーッとなったり休んだりしながら、子供のことを心から愛し、仕事や育児に奮闘する同世代の友人たちは、みんな不完全な生身の女性で、ステキなお母さんです。
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増補 母性愛神話の罠 こころの科学叢書 Kindle版
原著刊行から15年。子ども・子育て支援新制度スタートの年に、燻り続ける母性愛神話、三歳児神話の「いま」を増補し、装いも新たに再刊。
- 言語日本語
- 出版社日本評論社
- 発売日2016/4/15
- ファイルサイズ1288 KB
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商品の説明
著者について
恵泉女学園大学教授/子育てひろば「あい・ぽーと」代表理事
登録情報
- ASIN : B01E4QO6I2
- 出版社 : 日本評論社 (2016/4/15)
- 発売日 : 2016/4/15
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1288 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 221ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 262,823位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
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- - 9,131位倫理学・道徳 (Kindleストア)
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