確かに面白かったです。少しコメントします。
■なぜ人は退屈するのか?
著者は、増補新版の付録でこの問いを立て、脳科学的なある仕組みを暫定的な回答として提示しています。ざっくりまとめると、人は外界からの刺激に慣れようとする、が、完全に慣れることはなく、痛む記憶として心身に残る。刺激の少ない状態だと、その痛む記憶が出てきて人を苦しめる。つまり、退屈とは、痛む記憶の不快から逃げたいのに逃げられないという心的状況である。 --- 理解が違っていたらすみません。
そもそも人間は快・不快に駆動されて生きていて、退屈は不快な状況だから、そこから快の状態に移行しようとする衝動が生じるわけですが、退屈の心的状況を、気持ちよさ(快)の観点も含めて、次のように解釈することもできるように思いました。
人は、強い快を、不快な状態から快な状態に移行する際に感じる(また、ある快の状態が継続すると快は減衰してしまう)。刺激(不快)の少ない状態だと快への移行可能性も少ない。つまり、強い快を得ることが困難な状況。なので、心身には、この逃げるに逃げられない状況を脱するべく、刺激(不快)の少ない状態を、わざと結構不快であることにして、言い換えると退屈という不快を感じるようにして、快に移行する衝動を促す仕組みがある。
■退屈が不快なことは何に有効か?
では、人は退屈を不快と感じると何をするかというと、そこから脱しようとして何か(既知のものや未知のもの)に取り組む。好奇心旺盛な人であれば、何か新たなことに取り組み、それでわからないことに遭遇したら、(わからないことは不快なので)それはどうしてか仕組みを理解しようとあれこれ考え、それがわかれば嬉しく(快を)感じる。仕組みを理解すれば、それをコントロール(=より快が得られるように世界を改変)することができるようなるから。結果、世界に対する新たな知見を獲得して、より居心地の良い生活も実現することもできるようになる。
もし退屈(刺激の少ない状態)で不快を感じなかったら、何か他のことに取り組もうとする衝動はなかなか出てこないから、人間社会の変化は低調だったでしょう。
■環世界と退屈
著者は、人間は環世界を相当な自由度を持って移動できるから退屈するのである、と書いています。ここで、環世界というのは、ざっくり、その生命体の立場/関心で捉えている周囲の世界のこと(ダニにはダニの、ある人にはその人の環世界がある)。
環世界を相当な自由度を持って移動できるというということは、平たく言えば、いろいろなことに関心を向けて世界を広げることができる、ということだと思います。だとすると、環世界を移動できるから退屈するというのはもちろん必要条件ですが、必要十分条件にするには、次の条件を加えないといけない。快(への可能性)を感じない状態から、快(への可能性)を感じる対象に関心を飛ばすことができない時に、退屈(という不快)を感じるような機構が人間に備わっていること。
ちなみに、類人猿とかイルカあたりは、いろいろなものに関心がありそうなので、動物園とか水族館だと退屈(不快)を感じているような気もします。。
久永公紀『意思決定のトリック』・『宮沢賢治の問題群』
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暇と退屈の倫理学 (新潮文庫) Paperback Bunko – December 23, 2021
by
國分 功一郎
(著)
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【2022年 東大・京大で1番読まれた本】
2022年1月~12月文庫ランキング(全国大学生協連調べ)
【25万部突破のロングセラー】
暇とは何か。人間はいつから退屈しているのだろうか。
答えに辿り着けない人生の問いと対峙するとき、哲学は大きな助けとなる。 著者の導きでスピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど先人たちの叡智を読み解けば、知の樹海で思索する喜びを発見するだろう。
現代の消費社会において、気晴らしと退屈が抱える問題点を鋭く指摘したベストセラー。2011年朝日出版社刊『暇と退屈の倫理学』、2015年太田出版刊『暇と退屈の倫理学 増補新版』にあとがきを加え、待望の文庫化。
2022年1月~12月文庫ランキング(全国大学生協連調べ)
【25万部突破のロングセラー】
暇とは何か。人間はいつから退屈しているのだろうか。
答えに辿り着けない人生の問いと対峙するとき、哲学は大きな助けとなる。 著者の導きでスピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど先人たちの叡智を読み解けば、知の樹海で思索する喜びを発見するだろう。
現代の消費社会において、気晴らしと退屈が抱える問題点を鋭く指摘したベストセラー。2011年朝日出版社刊『暇と退屈の倫理学』、2015年太田出版刊『暇と退屈の倫理学 増補新版』にあとがきを加え、待望の文庫化。
- Print length512 pages
- LanguageJapanese
- Publisher新潮社
- Publication dateDecember 23, 2021
- Dimensions5.94 x 4.17 x 0.75 inches
- ISBN-104101035415
- ISBN-13978-4101035413
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Product Details
- Publisher : 新潮社 (December 23, 2021)
- Publication date : December 23, 2021
- Language : Japanese
- Paperback Bunko : 512 pages
- ISBN-10 : 4101035415
- ISBN-13 : 978-4101035413
- Dimensions : 5.94 x 4.17 x 0.75 inches
- Amazon Bestseller: #794 in Japanese Books (See Top 100 in Japanese Books)
- #1 in Treatis, Criticism & Lecture Collections
- #14 in Shincho Bunko
- #14 in Theories of Life
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Reviewed in Japan on March 30, 2024
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Reviewed in Japan on March 9, 2024
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私は若くはないが、どの年代の方にもお勧めしたい。 新たな気付きが得られると思います。
Reviewed in Japan on May 13, 2024
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五百ページを超える文庫ですが
少しづつ読み続けられる
興味深い内容です
少しづつ読み続けられる
興味深い内容です
Reviewed in Japan on February 15, 2024
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綺麗な本でした
Reviewed in Japan on January 24, 2024
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まだ半分以上、理解できなかった。
10年後に読みたい。
10年後に読みたい。
Reviewed in Japan on January 20, 2024
Verified Purchase
想定以上におもしろかったです。もちろん、すらすら読めてすっと理解できたところばかりではないけど、難しくなってしまいそうな話を、ものすご~く分かりやすく書いてくださってました。
人間らしさとは、本質的自由とは、というベースのテーマの中で暇と退屈についての話が展開していくのですが、ダニの話や増補新版の付録には脳神経科学からの話もあり、抽象概念だけでなく生物的具体的に理解できます。
理解するとは、結論だけを読んだり公式に数値をあてはめて答えを出すことではなく、理解する過程であるというスピノザの考えをひいて、著者はこの本についても結論を読んだだけでは理解したとは言えないと結構、厳しく(笑)言っているので、結論が何かは書きませんが、お絵描きやオシャレ頑張って楽しもう!と思えました(笑)。
暇について考える中で、労働は重要な要素でフォーディズム、マルクス、アレントも出てきてそこも興味深く、先週NHKで放映されていた欲望の資本主義2024と通じるところがあり、アレントのいう労働と仕事の違いがこれからますます重要になると感じました。
本編は410ページとかなりの量ですが、それに加えて注釈が48ページもあったのはびっくりでした。普通、注釈というと引用元の出典を示すくらいですが、それだけではなく引用部分についての著者の解釈・反論、そして、本文中の著者自身の主張についての注釈(さらなる解説)もあるので、こんなに長くなっていて、注釈だからかかなり自由に書いておられるようで、ここだけ読んでもすっごく面白いです(特にp476 ^^)
人間らしさとは、本質的自由とは、というベースのテーマの中で暇と退屈についての話が展開していくのですが、ダニの話や増補新版の付録には脳神経科学からの話もあり、抽象概念だけでなく生物的具体的に理解できます。
理解するとは、結論だけを読んだり公式に数値をあてはめて答えを出すことではなく、理解する過程であるというスピノザの考えをひいて、著者はこの本についても結論を読んだだけでは理解したとは言えないと結構、厳しく(笑)言っているので、結論が何かは書きませんが、お絵描きやオシャレ頑張って楽しもう!と思えました(笑)。
暇について考える中で、労働は重要な要素でフォーディズム、マルクス、アレントも出てきてそこも興味深く、先週NHKで放映されていた欲望の資本主義2024と通じるところがあり、アレントのいう労働と仕事の違いがこれからますます重要になると感じました。
本編は410ページとかなりの量ですが、それに加えて注釈が48ページもあったのはびっくりでした。普通、注釈というと引用元の出典を示すくらいですが、それだけではなく引用部分についての著者の解釈・反論、そして、本文中の著者自身の主張についての注釈(さらなる解説)もあるので、こんなに長くなっていて、注釈だからかかなり自由に書いておられるようで、ここだけ読んでもすっごく面白いです(特にp476 ^^)
Reviewed in Japan on December 30, 2023
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生きた結果は死ぬことであるという事実があると思っていまして、
その間はどのようであっても、生きているという意味ですべて一緒。
そこが底として、その上にのっているのが時間だとさせてください。
その時間の質の端っこが「ヒマ」で反対の端っこは「幸せ」としてみます。
「生きる」は「時間」であると言えるとして、「時間」の質の端である「ヒマ」を考え、理解を深める。
暇でなくても読むといいと思うんですが、いかがでしょうか。
その間はどのようであっても、生きているという意味ですべて一緒。
そこが底として、その上にのっているのが時間だとさせてください。
その時間の質の端っこが「ヒマ」で反対の端っこは「幸せ」としてみます。
「生きる」は「時間」であると言えるとして、「時間」の質の端である「ヒマ」を考え、理解を深める。
暇でなくても読むといいと思うんですが、いかがでしょうか。
Reviewed in Japan on May 4, 2024
Verified Purchase
大変面白い、話の展開があちらこちらは飛びますが、それがこの本の面白さの一つ、なるほど、そうか、そうかもしれないと読み進みたくなりますが、ゆっくりお読みになる事をお勧めします