2017年4月には、憲法改正選挙もあり、エルドアンさん的にも重要な年になりそうなので購入しました。
【一章・トルコの政教分離とエルドアン首相】
オスマン帝国崩壊から、トルコ共和国成立、そしてAKP政権になるまでがダイジェストで解説されます。
国民が能動的に教会から離れたフランスと、エリートや軍人が国民をスルーしてイスラムを離そうとした対比は、
フランスと中東、キリスト教とイスラム教の対比の面で興味深いです。
宗教的に広く浅くの日本人には、理解しづらい所もありますが。
トルコというか中東のムスリム国家に対しては、生活と宗教が絡まり過ぎて、政教分離は難しく、
そこをエルドアンさんらAKPが政教分離の体裁を守りつつ、イスラムの色を出して行く過程は面白いです。
また、シビリアンコントロールについても、エルドアンさんの立ち回りはなかなか上手いと思いました。
【二章・再イスラム化の課題】
クルド人との争い解決や、キリスト教諸派、イスラム教アレヴィ派等とのバランスの問題が紹介されます。
この複雑さを見ると、スルタンの号令で半強制にでも纏めるしかないのではと思えます。
AKPの政策は、基本的にイスラム的公正に則っているようで、住宅問題と道路問題を解決しています。
こちらの2問題解決は、日本でも参考になりそうな気がします。
【三章・ヒズメト運動との衝突】
こちらは、イスラム教スンニ派内での内ゲバですかね。
本書を読む限り、ヒズメト運動自体は、慈善活動であり、格差是正にもつながる運動に思えます。
AKP政権側にも責任があると見えますし。
ただ、ヒズメト運動側にも、無闇に政権に不安を与え、バランスが悪くなったようにも見受けられました。
【四章・非欧州的トルコ】
アメリカの同盟国であり、ムスリム国家でもあるトルコの立ち回りが見られます。
これについては、AKPやエルドアンさん以前から、トルコという国が貫いていたようです。
日本も、十字軍ではなくサムライ、クリスマスも七夕も祝う国なんですから、見習える所はあると思います。
四章後半は、トルコのEU加盟についてですが、トルコ側から願い下げ状態なので、紆余曲折はなんだったのかと思えます。
【五章・中東の中のエルドアン大統領】
概ねイギリスの三枚舌外交と、アメリカの中東政策に起因する問題に思えますが…
イラクやシリアとの関係や、サウジアラビアとの関係が紹介されます。
国際情勢的には、大国ロシアがシーア派のイランやイラクシリアと関係を深めると、スンニ派も主体が必要になります。
スンニ派盟主候補のサウジアラビアは、自滅のイメージが強く、他のスンニ派メインの国は不安定、となると、
必然的にトルコ=エルドアン政権への期待も高まります。
エルドアンさん的にも、大統領権限を強化する憲法改正を狙っているので、スルタンになりたい人と、スルタンに出て欲しい人の需要と供給は一致してます。
エルドアンさんの立ち回りも、改正選挙の結果、改正するしない以外にも得票率で変わると思いますが、
今後のトルコに興味が湧く一冊でした。
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トルコ 中東情勢のカギをにぎる国 単行本 – 2016/2/5
内藤 正典
(著)
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IS、シリア。イラク、難民問題 混乱を解決できるのは、中東唯一の民主国家トルコしかない!
混迷を極める中東情勢。その中で唯一民主主義を実現した国、トルコ。トルコを知ることで中東の未来が見えてくる。著者は中東政治研究、イスラム系移民研究の第一人者。
「トルコという国は、文字通り、ヨーロッパとイスラム世界の接点に位置しているために、一連の激震から逃れることはできなかった。東からはイラク戦争の余波でクルド問題が再燃し、南からはシリア難民が押し寄せた。アメリカを含めて西からは、テロとの戦争に参加しろ、「イスラム国」に厳しく対処しろと厳しい圧力がかかった。そのさなかに民主化を進め、同盟国の圧力をかわしながら戦争に巻き込まれないために最大限の努力をし、世界の虐げられたムスリムに向けて希望のメッセージを発し続けている。それが二一世紀に入って以降のトルコである。」(本文より)
著者:内藤正典
同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科教授。中東の国際関係、イスラム移民研究。書籍、雑誌、TV、新聞等で幅広く中東情勢と移民問題について論じている。
目次
はじめに いまなぜ、トルコか
中東崩壊の危機のなかで唯一の民主化に成功した国/イスラム的公正を内外に示す/「イスラム国」を手玉にとる
第一章 トルコの近代化と脱イスラム
トルコ共和国の誕生/政教分離の難しさ/世界でも稀有なトルコ軍の地位/PKKとの戦い
第二章 トルコの再イスラム化
イスラムが強くなると、ナショナリズムは弱くなる/支配民族のいなかったオスマン帝国/似て非なるイスラム/公正・発展党の政策のどこがイスラム的だったか/住宅問題の「イスラム的」解決
第三章 ヒズメト運動と現在のトルコ
草の根型のイスラム互助運動はなぜ政権と衝突したのか/ヒズメト運動とは何か/ヒズメト運動が変えたもの
第四章 トルコと西欧諸国の関係
西欧化の呪縛/なぜ、アメリカの戦争につきあわないのか/トルコ軍がタリバンの攻撃を受けなかったわけ/イラク戦争にも参戦しなかった軍/トルコは、なぜEUに入ろうとしたか/アジアかヨーロッパか/なぜヨーロッパになりきれないのか/上からの西洋化改革/EU加盟交渉の紆余曲折/九・一一後のEUとの関係/EU加盟の強迫観念は消えた
第五章 トルコと周辺諸国の関係
エジプトの革命と反革命/アラブ諸国の対応/アサド政権への批判/トルコとシリアの深い関係/イラク分裂はトルコにとってもっとも深刻な危機/「イスラム国」の台頭/邦人人質事件/トルコ総選挙 /エルドアン大統領の強権化に対する批判/HDPの躍進が意味するもの/ついに事態が動いた/トルコ分裂の危機/中東大混乱が、トルコに新たな活力を吹き込む/新たな国家へ
おわりに
混迷を極める中東情勢。その中で唯一民主主義を実現した国、トルコ。トルコを知ることで中東の未来が見えてくる。著者は中東政治研究、イスラム系移民研究の第一人者。
「トルコという国は、文字通り、ヨーロッパとイスラム世界の接点に位置しているために、一連の激震から逃れることはできなかった。東からはイラク戦争の余波でクルド問題が再燃し、南からはシリア難民が押し寄せた。アメリカを含めて西からは、テロとの戦争に参加しろ、「イスラム国」に厳しく対処しろと厳しい圧力がかかった。そのさなかに民主化を進め、同盟国の圧力をかわしながら戦争に巻き込まれないために最大限の努力をし、世界の虐げられたムスリムに向けて希望のメッセージを発し続けている。それが二一世紀に入って以降のトルコである。」(本文より)
著者:内藤正典
同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科教授。中東の国際関係、イスラム移民研究。書籍、雑誌、TV、新聞等で幅広く中東情勢と移民問題について論じている。
目次
はじめに いまなぜ、トルコか
中東崩壊の危機のなかで唯一の民主化に成功した国/イスラム的公正を内外に示す/「イスラム国」を手玉にとる
第一章 トルコの近代化と脱イスラム
トルコ共和国の誕生/政教分離の難しさ/世界でも稀有なトルコ軍の地位/PKKとの戦い
第二章 トルコの再イスラム化
イスラムが強くなると、ナショナリズムは弱くなる/支配民族のいなかったオスマン帝国/似て非なるイスラム/公正・発展党の政策のどこがイスラム的だったか/住宅問題の「イスラム的」解決
第三章 ヒズメト運動と現在のトルコ
草の根型のイスラム互助運動はなぜ政権と衝突したのか/ヒズメト運動とは何か/ヒズメト運動が変えたもの
第四章 トルコと西欧諸国の関係
西欧化の呪縛/なぜ、アメリカの戦争につきあわないのか/トルコ軍がタリバンの攻撃を受けなかったわけ/イラク戦争にも参戦しなかった軍/トルコは、なぜEUに入ろうとしたか/アジアかヨーロッパか/なぜヨーロッパになりきれないのか/上からの西洋化改革/EU加盟交渉の紆余曲折/九・一一後のEUとの関係/EU加盟の強迫観念は消えた
第五章 トルコと周辺諸国の関係
エジプトの革命と反革命/アラブ諸国の対応/アサド政権への批判/トルコとシリアの深い関係/イラク分裂はトルコにとってもっとも深刻な危機/「イスラム国」の台頭/邦人人質事件/トルコ総選挙 /エルドアン大統領の強権化に対する批判/HDPの躍進が意味するもの/ついに事態が動いた/トルコ分裂の危機/中東大混乱が、トルコに新たな活力を吹き込む/新たな国家へ
おわりに
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2016/2/5
- 寸法13.3 x 1.8 x 18.8 cm
- ISBN-10408781601X
- ISBN-13978-4087816013
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2016/2/5)
- 発売日 : 2016/2/5
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 408781601X
- ISBN-13 : 978-4087816013
- 寸法 : 13.3 x 1.8 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 543,214位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,262位国際政治情勢
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年3月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年7月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
トルコ在住の者として内藤先生のご見解大変参考になりました。
2019年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
トルコはいま、経済的に「トルコ・ショック」の後遺症で、リラ安。外貨建ての借入返済に苦慮しており、外貨準備金は急減しています。海外からの投資も減速。今後「50年トルコを中心に世界が回る」とは考えにくいと思います。
もちろん中東地域では大国であり、将来の可能性はあります。国民の数は多く、器用で、フリクシブル。ギュレン・ムーブメントに関しては勉強になりました。
もちろん中東地域では大国であり、将来の可能性はあります。国民の数は多く、器用で、フリクシブル。ギュレン・ムーブメントに関しては勉強になりました。
2016年2月24日に日本でレビュー済み
トルコ共和国の建国(1923)はどのような形で起こったのか。
そこからどのように歩み、アメリカやEU、また近隣の中東諸国ひいてはイスラム国とどのように関わってきたのか、
そしてこれからどのような役割を期待されているのか。
これ1冊でそのストーリーや背景となる思想までしっかりと知ることが出来る。
内容は学術的で実の詰まったものでありながら語り口は平易なので読みやすく、
トルコという国とそこに住まう人の考えが瑞々しく真に迫るような描かれ方となっていて映像を観ているかのよう。
トルコ、そして2010年代の主役の1つと言えるイスラム世界を知るうえで非常に大きな経験となる書。
そこからどのように歩み、アメリカやEU、また近隣の中東諸国ひいてはイスラム国とどのように関わってきたのか、
そしてこれからどのような役割を期待されているのか。
これ1冊でそのストーリーや背景となる思想までしっかりと知ることが出来る。
内容は学術的で実の詰まったものでありながら語り口は平易なので読みやすく、
トルコという国とそこに住まう人の考えが瑞々しく真に迫るような描かれ方となっていて映像を観ているかのよう。
トルコ、そして2010年代の主役の1つと言えるイスラム世界を知るうえで非常に大きな経験となる書。
2016年7月6日に日本でレビュー済み
第一次大戦後、オスマントルコは解体されましたが、西欧列強の強さの源泉が政教分離政策にあると感じたアタチュルクたちは、徹底的に公共からのイスラムを排除する政策をとりました
その徹底ぶりは公共の場でスカーフを着用しただけで、逮捕されるというすさまじさです
このような強権的な政策によって西欧近代化を果たしたトルコでしたが、その揺り戻しともいえる現象が現在起きてると本書は述べています
その原因は、トルコを都合よく利用しながら、EUには絶対に加盟させない欧州への不信感やグローバル化による格差の拡大
周辺国の紛争による難民流入による国内の不安定化によるものだとされています
なによりも結局のところ、トルコ国民にとって西欧近代化が必ずしも個人の幸福を意味しないことに多くのトルコ人は気づいたからでしょう
トルコという国が果たして、このまま宗教色の薄い世俗国家で居続けることが可能なのか、それとも宗教色のより強い国家となってしまうのか
後者になってしまえば、結局のところイスラムの国で西欧近代化は不可能ということになってしまうわけで、中東の今後を考えるうえでも本書は必読であると思います
その徹底ぶりは公共の場でスカーフを着用しただけで、逮捕されるというすさまじさです
このような強権的な政策によって西欧近代化を果たしたトルコでしたが、その揺り戻しともいえる現象が現在起きてると本書は述べています
その原因は、トルコを都合よく利用しながら、EUには絶対に加盟させない欧州への不信感やグローバル化による格差の拡大
周辺国の紛争による難民流入による国内の不安定化によるものだとされています
なによりも結局のところ、トルコ国民にとって西欧近代化が必ずしも個人の幸福を意味しないことに多くのトルコ人は気づいたからでしょう
トルコという国が果たして、このまま宗教色の薄い世俗国家で居続けることが可能なのか、それとも宗教色のより強い国家となってしまうのか
後者になってしまえば、結局のところイスラムの国で西欧近代化は不可能ということになってしまうわけで、中東の今後を考えるうえでも本書は必読であると思います
2016年2月9日に日本でレビュー済み
トルコがたどってきた歴史や現在の情勢から、イスラム世界の動きをとらえられる良書です。
前半では、第1次世界大戦でも独立を保ったトルコが、世俗主義(平たく言えば政教分離)を掲げる民族国家となって西欧列強と肩を並べようとした歴史と、その結果生じた問題を解説します。しかし、国民の中に世俗主義に対する息苦しさが生じ、その結果トルコでは極端ではない程度に再イスラム化が進んだそうです。
国内ではエルドアン政権が強権化し言論の統制や民主化の後退が見られたり、クルド問題や、ヒズメト運動と呼ばれる草の根のイスラム化運動が政府を翻弄するなど、混乱の火種はありますが、混迷極まりない中東の中でイスラム的な判断にのっとって身を処する(アメリカ主導の戦争に安易に加わらないなど)ことでイスラム教徒の信頼を勝ち取るなど、外交的にはスンニ派の大国としてのトルコのプレゼンスが高まっているとのこと。シリア、エジプトなどの周辺国とトルコの関係も解説してあり、非常に興味深く読みました。
構想3年の労作をまとめ上げた内藤先生は、次に何を取り上げるのでしょうか。個人的にはイランが今後どうなっていくか、興味があります。
前半では、第1次世界大戦でも独立を保ったトルコが、世俗主義(平たく言えば政教分離)を掲げる民族国家となって西欧列強と肩を並べようとした歴史と、その結果生じた問題を解説します。しかし、国民の中に世俗主義に対する息苦しさが生じ、その結果トルコでは極端ではない程度に再イスラム化が進んだそうです。
国内ではエルドアン政権が強権化し言論の統制や民主化の後退が見られたり、クルド問題や、ヒズメト運動と呼ばれる草の根のイスラム化運動が政府を翻弄するなど、混乱の火種はありますが、混迷極まりない中東の中でイスラム的な判断にのっとって身を処する(アメリカ主導の戦争に安易に加わらないなど)ことでイスラム教徒の信頼を勝ち取るなど、外交的にはスンニ派の大国としてのトルコのプレゼンスが高まっているとのこと。シリア、エジプトなどの周辺国とトルコの関係も解説してあり、非常に興味深く読みました。
構想3年の労作をまとめ上げた内藤先生は、次に何を取り上げるのでしょうか。個人的にはイランが今後どうなっていくか、興味があります。
2016年11月26日に日本でレビュー済み
トルコというと昨今何かと話題であるが、日本の新聞の論調は、例によって、西欧からの視点の受け売りに偏っているようである。これに対して、著者は、長年、欧州のトルコ移民問題、トルコ国内の政治的問題の研究をしてきた経験に基づいて、現政権の性質を、善悪両面から、余すところなく、かつ簡潔に説明している。特に、NATO加盟国として、トルコの軍事的かかわりの慎重さ、周到さは、今後軍事力の真空化が進む極東の国々にとって、学ぶべき点が多いのである。また、本書においては、昨今のイスラム国による邦人殺害事件に対する同国政府の稚拙すぎる対応についても、冷静ではあるが徹底的にその誤謬の本心・背景が語りつくされているのである。したがって、本書は、現在の中東情勢、特にイスラムの問題をトルコという国を例として理解するための必読の書である!