進化といえば、ダニエル・リーバーマン『人体600万年史―科学が明かす進化・健康・疾病』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)のように人間中心の進化を取り上げることが多い。しかし本書は、生態系全体の変化を追っている。ある種がある種の機能を獲得したら、その種がどのようになったかではなく、その種を含む生態系がどのようになるかを推理することが本書の目的である。もちろん謎解きは古生物が残した化石が明らかにしてくれる。このアイデアは今まであるようで、なかったのではないか。
1.カンブリア爆発
カンブリア紀に動物の化石が大量に発見されたことから、この時期に動物が大量に発生したという意味で、カンブリア爆発と呼ばれていた。どういう訳か最近カンブリア爆発という言葉を聞かなくなった。
その訳を本書で知ることができた。訳は、外骨格を持つ動物、多くは節足動物が発生し、彼らは化石を残すことができ、突然に動物が発生したように見えたからだ。それまでの動物は、化石になるような硬組織を持たなかった。今では、カンブリア爆発とは、動物の硬組織化の促進とほぼ同義に使われている(p.19)。
それまでの動物の存在は、海底面に残された彼らの移動のあと、つまり生痕化石や、顕微鏡サイズの軟体動物の部品とおぼしい小さな化石から確認することができる。
2.眼の誕生は世界をどう変えたか
軟組織の眼が化石に残ることは考えにくいのだが、約5億2000万年前のアラルコメナエウスに生命最古の眼が確認できている(p.46)。しかし、その眼の性能までは分かっていない。その後の、アノマロカリスは数十センチの巨体で、カンブリア紀の海の史上最初の覇者となっていた。2011年に発表されたパターソンたちの研究によれば、1万6000個以上の複眼だった(p.49)。現在のトンボが2万個以上なので、既にかなり進化していたと言える。
眼が進化すれば、天敵の接近をいち早く発見し逃げることができる。逆に、獲物の位置を素早く正確に特定できる。この防御と攻撃の闘いで、防御側がトゲや殻を発達させ強化する→攻撃側がその殻をものともしない強力な顎(あご)を発達させる→弱肉強食の生存競争は眼の進化により更に激化する。
3.次の質問への答えは
遠隔検知機能は眼だけではない。嗅覚(きゅうかく)、聴覚、スピノサウルスの圧力センサー、ハクジラ類のソナー、カモノハシ類の電気感知能力など多彩である。
・あしが進化したら.....
・飛べるようになったら.....
・愛情が進化したら.....
化石燃料を手に入れた人類がどうなったか。原子のエネルギーをコントロールできるようになって人類はどうなったか。距離の制約なく情報を交換できるようになって人類はどうなったか。食物を栽培するために森を切り開いた人類はどうなったか。などの人類の行為が、意図せぬ結果を生んでいることを思い出した。
最後に、文中のイラストが素晴らしい。特にページをまたいで描かれた彼らは、今にも動き出しそうである。
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機能獲得の進化史 単行本 – 2021/8/11
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生命史において、最初に「眼」や「顎」を、「あし」や「翼」などの機能を獲得したのはどのような生物だったのだろう。そしてその始点に、化石記録によってどこまで迫ることができるのだろうか。
新たな機能を獲得した種の出現によって、その生態系での生存のルールが一変することがある。たとえば約6億年前には、眼も手足もない生物たちが海で暮らしていた。しかしひとたび眼を持つ生物が出現すると、生態系が激変した。弱肉強食の世界に変わったのだ。
その後も、たとえばあしを転用することで陸上生態系への進出が、乾燥に耐えうる卵を生むことで完全な陸上生活が可能になった。巣を作ることで、生存の難しい地域に進出できるようにもなった。
飛行能力、暗視能力、反響定位能力。新たな生存のルールのもとで、生物は次々に新たな機能を獲得していき――そして現在、生物は地球上の至るところにはびこっている。44点の古生物イラストとともに、6億年の生命史に転換点をもたらした生物たちに迫る書。
新たな機能を獲得した種の出現によって、その生態系での生存のルールが一変することがある。たとえば約6億年前には、眼も手足もない生物たちが海で暮らしていた。しかしひとたび眼を持つ生物が出現すると、生態系が激変した。弱肉強食の世界に変わったのだ。
その後も、たとえばあしを転用することで陸上生態系への進出が、乾燥に耐えうる卵を生むことで完全な陸上生活が可能になった。巣を作ることで、生存の難しい地域に進出できるようにもなった。
飛行能力、暗視能力、反響定位能力。新たな生存のルールのもとで、生物は次々に新たな機能を獲得していき――そして現在、生物は地球上の至るところにはびこっている。44点の古生物イラストとともに、6億年の生命史に転換点をもたらした生物たちに迫る書。
- 本の長さ200ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2021/8/11
- 寸法13.7 x 2.3 x 19.5 cm
- ISBN-104622090295
- ISBN-13978-4622090298
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商品の説明
著者について
土屋健(つちや・けん)
2003年、金沢大学大学院自然科学研究科修士課程修了。科学雑誌『Newton』の編集記者、部長代理を経て、現在、オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター。日本古生物学会会員、日本地質学会会員、日本文藝家協会会員。専門は地質学、古生物学。近著に、『恐竜・古生物に聞く第6の大絶滅 君たち(人類)はどう生きる?』(イースト・プレス、2021)、『ゼロから楽しむ古生物 姿かたちの移り変わり』『地球生命 水際の興亡史』(ともに技術評論社、2021)など。ほか、著書・監修書多数。2019年、日本古生物学会貢献賞を受賞。
群馬県立自然史博物館(ぐんまけんりつしぜんしはくぶつかん)
1996年、富岡製糸場で有名な群馬県富岡市に開館。地球と生命の歴史、群馬県の豊かな自然を紹介する「見て・触れて・発見できる」博物館。常設展には、全長15mのカマラサウルスの実物骨格やブラキオサウルスの全身骨格、ティランノサウルスの実物大ロボット、トリケラトプスの産状復元と全身骨格などの恐竜をはじめ、三葉虫の進化系統樹や大型ウミサソリ、皮膚の印象とサメの噛み跡が残ったヒゲクジラ類化石やヤベオオツノジカの全身骨格などを展示。そのほか、群馬県の豊かな自然を再現したブナ林などのジオラマ、ダーウィン直筆の手紙、アウストラロピテクスなど化石人類のジオラマなどが並ぶ。企画展、特別展を各シーズンで開催。
かわさきしゅんいち
1990年、大阪府生まれ。一般企業に就職後、独立。現在、絵本作家、動物画家、漫画家。生物多様性の面白さを伝えるため、時代や分類問わず生き物の目線や人とのつながりを描く。著書に絵本『うみがめぐり』(仮説社、2017年)がある。また、『アノマロカリス解体新書』(ブックマン社、2020)『地球生命 水際の興亡史(生物ミステリー プロ)』(技術評論社、2021)などに線画や水彩画を提供。本書の装画、第1章、第2章、第4章、コラムと、第3章のエオラプトルのイラストを制作。情報発信はTwitter: @nupotsu104より。
藤井康文(ふじい・やすふみ)
1949年、山口県生まれ。1972年、立教大学経済学部卒業。広告代理店、制作会社を経て、1980年代から現在まで古生物復原画家として活躍。著書に『藤井康文 恐竜画集』(日販アイ・ピー・エス、2019)がある。また、『本格イラスト事典 恐竜』(スタジオタッククリエイティブ、2021)、『恐竜(学研の図鑑LIVE)』(学研、2014)、『小学館の図鑑NEO 恐竜』(小学館、2002)など、多数の書籍・雑誌にイラストを提供。本書の第5章と、第3章のエオラプトル以外のイラストを制作。
2003年、金沢大学大学院自然科学研究科修士課程修了。科学雑誌『Newton』の編集記者、部長代理を経て、現在、オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター。日本古生物学会会員、日本地質学会会員、日本文藝家協会会員。専門は地質学、古生物学。近著に、『恐竜・古生物に聞く第6の大絶滅 君たち(人類)はどう生きる?』(イースト・プレス、2021)、『ゼロから楽しむ古生物 姿かたちの移り変わり』『地球生命 水際の興亡史』(ともに技術評論社、2021)など。ほか、著書・監修書多数。2019年、日本古生物学会貢献賞を受賞。
群馬県立自然史博物館(ぐんまけんりつしぜんしはくぶつかん)
1996年、富岡製糸場で有名な群馬県富岡市に開館。地球と生命の歴史、群馬県の豊かな自然を紹介する「見て・触れて・発見できる」博物館。常設展には、全長15mのカマラサウルスの実物骨格やブラキオサウルスの全身骨格、ティランノサウルスの実物大ロボット、トリケラトプスの産状復元と全身骨格などの恐竜をはじめ、三葉虫の進化系統樹や大型ウミサソリ、皮膚の印象とサメの噛み跡が残ったヒゲクジラ類化石やヤベオオツノジカの全身骨格などを展示。そのほか、群馬県の豊かな自然を再現したブナ林などのジオラマ、ダーウィン直筆の手紙、アウストラロピテクスなど化石人類のジオラマなどが並ぶ。企画展、特別展を各シーズンで開催。
かわさきしゅんいち
1990年、大阪府生まれ。一般企業に就職後、独立。現在、絵本作家、動物画家、漫画家。生物多様性の面白さを伝えるため、時代や分類問わず生き物の目線や人とのつながりを描く。著書に絵本『うみがめぐり』(仮説社、2017年)がある。また、『アノマロカリス解体新書』(ブックマン社、2020)『地球生命 水際の興亡史(生物ミステリー プロ)』(技術評論社、2021)などに線画や水彩画を提供。本書の装画、第1章、第2章、第4章、コラムと、第3章のエオラプトルのイラストを制作。情報発信はTwitter: @nupotsu104より。
藤井康文(ふじい・やすふみ)
1949年、山口県生まれ。1972年、立教大学経済学部卒業。広告代理店、制作会社を経て、1980年代から現在まで古生物復原画家として活躍。著書に『藤井康文 恐竜画集』(日販アイ・ピー・エス、2019)がある。また、『本格イラスト事典 恐竜』(スタジオタッククリエイティブ、2021)、『恐竜(学研の図鑑LIVE)』(学研、2014)、『小学館の図鑑NEO 恐竜』(小学館、2002)など、多数の書籍・雑誌にイラストを提供。本書の第5章と、第3章のエオラプトル以外のイラストを制作。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2021/8/11)
- 発売日 : 2021/8/11
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 200ページ
- ISBN-10 : 4622090295
- ISBN-13 : 978-4622090298
- 寸法 : 13.7 x 2.3 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 406,125位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,441位動物学
- カスタマーレビュー:
著者について
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サイエンスライター。
オフィス ジオパレオント代表。
埼玉県出身。
金沢大学大学院自然科学研究科で、修士(理学)を取得。
元・科学雑誌『Newton』の編集記者、部長代理。2012年より現職。
日本地質学会会員。日本地質学会一般向け広報誌『ジオルジュ』デスク。
日本古生物学会会員。2019年、サイエンスライターとして史上初めて日本古生物学会貢献賞を受賞。
日本文藝家協会会員。