本書は対話の技法について論じながら真の対話とは何かを追求することを本旨としていて、通俗的なハウツーものの実用書ではありません。しかし本書を読むとリアルな場面でほんとうの対話を実践してみたいという思いに誘われ、またそうするための指針が示されているという意味では、よい意味での実用書だということもできるかも知れません。それと同時に、真の対話というのは困難でまた或る意味で危険なものであり、それを実践するにはしかるべき準備と経験とを必要とすることが説明されています。(準備と経験と並んで「沈黙」という要素もまた対話のために必要だと説かれているのは本書の卓見ですが、ただ若干説明不足のようにも感じました。)
最近、対話型AIが話題になっていますので、それとどう付き合うべきかという問題意識もあって私は本書を手に取りました。対話型AIの「対話型」は英語ではconservationalまたはinteractiveで、本書で言う「対話」はdialogueですので英語ではもともと違うのですが、本書を最後まで読むと、対話型AIの対話がなぜ真の対話とは異なるのかということが納得できるようになります。既存の知見の集成の中から正しい知識を引き出すということは対話の中心的な効用ではなく、真の対話が狙いとするところとはそれとは精神的な次元が異なるものだということです。(ただし本書では直接的には対話型AIに言及されていません。)
本書は第一部から三部までの三部構成になっていて、著者の方のあとがきによると、第一部は出版の数年前には原型ができていた内容であり、第二部以降は新型コロナの流行による新しい日常という局面に触発される形で書き進められたようです。第一部、第二部は言われてみるとまあそうだろうなと思う内容ですが、第三部には、死者や歴史上の人物との対話の可能性や、自分自身との対話のもつ超越性といった、単なる「対話の技法」からは大きく踏み越える内容が盛り込まれていて興味深く読ませて頂きました。ただ本書の範囲では単に話題を提示しただけで終わってしまっている印象ですので、第三部の諸問題については続編を期待したいと思います。
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対話の技法 単行本 – 2020/11/25
納富信留
(著)
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ソクラテスが様々な相手と語り合いながら思索を深める過程を書きとどめ、対話そのものの重要性を示したプラトンの名著『対話篇』。西洋哲学研究の第一人者である著者がその内容を踏まえ、現代社会のコミュニケーションに求められている「真の対話」のあり方を探ります。
そもそも「対話」とは何か?
ふだんの日常会話、一方的な説得や意見の押し付けと混同されがちなその定義の見直からスタートし、15回のテーマに分けてわかりやすく解説。
「対話の成功=相手を思い通りにすることではない」、「目の前にいない相手と対話する難しさ」など、言葉を通じたやり取りのシチュエーションが多様化するなかでこそ意識したい心がまえを提案しています。
SNSにおける交流といった最新の話題も取り入れ、哲学に詳しくない方でも読みやすい点が特徴です。
上手な話し方や相手を論破するテクニックのハウツーとはひと味違った、「人と人がわかり合うこと」の本質に迫る一冊。
新型コロナ禍による様々な変化のなかで、コミュニケーションに悩む方にとくにおすすめです。
【目 次】
はじめに
目次
第一部・対話を知っていますか?
●第一回 対話という言葉から考えよう
●第二回 対話でないもの
●第三回 対話をすすめる技法
●第四回 対話の強さと弱さ
●第五回 対話が目指すところ
第二部・危ない対話への勇気
●第六回 言論嫌いという病
●第七回 答えの得られない問い
●第八回 対話の衝撃を受けとめる
●第九回 言葉による誘惑
●第十回 対話する勇気
第三部・対話が広がる世界
●第十一回 対話の場の越境
●第十二回 対話の相手の拡大
●第十三回 不在者との対話
●第十四回 自分自身との対話
●第十五回 対話の実践
対話を知るために参考になる本
おわりに
そもそも「対話」とは何か?
ふだんの日常会話、一方的な説得や意見の押し付けと混同されがちなその定義の見直からスタートし、15回のテーマに分けてわかりやすく解説。
「対話の成功=相手を思い通りにすることではない」、「目の前にいない相手と対話する難しさ」など、言葉を通じたやり取りのシチュエーションが多様化するなかでこそ意識したい心がまえを提案しています。
SNSにおける交流といった最新の話題も取り入れ、哲学に詳しくない方でも読みやすい点が特徴です。
上手な話し方や相手を論破するテクニックのハウツーとはひと味違った、「人と人がわかり合うこと」の本質に迫る一冊。
新型コロナ禍による様々な変化のなかで、コミュニケーションに悩む方にとくにおすすめです。
【目 次】
はじめに
目次
第一部・対話を知っていますか?
●第一回 対話という言葉から考えよう
●第二回 対話でないもの
●第三回 対話をすすめる技法
●第四回 対話の強さと弱さ
●第五回 対話が目指すところ
第二部・危ない対話への勇気
●第六回 言論嫌いという病
●第七回 答えの得られない問い
●第八回 対話の衝撃を受けとめる
●第九回 言葉による誘惑
●第十回 対話する勇気
第三部・対話が広がる世界
●第十一回 対話の場の越境
●第十二回 対話の相手の拡大
●第十三回 不在者との対話
●第十四回 自分自身との対話
●第十五回 対話の実践
対話を知るために参考になる本
おわりに
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社笠間書院
- 発売日2020/11/25
- 寸法12.9 x 1.4 x 18.8 cm
- ISBN-104305709325
- ISBN-13978-4305709325
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著者について
東京大学哲学科教授。西洋古代哲学が専門。古代ギリシアにおける「哲学の誕生」をテーマに、哲学と西洋古典学の二つの学問手法で迫っている。著書に『ソフィストとは誰か?』、『哲学者の誕生』、『プラトン 理想国の現在』、『プラトンとの哲学 ―対話篇をよむ』(岩波新書)などがある。
登録情報
- 出版社 : 笠間書院 (2020/11/25)
- 発売日 : 2020/11/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 192ページ
- ISBN-10 : 4305709325
- ISBN-13 : 978-4305709325
- 寸法 : 12.9 x 1.4 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 111,724位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年4月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
Good
2020年12月5日に日本でレビュー済み
目の前の相手とコミュニケーションするだけではそれは単なる「会話」です。相手との会話を通して自分とコミュニケーションできるようになると「対話」に近づきます。そして、自分と他者との間、自分と自分自身との間を超えた、何か大きなものとつながる感覚が得られると、それは「対話」のど真ん中にいることになります。
著者はプラトン研究の第一人者ですが、難しいところは少しもなく、感動的な物語を読んだ読後感があり、誰かをつかまえて「対話」をしてみたくなる本です。
著者はプラトン研究の第一人者ですが、難しいところは少しもなく、感動的な物語を読んだ読後感があり、誰かをつかまえて「対話」をしてみたくなる本です。