「スピノザ」とは何か。一見するとスピノザ思想のコンパクトな解説書という体裁をとっていますが、読んでみると涼風のような読後感が印象的でした。
スピノザ入門の白眉ともいえる本書には、やや難解な「用語集」がおさめられていますが、圧巻は「スピノザと私たち」という章です。物事を部分や機能から寄せ集めて判断するより、そのものが周囲との関係でとりうる「様態」から捉えなおすというダイナミックな視点に「自由」を感じました。また、自分にとって「いい」とか「悪い」というレッテルを「善悪」とみなして満足するより、わたしたちの「身体がいっそう多くの仕方で触発され変様することができるよう仕向けるもの」との出会いや関係の重要性が、強調されているように思いました。
全体としてみれば、これは副題にあるように、人間が人間社会の中で「喜び」を持って「生きる」可能性の広げるための「実践の哲学」です。もちろん危険にさらされる面も少なくないのもかもしれません。冒頭には、破門され、友人を虐殺され、住む街を追われ、暗殺されかかったという、過酷な「生涯」が綴られています。しかし、それでもなお、スピノザには、静かな「勇気」と「決断」をもって、原因と結果を取り違えている友人に、根気強く書簡で自らの哲学を説いて聞かせている部分が、スピノザの人柄がしのばれてほほえましくもあります。スピノザが糧を得ていたというレンズ磨きにならって、われわれもまた特有の運動と静止の構成関係から物事を捉える曇りなき自由のレンズを磨きたいものです。
それにしても、スピノザが体験したような試練にさらされなければ、「実践の哲学」は生まれなかったのでしょうか。著者ドゥルーズは、その答を読者にそっとゆだねています。
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スピノザ (平凡社ライブラリー) 文庫 – 2002/8/7
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- 本の長さ317ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日2002/8/7
- ISBN-104582764401
- ISBN-13978-4582764406
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
大切なのは単なる理論でも実践でもない。概念の発明と情動の開放とを結びつけること。生の総体を自由な出会いと相互触発へと促してやまないスピノザからの力強い風。94年刊に付論、年譜・書誌を加筆。
登録情報
- 出版社 : 平凡社 (2002/8/7)
- 発売日 : 2002/8/7
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 317ページ
- ISBN-10 : 4582764401
- ISBN-13 : 978-4582764406
- Amazon 売れ筋ランキング: - 126,636位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 30,111位文庫
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年11月12日に日本でレビュー済み
スピノザの特に「エチカ」についての解説書であり、
五つの章より構成されるが、一つ一つは比較的独立していて
それぞれ面白い。
わかりにくい部分もあるが、スピノザの魅力について
余す所無く書かれていて、「エチカ」を再度読もうと
いう気にさせる。
スピノザほど古来から今に至るまで
それこそ「衝撃」をもってさまざまな思索家に影響を
与えた哲学者はいないと思う。
スピノザを信奉する人は
ゲーテ、ニーチェ、ドゥルーズなど枚挙に暇がない。
「生とは一個のありようそのものであり、すべての属性において
同一の、ひとつの永遠の様態である。…ただ思惟するもののみが、
罪責感も憎しみも知らない高い力能の生をかちえ、ただ生のみが
思惟するものを開展するということなのだ。…スピノザは希望も
勇気さえも信じていなかった。彼は喜びしか、洞察する視力しか
信じていなかった」
これこそ生の哲学、しかしそれへの道はスピノザが示したごとく
険しく、類稀なものである。
五つの章より構成されるが、一つ一つは比較的独立していて
それぞれ面白い。
わかりにくい部分もあるが、スピノザの魅力について
余す所無く書かれていて、「エチカ」を再度読もうと
いう気にさせる。
スピノザほど古来から今に至るまで
それこそ「衝撃」をもってさまざまな思索家に影響を
与えた哲学者はいないと思う。
スピノザを信奉する人は
ゲーテ、ニーチェ、ドゥルーズなど枚挙に暇がない。
「生とは一個のありようそのものであり、すべての属性において
同一の、ひとつの永遠の様態である。…ただ思惟するもののみが、
罪責感も憎しみも知らない高い力能の生をかちえ、ただ生のみが
思惟するものを開展するということなのだ。…スピノザは希望も
勇気さえも信じていなかった。彼は喜びしか、洞察する視力しか
信じていなかった」
これこそ生の哲学、しかしそれへの道はスピノザが示したごとく
険しく、類稀なものである。
2009年12月4日に日本でレビュー済み
かつて僕はスピノザ「エチカ」を読まずして、「差異と反復」その他のドゥルーズの代表作を読んで、その情動の哲学を分かった気になっていた。(本書もそうだが、それくらいドゥルーズの原典引用は執拗で、読まずに分かった気になってしまうのだ。)でも、今回「エチカ」を読んで感銘を受けた後に本書を読んでみると、ドゥルーズのスピノザ論から外されたスピノザのエッセンスの存在が発見できたし、またその一方で「エチカ」を情動の哲学として完璧な説得力で書き換えてしまったドゥルーズの凄みも感じ取れた気がする。
「外されたもの」としては、僕はやはりスピノザの「神」と「倫理(エチカ)」をめぐる議論の宗教性・道徳性を挙げたい。ドゥルーズは「<エチカ>はモラル(人間的道徳・倫理)とは何の関係もない」(第6章)と啖呵を切っているが、人格神信仰や世俗的なキリスト教倫理と全く相容れないスピノザ哲学はそのように整理も確かに可能だとはいえ、やはり普通に読むと「エチカ」という本自体はスピノザ的汎神論と倫理学との幾何学的統合を試みた本だったことには変わりない。そして、「エチカ」後半の「自由な人」(=殆どニーチェの「超人」に通じる)という重要な概念もドゥルーズは本書でなぜか無視している。
だが一方で、そういう普通に読んだ場合のスピノザ解釈との差異が見えてくると、ドゥルーズが如何にスピノザを「情動の哲学者」として完璧に書き換えてしまったかが味わえるのだ。僕は本書の最大の読みどころはそこにあると思う。最終章を読むと、なぜこの本が「実践の哲学」という副題が添えられてるかも分かるのだが、この章の美しさを味わうためには、是非スピノザ「エチカ」と共に、更に「飛ばしてもよい」と訳者さえが言う四章も味わってほしい。そうすると、ドゥルーズのスピノザ読解の凄みが美しさに結晶する最終章の味わいが深まると思うのだ。
「外されたもの」としては、僕はやはりスピノザの「神」と「倫理(エチカ)」をめぐる議論の宗教性・道徳性を挙げたい。ドゥルーズは「<エチカ>はモラル(人間的道徳・倫理)とは何の関係もない」(第6章)と啖呵を切っているが、人格神信仰や世俗的なキリスト教倫理と全く相容れないスピノザ哲学はそのように整理も確かに可能だとはいえ、やはり普通に読むと「エチカ」という本自体はスピノザ的汎神論と倫理学との幾何学的統合を試みた本だったことには変わりない。そして、「エチカ」後半の「自由な人」(=殆どニーチェの「超人」に通じる)という重要な概念もドゥルーズは本書でなぜか無視している。
だが一方で、そういう普通に読んだ場合のスピノザ解釈との差異が見えてくると、ドゥルーズが如何にスピノザを「情動の哲学者」として完璧に書き換えてしまったかが味わえるのだ。僕は本書の最大の読みどころはそこにあると思う。最終章を読むと、なぜこの本が「実践の哲学」という副題が添えられてるかも分かるのだが、この章の美しさを味わうためには、是非スピノザ「エチカ」と共に、更に「飛ばしてもよい」と訳者さえが言う四章も味わってほしい。そうすると、ドゥルーズのスピノザ読解の凄みが美しさに結晶する最終章の味わいが深まると思うのだ。
2006年4月1日に日本でレビュー済み
「ポスト構造主義」と呼ばれる思想には、脱構築や逃走を賛美するだけで「倫理」が欠如しているなどという批判をよく聞くが、この本は、ドゥルーズがスピノザに託しつつ、自らの「倫理」を語った貴重な書。『スピノザと表現の問題』より分かりやすい。ドゥルーズとガタリの共著『アンチ・オイディプス』はフーコーによれば「フランス語で書かれた初めての倫理の書」とのことだが、この『スピノザ──実践の哲学』はその意味を理解するための参考書としても有効だ。
第1章はスピノザに対する内在的理解なければ書けない名文。
第2章には本書の白眉の基本的問題が出尽くしている。
最終章は、『ミル・プラトー』での展開を踏まえて、「スピノザと私たち」という問題提起をしていて、スピノザの哲学が、いままさに「現在の哲学」「未来の哲学」であることを訴える。
用語集は後々味読・熟読する価値がある重宝なもの。
第1章はスピノザに対する内在的理解なければ書けない名文。
第2章には本書の白眉の基本的問題が出尽くしている。
最終章は、『ミル・プラトー』での展開を踏まえて、「スピノザと私たち」という問題提起をしていて、スピノザの哲学が、いままさに「現在の哲学」「未来の哲学」であることを訴える。
用語集は後々味読・熟読する価値がある重宝なもの。