アフリカで誕生した人類が、発祥以降の辿った道を分かり易く解説してくれる。分かり易さというのは個人の知識などにも左右されるが、多少の専門用語に、「たしか前に説明があったが何だっけ?」のような短い中断は避けられない。メモをとりながら注意深く読み進めれば壮大な出来事が目の前に蘇ること間違いない。
最近の人類学研究でのペーボ博士のノーベル賞の成果も踏まえ、圧巻だったのはデニソワ人やネアンデルタール人が1万数千年前まで存在し、現代人Homo sapiensとの交配がそれ程昔ではない1万5年ほど前に起こっていた可能性をきちんと科学的に解説してくれたことは有り難い。
これを読み進めてゆくと、いくつもの疑問が湧いてくる。それはまだまだこの分野が発展途上にあり、まさに日進月歩で新事実がでてくることから、数年後には本書の内容はいくつも塗りかわれれると思う。そういう意味では2020年代始めが “旬 ” なのだろう。
下記に、課題を挙げてみたい。
・日本の古代人や幻の明石原人のような旧人類の遺骨や化石を発見する努力をしてほしい。洞窟が鍵になりそうだ。
・デニソワ人やネアンデルタール人の遺伝子が日本人やアジア、ヨーロッパ人に残っていると言うが、これは核DNAでのこと。母親から遺伝するミトコンドリアDNA(mtDNA)では見つかっていない。これはなぜなのか? 技術的な問題なのか、それとも核DNAで検出されているデニソワ人などの遺伝形質とされるのは、更に古いアフリカ時代の痕跡なのでは?
・最後に、これだけの内容なので索引もしくは用語解説(glossary)があれば満点(例:本文中に解説はあるがSNPなど、途中で出てくると意味を探さなければならない)。
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人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」 (中公新書, 2683) 新書 – 2022/2/21
篠田 謙一
(著)
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古人骨に残されたDNAを解読し、ゲノム(遺伝情報)を手がかりに人類の足跡を辿る古代DNA研究。近年、分析技術の向上によって飛躍的に進展を遂げている。30万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスは、どのように全世界に広がったのか。旧人であるネアンデルタール人やデニソワ人との血のつながりはあるのか。アジア集団の遺伝的多様性の理由とは――。人類学の第一人者が、最新の研究成果から起源の謎を解き明かす。
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2022/2/21
- 寸法11.1 x 1.4 x 17.3 cm
- ISBN-104121026837
- ISBN-13978-4121026835
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商品の説明
著者について
篠田謙一
1955年生まれ.京都大学理学部卒業.博士(医学).佐賀医科大学助教授を経て,現在,国立科学博物館館長.専門は分子人類学. 著書に『DNAで語る日本人起源論』『江戸の骨は語る――甦った宣教師シドッチのDNA』(岩波書店),『新版 日本人になった祖先たち――DNAから解明するその多元的構造』(NHK出版),編著に『化石とゲノムで探る人類の起源と拡散』(日経サイエンス)などがある.
1955年生まれ.京都大学理学部卒業.博士(医学).佐賀医科大学助教授を経て,現在,国立科学博物館館長.専門は分子人類学. 著書に『DNAで語る日本人起源論』『江戸の骨は語る――甦った宣教師シドッチのDNA』(岩波書店),『新版 日本人になった祖先たち――DNAから解明するその多元的構造』(NHK出版),編著に『化石とゲノムで探る人類の起源と拡散』(日経サイエンス)などがある.
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2022/2/21)
- 発売日 : 2022/2/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 320ページ
- ISBN-10 : 4121026837
- ISBN-13 : 978-4121026835
- 寸法 : 11.1 x 1.4 x 17.3 cm
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5 星
古代人骨DNAが明らかにする我々人類の履歴
今話題のPCR法の発明及び新世代(DNA)シークエンサーの普及により古代骨や化石骨の少量のサンプルからのDNAの抽出分析が可能となり、2010年にはドイツ・ライプツィヒのマックス・プランク進化人類学研究所のスヴァンテ・ペーボらが、ネアンデルタール人の化石骨より核DNAを抽出し全ゲノムを解読し、アフリカ人以外の現代人にはネアンデルタール人のDNAが含まれ、過去におけるホモサピエンスとネアンデルタール人との異種の交雑の存在があきらかとなりました。このことで人類学研究に大きなブレークスルーが起こり、以来古代人骨(主にホモサピエンス)のゲノムの解読が相次いでいます。日本でも2016年には福島県出土の縄文人の全ゲノムが解読されました。こうした古代人のゲノムデータは、亡くなった時点までの個人および彼・彼女が属する人間集団の履歴が刻まれた巨大容量のメモリーカードのようなものです。つまりこれらのデータを集め解析することにより、我々ホモサピエンスはアフリカで誕生して以来どのような道筋で世界に広がっていったのか?いつ、どこでどの程度ネアンデルタール人、デニソワ人など他人類と交雑してきたか?などがわかることになります。そのようなデータをたくさん集め、現代人のものと比較することによって、今ある我々の過去の移動・拡散の足跡を知ることができます。つまりアフリカでの誕生から約6万年前にアフリカを出て、5大陸および島嶼部にあまねく拡がったおおまかな足取りが(アフリカ内での拡散の足跡も)わかってきました。例えばヨーロッパの現代人は、主に異なった3つのホモサピエンス集団との交雑によって形成されている。そのうちの北方からのものはユーラシア大陸を東に抜け、ベーリング陸橋を渡りアメリカ大陸に渡っている。そのアメリカ大陸へはそれを含めて4系統のホモサピエンス集団が、アジアから渡り交雑しアメリカ大陸先住民を形成していることも解っています。「古人類学+考古学」とでもいえるその新しい人類学の分野について、初めて日本人が著したものが本書です。内容的には「日本人はどこから来たのか?」という点も含まれ大変興味深いものとなっています。さて、本書の著者は国立科学博物館館長で日本の人類学の第一人者のひとりである篠田謙一氏。篠田センセはこれまで、ご専門のミトコンドリアDNAに固執した著作が多かったのですが、今回はY染色体DNA、核内DNAも含めたトータルのゲノムを対象にした論調でこれまでと違った側面を読者に見せてくれました。これは驚きでした。ただし、本書のモチーフは篠田センセのオリジナルではなく『交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(デイヴィッド・ライク著、日向やよい訳、NHK出版、2018年7月 原著名”How We Are And How We Got There”, Oxford Press、2018)の日本版といってよいでしょう。終章の「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」というタイトルつまりポール・ゴーギャンの有名な絵画の添え書き ”D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?”の引用は、たいへんキャッチ―ではありますが、これも篠田センセのオリジナルではなく、前述のD.ライクの著書のタイトルのパクリです。それはいいとにして、古人類のゲノム解析は今後楽しみで有望な人類学の分野です。いまのところサンプルはヨーロッパに偏在しているようです。日本も積極的にその研究にかかわりたいところですが、残念なことに多湿でかつ酸性土壌が多いためDNAが化学変化を起こしてしまい、解析に耐えるサンプル数がまだ少ないようです。しかしながら、福島県の三貫寺遺跡や礼文島の船泊遺跡からの縄文人の全ゲノムが得られたということです。篠田センセも参加されている「ヤポネシア・プロジェクト」において、これから日本人の起源が解明されることが期待されます。そのためにも多くの古人類(日本の場合はホモサピエンスとなる)からのゲノムが抽出されることが重要となるでしょう。ともあれ、本書は日本語のものとしてはもっと新しく(引用文献は2021年のものまである)、包括的で、最も優れた人類学分野の日本語一般書といえるでしょう。小生のレビューで興味を持たれた方で、懐に余裕があるなら、本書とともに『交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(D.ライク著、日向やよい訳、NHK出版、2018年7月)の方をお薦めいたします。
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2023年4月30日に日本でレビュー済み
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2024年2月17日に日本でレビュー済み
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この本を読むに当たって注意されたいことは、科学的論拠だけで現時点で語れることの限界があることと、これから先にも新たなる考古学的証拠が出てくることで、この本に書かれていることも近いうちに修正されるということだ。
「物語としての歴史」に関する論旨に疑義を打ち出したことが、私には胸がすく思いであった。著者は「人種」とか「民族」といった歴史家によって手垢のついた言葉を意図的にほぼ使っていない。例えば、ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー「 サピエンス全史 」の5万年程前に起こった「認知革命」など無かったと疑問を持っていることだ。理由としてはアフリカなどでの発掘調査の進展に伴って、文化的変化がより長いスパンそれが起きていたことが明らかになったからである。その意味では、20年前のベストセラー、ジャレド・ダイアモンド「 銃・病原菌・鉄 」に関する人類の移動のマップともかなり違いが今では浮き彫りになっている。こういう本は定期的に読んだ方が良く、過去の考古学的事実が、最新の科学的調査によって覆されることは良くあることなのだ。
著者は書いてないが、南アフリカでは6万年前には貝殻の装飾品や文様が彫りこまれた270個の卵殻の破片が見つかっている。ひどい話になると、19世紀から20世紀初頭には、欧米人達がエジプトを除いたアフリカの古代文明の遺跡を破壊して回ったというひどい話もある。当時の黒人らは下等生物と思われ多くの欧米人によってまだまだ差別されていたからだ。
優生学に毒された20世紀初頭の(今でもあるが)欧米諸国の人々は、不都合な事実を隠したり、無かったことにしたりすることが通常運転だったからだ。ユダヤ人にとって不都合だったカスピ海沿岸にあった都市の遺跡をユダヤ資本家らが土地ごと買い占めて、水中に沈めてしまったという話もある(かなり危険な話なのでブロックや削除対象にならない程度に、ぼかして書いていることをお許しください)。
従って歴史の多くは勝者による「物語」に過ぎないという事実を念頭に入れつつ、「人種」とか「民族」といった歴史家が名づけた古い「幻想」を相対化しないといけない。出来ないならこの地球上の戦争は絶対に無くならないだろう。
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが交配をしていた、という古代DNA解析によってスヴァンテ・ペーボ氏はノーベル医学・生理学賞を受賞したが(参考文献「 ネアンデルタール人は私たちと交配した 」)、古代DNA研究はここ10数年で飛躍的に分かってきたことと、不明点が同時に明るみになった。
単一民族なるものが、国家や歴史家による「幻想」に過ぎないことを科学的根拠でもって打ち砕いていくことを期待したい。
しかし、一方で「物語」によって生み出された「幻想」は人間にとって脳科学的に強固なものであることも、科学的根拠として知っておく必要もある。
これを読むとキリストの顔は褐色か黒色の肌をしていたとしか考えられないが、欧米の宗教家がそれを許すはずも無いだろう。
そもそも「種」とは何かと考えれば、交配して子孫を残し、DNAの痕跡を現代に残したネアンデルタール人、デニソワ人にしてもホモ属の近隣種であった。現代ではホモ属はホモ・サピエンスしか地球上では残っていないが(都市伝説的なUMAや異星人の話は除く)、有無を言わさない根拠があっても偏見や自意識の排除というのは容易なことではないのだ。
しかし、それが最大多数になっても「カルト」は残るであろうが、それでも今までよりはマシになること位は、少しは期待してもいいかもしれない。
「物語としての歴史」に関する論旨に疑義を打ち出したことが、私には胸がすく思いであった。著者は「人種」とか「民族」といった歴史家によって手垢のついた言葉を意図的にほぼ使っていない。例えば、ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー「 サピエンス全史 」の5万年程前に起こった「認知革命」など無かったと疑問を持っていることだ。理由としてはアフリカなどでの発掘調査の進展に伴って、文化的変化がより長いスパンそれが起きていたことが明らかになったからである。その意味では、20年前のベストセラー、ジャレド・ダイアモンド「 銃・病原菌・鉄 」に関する人類の移動のマップともかなり違いが今では浮き彫りになっている。こういう本は定期的に読んだ方が良く、過去の考古学的事実が、最新の科学的調査によって覆されることは良くあることなのだ。
著者は書いてないが、南アフリカでは6万年前には貝殻の装飾品や文様が彫りこまれた270個の卵殻の破片が見つかっている。ひどい話になると、19世紀から20世紀初頭には、欧米人達がエジプトを除いたアフリカの古代文明の遺跡を破壊して回ったというひどい話もある。当時の黒人らは下等生物と思われ多くの欧米人によってまだまだ差別されていたからだ。
優生学に毒された20世紀初頭の(今でもあるが)欧米諸国の人々は、不都合な事実を隠したり、無かったことにしたりすることが通常運転だったからだ。ユダヤ人にとって不都合だったカスピ海沿岸にあった都市の遺跡をユダヤ資本家らが土地ごと買い占めて、水中に沈めてしまったという話もある(かなり危険な話なのでブロックや削除対象にならない程度に、ぼかして書いていることをお許しください)。
従って歴史の多くは勝者による「物語」に過ぎないという事実を念頭に入れつつ、「人種」とか「民族」といった歴史家が名づけた古い「幻想」を相対化しないといけない。出来ないならこの地球上の戦争は絶対に無くならないだろう。
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが交配をしていた、という古代DNA解析によってスヴァンテ・ペーボ氏はノーベル医学・生理学賞を受賞したが(参考文献「 ネアンデルタール人は私たちと交配した 」)、古代DNA研究はここ10数年で飛躍的に分かってきたことと、不明点が同時に明るみになった。
単一民族なるものが、国家や歴史家による「幻想」に過ぎないことを科学的根拠でもって打ち砕いていくことを期待したい。
しかし、一方で「物語」によって生み出された「幻想」は人間にとって脳科学的に強固なものであることも、科学的根拠として知っておく必要もある。
これを読むとキリストの顔は褐色か黒色の肌をしていたとしか考えられないが、欧米の宗教家がそれを許すはずも無いだろう。
そもそも「種」とは何かと考えれば、交配して子孫を残し、DNAの痕跡を現代に残したネアンデルタール人、デニソワ人にしてもホモ属の近隣種であった。現代ではホモ属はホモ・サピエンスしか地球上では残っていないが(都市伝説的なUMAや異星人の話は除く)、有無を言わさない根拠があっても偏見や自意識の排除というのは容易なことではないのだ。
しかし、それが最大多数になっても「カルト」は残るであろうが、それでも今までよりはマシになること位は、少しは期待してもいいかもしれない。
2023年3月30日に日本でレビュー済み
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1990年代に、DNAの塩基配列の判定が容易になり始めた頃、世界中の現生人類のミトコンドリアDNAを比較した所、全員が20万年前にアフリカに居た一人の母親の子孫と言う計算になった。ミトコンドリアは細胞内でエネルギー代謝を担う小胞体で、そのDNAは母親からしか受け継がれない。ユーラシア大陸に分布していた、ネアンデルタール人などと、現生のホモサピエンスは無関係にアフリカで進化し、その後に世界に広まったと言う「ミトコンドリア・イヴ」の仮説が「常識」とされる事となった。
その当時は、細胞核の全DNAを解析するには、膨大な時間と手間が必要で、ミトコンドリアDNAの比較に頼るほか無かったのだ。
それが、2010年代に次世代DNAシーケンサーが開発され、現生人類も古代人骨も、全ゲノム解析が可能になった。その結果、サハラ砂漠以南のアフリカ人を除く、現生のホモサピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人と言った、既に絶滅した人類とも交雑し、部分的にその遺伝子を受け継いでいる事が判ったと言うのが本書の前提。
これまでは、考古学遺跡と出土品、発掘人骨の形状比較などに頼っていた、人類進化とその移動・拡散についての通説が、次々に覆される事態が生じている。その最前線についての解説が本書。著者は更に、本書が出る頃には、また書き換えられる学説があるやも知れぬとさえ述べている。
推理小説を読むように面白い話が続き、思わず夜更かしをしてしまった。
もっとも、DNAの塩基配列とその変異、分岐遺伝学の手法などについて、新書版程度の基礎知識がないと難しいかも知れない。
印刷技術の無い時代に書かれた古典文学の写本を比較して、写し間違えや、脱落・追加の差異を整理し、夫々の写本の系統図を作るような作業を、DNAの塩基配列について行う技術が基礎になっているのだが、本書にそこまでの解説は無い。著者の言うように、そこまで書くとそれだけで一冊になってしまうので仕方が無いのだが。
その当時は、細胞核の全DNAを解析するには、膨大な時間と手間が必要で、ミトコンドリアDNAの比較に頼るほか無かったのだ。
それが、2010年代に次世代DNAシーケンサーが開発され、現生人類も古代人骨も、全ゲノム解析が可能になった。その結果、サハラ砂漠以南のアフリカ人を除く、現生のホモサピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人と言った、既に絶滅した人類とも交雑し、部分的にその遺伝子を受け継いでいる事が判ったと言うのが本書の前提。
これまでは、考古学遺跡と出土品、発掘人骨の形状比較などに頼っていた、人類進化とその移動・拡散についての通説が、次々に覆される事態が生じている。その最前線についての解説が本書。著者は更に、本書が出る頃には、また書き換えられる学説があるやも知れぬとさえ述べている。
推理小説を読むように面白い話が続き、思わず夜更かしをしてしまった。
もっとも、DNAの塩基配列とその変異、分岐遺伝学の手法などについて、新書版程度の基礎知識がないと難しいかも知れない。
印刷技術の無い時代に書かれた古典文学の写本を比較して、写し間違えや、脱落・追加の差異を整理し、夫々の写本の系統図を作るような作業を、DNAの塩基配列について行う技術が基礎になっているのだが、本書にそこまでの解説は無い。著者の言うように、そこまで書くとそれだけで一冊になってしまうので仕方が無いのだが。
2024年2月17日に日本でレビュー済み
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人が研究した結果をまとめているだけで、本当に知りたい一次資料とそれに関する解釈は知りえない。まあ新書ですから、仕方ない。
2024年2月10日に日本でレビュー済み
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綺麗な本でした。世界の中で日本人は特殊な人間です。この本で勉強します。
2023年2月18日に日本でレビュー済み
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2022年度ノーベル生理学・医学賞は、スバンテ・ペーボ博士(スウェーデン)に贈られました。授賞理由は、「絶滅したヒト科のゲノムと人類の進化に関する発見」です。同博士は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)教授でもあります。
本書の出版は2022年2月で、同博士のノーベル賞受賞が決まったのが同年10月のことです。本書は、まさにBonanza(ボナンザ:豊富な鉱脈、繁栄(スペイン語))というにふさわしい古代DNA研究のホットな話題であふれています。
出アフリカ後のホモ・サピエンス(私たちの直接の祖先)は、その後、分岐や交雑を繰り返しながら、地球上に拡散していきました。本書には、現存する世界中の人類について、著者が信頼できると考える膨大なデータを駆使しながら、現在までの流れをつづっています。
さらに、ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人といった絶滅種とも交雑を繰り返したことまで分かっています。これには、スバンテ・ペーボ博士の業績が大きく寄与しています。
本書には、当然、現代日本人のルーツについても、書かれています。現在揃っているデータからは、どこまでのことが言えるのか、誠実な文章でまとめられています。それは、日本の歴史・文化を考えるとき、欠かすことのできない素養となることでしょう。
著者は、ホモ・サピエンスとは、人種などの違いはあるものの、単一の種であり、全人類は平等で何の差別もあり得ない、との考えを示しています。
「古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」」(本書の副題)は、私たち自身が「ヒトとは何か」を考える旅路のお供に必読の書になっています。
本書の出版は2022年2月で、同博士のノーベル賞受賞が決まったのが同年10月のことです。本書は、まさにBonanza(ボナンザ:豊富な鉱脈、繁栄(スペイン語))というにふさわしい古代DNA研究のホットな話題であふれています。
出アフリカ後のホモ・サピエンス(私たちの直接の祖先)は、その後、分岐や交雑を繰り返しながら、地球上に拡散していきました。本書には、現存する世界中の人類について、著者が信頼できると考える膨大なデータを駆使しながら、現在までの流れをつづっています。
さらに、ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人といった絶滅種とも交雑を繰り返したことまで分かっています。これには、スバンテ・ペーボ博士の業績が大きく寄与しています。
本書には、当然、現代日本人のルーツについても、書かれています。現在揃っているデータからは、どこまでのことが言えるのか、誠実な文章でまとめられています。それは、日本の歴史・文化を考えるとき、欠かすことのできない素養となることでしょう。
著者は、ホモ・サピエンスとは、人種などの違いはあるものの、単一の種であり、全人類は平等で何の差別もあり得ない、との考えを示しています。
「古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」」(本書の副題)は、私たち自身が「ヒトとは何か」を考える旅路のお供に必読の書になっています。
2023年4月14日に日本でレビュー済み
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数十万年~数千年洞窟に眠っていた様々な人骨のDNAから人類の歴史を解明できる時代になったことを実感できる書籍。ミトコンドリアDNAから母方の遺伝情報、Y染色体ハプログループから父方の遺伝情報がわかり、どのように交雑したり分離して人類が世界中に広がったのかが分かったことに感動を覚えた。
2023年3月25日に日本でレビュー済み
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内容的には複雑でしたが非常に面白かった。今後のゲノム解析が世界各国で進んでいくとホモサピエンスの出自及び日本人の由来等がわかっていくでしょう。非常に興味がわきました。